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本編
L03.後悔と覚悟
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コトコト煮込んだ野菜たっぷりのスープの入った鍋のふたを取ると、美味しそうな匂いが辺りに漂った。
リュカはお玉で芋をひと欠片、スープと一緒にすくい、味見用の小皿に乗せる。
「うん。ちゃんと煮えてる。味は……もう少し胡椒を足そうかな」
味を調整し、もう一度スープの味見をする。
今度はちょうど良い。
リュカは一つうなずいて、火を止めた。
ブランセルの家が用意してくれたこの家は、最新式の魔導具が備え付けられていて、かまどの火加減もつまみで調節出来る優れものだ。
洗濯も魔導具が粉石鹸での洗い、濯ぎ、脱水までしてくれる。
こうした魔導具は大変高価で、金持ちの道楽扱いされていた。
魔導具を買うより、女中を雇う方が安価なのだ。
ただ、家に他人を入れるのは、リュカの体質を考えると出来ない。
魔導具を駆使すれば、リュカ一人でも家事を回せる。
義両親の心遣いが有り難かった。
必要なものはクロエが休みの日に一緒に買い出しに行くか、仕事帰りにクロエが買ってきてくれる。
祖父にもらった外套があれば外出出来ないことはないが、無闇に外出すれば揉め事の原因になることは身にしみて分かっていた。
家の中でやることはあるし、読書や小物作り、将来の事業計画などやりたいこともある。
外の空気が吸いたければ、裏庭もある。
日中に朝番帰りの次兄が訪ねてくることもあるし、母や妹たちとお茶をしたりもする。
クロエは鬱屈しないか心配してくれるが、リュカの中では”成体になるまでの我慢”と折り合いがついていた。
何よりクロエの気配がそこかしこにある家は、リュカには心地いい。
「これもあるしね」
リュカはそっと、左手首にはめた銀細工の腕輪を指で撫でる。
腕輪から感じるクロエの魔力は、穏やかで安定しているのに力強い。
一言でいうと悠久に流れる大河のようだ。
魔術師ではないリュカはそれをぼんやりと感じられるだけだが、この腕輪を見た魔術の素養のある次兄は「鉄の魔女の本気、こえー」と顔を引きつらせた。
なんでも雷がリュカに直撃しても、火傷一つ負わないくらいの加護が込められているらしい。
それだけの加護を込められる魔術師はそうは居ないと。
クロエは恥ずかしがってあまり自分の話をしてくれないが、騎士団員の次兄によれば、クロエは地方騎士団を含め全国で一万人は居る騎士の中で、上位三十人の中には入る実力者なのだという。
「試合だとそこそこ強いって感じに見えるけど、殺し合いだと断然強い。剣もそうだけど魔術の制御がヤバい。去年の妖魔退治、ブランセル隊長の部隊と一緒に俺が所属している部隊も行ったんだけどな、ホントマジヤバかったからな。こう、飛べる妖魔がさぁ、ぶわーってたくさんやって来て、それをバッシバッシ打ち落とすんだよ。もちろんウチの隊長もバッサバサ落としてたけどさ。王都騎士団の隊長格って化け物級の猛者揃いだからさー。ホントマジつえーよ。……ってかさ、あのブランセル隊長が義妹とか、俺ヤバ過ぎてヤバいんじゃね?」
これはクロエとの結婚が決まった後、クロエについて尋ねた時の次兄の言だが、そういう次兄の顔は見物だった。
そして、ヤバいのは次兄の言語能力だとリュカは思った。
(小兄さんは脳味噌まで筋肉詰まってるもんね)
その時のことを思い出しながら、リュカはオーブンをのぞき込んだ。
鶏の香草焼きの焼き色は、もう少しといったところだろうか。
もうすぐクロエが帰ってくる時間だ。
なるべく出来立てを食べてもらいたいが、時間を見計らうのはなかなか難しい。
これも経験を積めば、もっと要領よく出来るだろうか。
ちょんちょん。
良い焼き色がついた香草焼きをオーブンから取り出し一息ついたところで、ふくらはぎをつつかれた。
見下ろした先に居たのは、この家を住処にしている小さな精霊だ。
精霊は物理的な距離を越えて移動することが出来る。
その精霊が普通の人には聞こえない声で、用件を告げた。
「クロエさんが帰ってきた!」
リュカはぱっと顔を輝かせ、エプロンをはぎ取った。
用意してあった飴を精霊に渡し、早歩きで玄関に向かう。
「おかえりなさい! クロエさん!」
玄関扉を閉めたばかりのクロエに、リュカはぎゅっと抱きついた。
「ただいま、リュカ」
クロエはリュカを軽く抱きしめ返してから、肩を掴んでリュカを引き剥がした。
リュカはもっとくっついていたのだが、いつまでも慣れない様子でほんのり頬を赤く染めるクロエが見られるのも悪くはない。
表面上は渋々といった顔を浮かべつつ、クロエから一歩離れた。
そしていつものようにクロエの顔をまじまじと見たリュカは、「あれ?」と眉をひそめた。
「クロエさん、何かありましたか?」
いつもより、クロエの表情が暗い感じがしたのだ。
仕事のことでの悩みなら、リュカに話せないことかも知れない。
ただ、一人で抱え込んで欲しくはなかった。
リュカの問いかけに、クロエは二、三度瞬き、苦笑を浮かべた。
「リュカには何でもお見通しね」
「何かあったんですね」
クロエの返答に、リュカは眉根を寄せた。
