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環境
迂闊な試み※
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湯浴み場にゆっくり歩き去る全裸のイシスの後ろ姿に付いて行きながら、セスはふと立ち止まった。心配で一緒に入ると言ってしまったけれど、正解だっただろうか。
お互いに全裸になったからと言って、特段何が始まる訳ではないと言い聞かせながら、セスは何も考えないようにしてどんどん服を脱いでいった。
まだ体調が万全でないだろうイシスを洗ってあげるべきだろうと思いつつタイル張りの床に足を踏み出すと、陶器のタイルで出来た湯船の縁に座り込むイシスがこちらを見上げる青い眼差しと目が合った。
何を考えているのかは分かりにくいイシスの瞳の色が僅かにすみれ色に色づくのを感じながら、セスは何でもないとばかりにタオルに石鹸を擦り付けた。
イシス用の石鹸は高級なものなので、どこかツンとした花の芳醇な香りが湯浴み場いっぱいに広がる。
「…イシス、ちょっと立てる?」
黙りこくったイシスが、セスの身体をゆっくりと眺め下ろしながら立ち上がった。見ないふりはしないのかと、セスは少し困惑した気持ちで泡のついたタオルでイシスの身体を撫で始めた。
「…ああ、気持ち良い。他人に洗われるのは子供の頃以来だ。」
子供の頃のイシスも無表情で突っ立てったのだろうかと思いながら、セスは少し面白い気持ちで手を動かした。後ろは全部洗い終えたので次は前だけど…。
「イシス、後は自分で洗う?」
「…どうして?セデアスが全部やってくれるんだろう?最後まで頼む。」
全部…。セスは急に落ち着かなくなってきた。病人が甘えているだけだ。色々余計なことを考える方がおかしい。そう言い聞かせながら、セスはクルリと向きを変えたイシスの首元を睨みつけながら、無心で手を動かした。
今更ながら細身のイシスがたくましい筋肉美を見せている事に気が付いた。自分の薄い筋肉を見てイシスが内心笑わないといいけれどとチラリと顔を盗み見ると、さっきから自分を見ていたのかバチリと目が合ってしまった。
「…セデアスは綺麗な身体をしているな。」
そう少し掠れた声で呟かれて、セスはパッと視線を逸らすとイシスのお腹を布で擦りながら答えた。
「そうかな。イシスのような身体の方がカッコいいよ。僕は自分のやわやわな身体が好きじゃないんだ。」
布がイシスの下半身に到達すると、流石にセスは困惑してイシスと目を合わせた。
「ここって僕は布じゃなくて手で洗うけど…。」
「ああ、私も手で洗う。洗ってくれるんだろう?」
甘えられてるのか、それとも別の本意があるのか判断できずに、セスは思い切って手で石鹸を泡立てるとそっとイシスの股間に手を伸ばした。最初から何処か芯を感じたものは直ぐに持ち上がって、セスはこれ以上洗うのはどうなのかと思わず手を止めた。
「…洗い続けてくれ。凄く気持ち良い。」
ベッドで寝込んでいた時のような、イシスが普段見せない気弱な雰囲気を感じて、突き放せないセスは黙って手を動かした。洗ってやっているだけという言い訳は、手の中でそそり立つ剛直を感じてはもう意味もなさなかった。
甘いため息を耳元に落とされて、セスは自分の身体も欲望を見せてしまうのを止められなくなっていた。誰にでも欲情するのかと何処か自己嫌悪に陥りながら、セスはイシスに呼びかけられて顔を上げた。
「…セデアスも一緒に洗ったらどうだ。その方が効率がいい。」
興奮が見つかった恥ずかしさで目を見開いたセスの額に唇を押し当てながら、イシスの逞しい腕がセスを抱き寄せた。石鹸でヌルついたイシスの身体にセスの股間が擦り付けられて、思わずセスは甘える様な欲望の声を発していた。
「あっ、あんっ…!」
