僕の太客が義兄弟になるとか聞いてない

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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男娼のお仕事※

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 恋人のように熱い仕草で、僕はシャツ越しでも分かる筋肉質な身体を抱きしめた。金髪まじりの短い赤毛は部屋のランプに照らされて明るく輝く。目の前の男の茶色と緑の入り混じったはしばみ色の瞳は、僕を焼き尽くす熱心さで見つめてくる。

「ノア、この二ヶ月、君の瞳の色だけを考えていた。」

「瞳の色だけ?僕のこの身体もでしょう?ふふ、じゃあたっぷりご奉仕させて欲しいな。」


 焦らす様に欲望にむせかえる男の顎や首筋に唇を落とすと、ピクリと筋肉が反応する。僕はじんわりと興奮で汗ばんだ男の体臭と、香木と柑橘の混ざった趣味の良い香水とが混ざった匂いを吸い込むと、甘く息を耳に吹きかけた。

「ケレイブ様の匂い好き…。この香水も。」

 そう揶揄いながら、手は忙しくお客のシャツを脱がしに掛かっていく。ムードを壊さない様に、この非日常を僕は演出するのが好きだった。それは趣味の読書が影響していたのかもしれないし、肉体以上のものを提供して喜ぶ彼らの知性に期待もしている。


 一気にシャツを男の腰まで引き下ろして、僕はニヤリと笑って舌で唇を舐めて見せた。

「ああ、ゾクゾクする程に逞しい…。」

 僕の指が太い首から胸の先端を押し付ける様に通って、硬い腹の溝を楽しんで臍に到達すると、目の前の男は大きく深呼吸する。再び今度は両手のひらを使って身体をなぞり上げると、待ちきれない大きな手に僕の手は捕まってしまった。

「私にもノアに触れさせてくれ。」


 僕はケレイブ様の唇に甘く唇を触れ合わせると、上目遣いで囁いた。

「もっと僕に可愛がられたく無いの?…ああ、もう待てないみたいだね。じゃあ、ベッドへ行こうか。」

 僕は先に立って歩くと艶のある上質な生地張りの椅子の上に腰掛けて、焦らすようにズボンを脱ぎ捨てた。胸元が透けるようなしなやかなブラウスのボウタイを解いてスルリと前を肌けると、残りは腰に紐で巻き付くような下着一枚だ。男娼の服も娼婦と同じ様に手っ取り早く裸になれるデザインになっている。

 男のぎらつく瞳が細くなって、僕をじっと見つめてくる。


 「そのいやらしい胸の印を皆に見せつけていたのか?ノアは見られるだけでそうやって先端を硬くするのに。」

「ケレイブ様、見ていないで早く吸って…。」

 立ち上がった僕は直ぐに大きな身体に抱き寄せられて、そのままベッドの上に引き倒されてブラウスに腕を取られたまま無防備に胸を突き出した。男の舌が先端を中心に這い回ると、その焦ったい気持ち良さに甘く呻いてしまう。

 もっと一気に吸い付いて欲しいと願った瞬間叶えられて、僕は腰に響くその甘い衝動に声を響かせた。


 足に触れる布越しの男の股間が張り詰めているのを感じると、僕はゆっくりと膝を動かしてそれを摩って刺激する。男が呻きながら僕の腹、そしてその下へと顔を移動してねぶる感触を楽しみつつ、僕は男の短い髪を撫でた。

 この男はいつも僕をたっぷり愛撫するのが好きだ。金を払っているのだからもっと自分本位でも良い位なのに、まるで恋人にする様なその行為は、いつも僕を複雑な気持ちにさせる。


 「ノアも良い匂いだ。このはしたない下着を濡らして…。我慢出来なかったのか?」

「ああっ、…ん、我慢出来ないよ…。そんなに擦ったら…、んんっ、気持ちいいっ!」

 男の指の腹で下着ごと摘まれるように扱かれて、僕は息を浅くした。このままでは一晩体力が持つか分からない。

「ケレイブ様も裸になって…。」

 そんな時間稼ぎの様なひと言に促されて、男はムクリと起き上がると手早くズボンを床に放り出した。鍛えられた盛り上がる脚の筋肉に思わず見惚れてしまう。下着に手を掛けたその時、僕は自分から男に這い寄った。


 「僕が脱がせてあげる。」

 欲望に滲む眼差しは嫌いじゃない。誰しもがその本能に近い感情の前には立場の違いなど無く平等だ。期待に高々と布を押し上げている隠されたモノは、手を伸ばすと簡単にぶるんと飛び出した。

 相変わらず凶悪な持ち物をしていると、僕は期待と呆れで思わず笑みを浮かべた。輪を作った指でぬらつくそれをゆっくり撫で下ろすと、ヒクヒクと焦ったそうに動くのが楽しい。


 「…ね、舐めてほしい?」

 どうせそうなるのに、敢えて聞く事でお客の期待を高めるのはいつものやり方だった。けれどもケレイブ様は一瞬躊躇した。

「…いや、湯浴みもしていないからノアにそんな事させられない。」

 確かにむせかえるようないやらしい匂いがしているけれど、嫌な感じは無かった。僕はニヤリと笑うといきなりそれを口に頬張った。

「ノア…!無理するな…!」


 少し塩気のあったのは一瞬で、すぐにケレイブ様らしいいやらしい味になった。僕はきっとこの仕事が向いているのだろう。一人一人の味の違いがどうしてそうなのか考える事に関心があって、それが嫌だと感じた事など無かった。

 僕が楽しそうにそうするせいでますます指名が入るのも、見方を変えたら男たちは己の全てを肯定して欲しいと言う思いがあるのかもしれないと思ったりもする。

 そう、僕はこの仕事を酷く難しくこねくり回して分析するのが楽しいのだ。


 そんな事を考えているとも知らずに、ケレイブ様は大きく喘ぎながら僕の口の中を自身そのもので擦り続けた。口の中が擦られ過ぎて痺れて感覚が無くなってくる頃には、ケレイブ様の大きなそれはカチカチに硬くいきり勃って僕の喉奥を何度も突き上げた。

 一瞬、一瞬の死にそうな苦しさは、どこか絶頂の恍惚に似て、僕は全身を気持ち良さに震わせながら口の中に溢れるケレイブ様の白濁を受け止めた。


 「ノアすまない。苦しかったか?」

 焦った様子のケレイブ様が少し咽せる僕の濡れた口元を指先で拭いながら、顔を興奮で上気させつつも上向いた僕の頬に手を触れた。僕は飲み込んだ白濁の味を頭のどこかにメモりながら、その大きな手に顔を摺り寄せた。

「大丈夫。ケレイブ様のシンボルがびっくりするくらい硬くて、喉を突き破っちゃうかとちょっと心配になったけどね?」

「ノアは私を喜ばせるのが上手いな。だがノアが欲しくていきり勃っていたのは本当だからな。今度はもう一つの口で楽しませてくれるか?」

 この仕事を楽しめるくらいには、僕もまた快感を貪るのだ。まるで生まれながらの男娼の様に。





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