思わず出た自分の甘い声にハッとして重たくなった瞼を持ち上げて顔を上げると、イシスがギラつく紫色の眼差しを細めてセスを見つめて呟いた。
「…これは現実か?夢なのか?どちらにせよ、止める事は出来ない…。」
お互いに全裸になったからと言って、特段何が始まる訳ではないと言い聞かせながら、セスは何も考えないようにしてどんどん服を脱いでいった。
まだ体調が万全でないだろうイシスを洗ってあげるべきだろうと思いつつタイル張りの床に足を踏み出すと、陶器のタイルで出来た湯船の縁に座り込むイシスがこちらを見上げる青い眼差しと目が合った。
何を考えているのかは分かりにくいイシスの瞳の色が僅かにすみれ色に色づくのを感じながら、セスは何でもないとばかりにタオルに石鹸を擦り付けた。
イシス用の石鹸は高級なものなので、どこかツンとした花の芳醇な香りが湯浴み場いっぱいに広がる。
「…イシス、ちょっと立てる?」
黙りこくったイシスが、セスの身体をゆっくりと眺め下ろしながら立ち上がった。見ないふりはしないのかと、セスは少し困惑した気持ちで泡のついたタオルでイシスの身体を撫で始めた。
「…ああ、気持ち良い。他人に洗われるのは子供の頃以来だ。」
子供の頃のイシスも無表情で突っ立てったのだろうかと思いながら、セスは少し面白い気持ちで手を動かした。後ろは全部洗い終えたので次は前だけど…。
「イシス、後は自分で洗う?」
「…どうして?セデアスが全部やってくれるんだろう?最後まで頼む。」
全部…。セスは急に落ち着かなくなってきた。病人が甘えているだけだ。色々余計なことを考える方がおかしい。そう言い聞かせながら、セスはクルリと向きを変えたイシスの首元を睨みつけながら、無心で手を動かした。
今更ながら細身のイシスがたくましい筋肉美を見せている事に気が付いた。自分の薄い筋肉を見てイシスが内心笑わないといいけれどとチラリと顔を盗み見ると、さっきから自分を見ていたのかバチリと目が合ってしまった。
「…セデアスは綺麗な身体をしているな。」
そう少し掠れた声で呟かれて、セスはパッと視線を逸らすとイシスのお腹を布で擦りながら答えた。
「そうかな。イシスのような身体の方がカッコいいよ。僕は自分のやわやわな身体が好きじゃないんだ。」
布がイシスの下半身に到達すると、流石にセスは困惑してイシスと目を合わせた。
「ここって僕は布じゃなくて手で洗うけど…。」
「ああ、私も手で洗う。洗ってくれるんだろう?」
甘えられてるのか、それとも別の本意があるのか判断できずに、セスは思い切って手で石鹸を泡立てるとそっとイシスの股間に手を伸ばした。最初から何処か芯を感じたものは直ぐに持ち上がって、セスはこれ以上洗うのはどうなのかと思わず手を止めた。
「…洗い続けてくれ。凄く気持ち良い。」
ベッドで寝込んでいた時のような、イシスが普段見せない気弱な雰囲気を感じて、突き放せないセスは黙って手を動かした。洗ってやっているだけという言い訳は、手の中でそそり立つ剛直を感じてはもう意味もなさなかった。
甘いため息を耳元に落とされて、セスは自分の身体も欲望を見せてしまうのを止められなくなっていた。誰にでも欲情するのかと何処か自己嫌悪に陥りながら、セスはイシスに呼びかけられて顔を上げた。
「…セデアスも一緒に洗ったらどうだ。その方が効率がいい。」
興奮が見つかった恥ずかしさで目を見開いたセスの額に唇を押し当てながら、イシスの逞しい腕がセスを抱き寄せた。石鹸でヌルついたイシスの身体にセスの股間が擦り付けられて、思わずセスは甘える様な欲望の声を発していた。
「あっ、あんっ…!」
思わず出た自分の甘い声にハッとして重たくなった瞼を持ち上げて顔を上げると、イシスがギラつく紫色の眼差しを細めてセスを見つめて呟いた。
「…これは現実か?夢なのか?どちらにせよ、止める事は出来ない…。」
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