大抵のことは何でもないと答えるクロエが、何かあったことを認めたのだ。
よほどのことがあったのだろう。
ざっと見た限りでは怪我などしていないようだが、体調を崩したりはしていないだろうか。
心配だという気持ちを隠さずクロエの全身を舐めるようにリュカに、クロエは頬を染めて首を横に振った。
「具体的な被害にあったわけではないの。ただ、少し話しておきたいことがあるから、夕飯の後、いいかしら?」
「もちろんです」
リュカはこくりとうなずいた。
クロエの話は気になるが、後で話してくれると言うのだから焦る必要はない。
気持ちを切り替えたリュカは、にっこりと笑う。
「夕飯の準備は出来てますから、クロエさんは着替えてきてください」
「ありがとう。そうするわ」
ほっとしたように笑ってクロエが自室に向かう。
(嫌な話でも、美味しいご飯の後なら悲観的になり過ぎずにすむっていうよね。パンを温めて、いい方のバターを出そうっと)
クロエが部屋着に着替える間に食卓を整えておかねばならない。
最後の仕上げをする為に、リュカもまた台所へ早歩きで戻った。
夕食を食べ終えたリュカとクロエは、後片付けを済ませて居間へ移動する。
食事中は普段通りに穏やかな笑みを浮かべて他愛もない話をしていたクロエだったが、持ってきていた大きめの茶封筒を手にすると、その表情が堅くなった。
リュカは若干不安になりつつ、いつものようにソファに腰を下ろしたクロエの隣にぴったりくっついて座る。
向き合ってクロエの顔を見るのも好きだが、こうしてクロエの体温を感じている方が落ち着くのだ。
クロエも慣れてきたのか、文句を言われることなく話をきり出した。
「リュカ、最近、何か変わったことはなかった?」
クロエの質問に、リュカは首を傾げた。
ここ最近のことを思い返してみたが、特に何かあった記憶はない。
困惑した表情を浮かべるリュカに、クロエはふぅと息を吐いた。
「特に思い当たることはないのね? そう……。これを見て欲しいの」
クロエはそう言って、茶封筒の中身を取り出した。
出てきたのはなんの変哲もない白い封筒と何枚もの便箋、一葉の印画紙だった。
それらを受け取りざっと内容を確認したリュカの顔から、表情が抜け落ちた。
陳腐で筋違いなことが書かれている脅迫状だった。
リュカとクロエが結婚したことが気に食わない者が、一定数居るのはリュカも知っていた。
リュカの魅了の力は、リュカと接触しなければ徐々にその影響が抜けていく。
ただ、中にはリュカに対する執着に意識がいき過ぎ、魅了の力が抜けない者も居るのだ。
東の魔王はリュカの明確な拒絶で引き下がったが、それは彼が強固な自我と意志を持っていたからだろう。
自分を持っている者は、魅了の力に影響されても囚われることはない。
逆を言えば、東の魔王並みの強固な自我がなければ、魅了の力が持続している者は段々と狂っていく。
それこそ、余程の衝撃がない限りは……。
リュカは形の良い下唇を噛み締めた。
悔しかった。
元々、リュカの身を守るための婚姻だ。
結婚さえしてしまえば、大方は諦めるだろうと予測していた。
実際、実家に押し寄せていた求愛者は激減した。
ただ、それでも諦めない厄介な相手は残っている。
だからといって王都騎士団の隊長格であるクロエに喧嘩を売る度胸の持ち主は居ないだろうと思っていた。
東の魔王さえ引き下がれば、あとは雑魚しかいないと。
祖父の力で聖域化したこの家に居れば、聖域を囲うようにクロエが張った結界があれば問題ないと油断していたのだ。
リュカは重たい息を吐いて、もう一度印画紙に視線を落とした。
写っているのは、確かに外に着ていったことのない作業着姿のリュカだ。
布だけ婚姻以前に買い求めたもので、婚姻後にリュカが練習がてら意匠から一人で仕立てた。
裏庭いじりの時にしか着ていない作業着を、クロエや家を尋ねてきた家族以外が知るはずがない。
つまり、合成念写ではなく、実際にリュカの姿が撮影されてしまったということだ。
クロエの懸念していることは、リュカにも分かる。
相手は結界と聖域の二重の目くらましをすり抜けてリュカの姿を撮影出来る者だ。
並みの術師ではないだろう。
「リュカ。唇が傷つくわ」
噛みしめた唇に、クロエの指先が触れた。
リュカははっと顔を上げる。
クロエの深緑の瞳が、心配そうにリュカを見つめていた。
リュカが見つめ返すと、クロエがふっと目線を落とす。
「……あなたに心労をかけたかったわけではないの。リュカに脅迫状を黙っていることも考えたのよ。でも、それでは万全を期せないと思った。相手は凄腕の術師本人、もしくはその術師につながりを持っている者だもの。他の有象無象とは違うわ。さすがに家の内部を透視する術はないし、庭はともかく家自体にも術が刻んであるからある程度は大丈夫だとは思うけれど、狙われている自覚を持ってもらった方が良いと、私は判断したの。ラ・トゥールのお家とブランセルにも相談するわ。聖域のこともあるから精霊王にも。……本当は私ひとりで守れれば良いけれど、矜持に拘っている場合ではないものね」
クロエが自嘲気味に笑う。
己の力不足を嘆くクロエの手を、リュカは両手で握った。
「僕よりクロエさんの方が心配です。天誅を加えるって……クロエさんを害するって宣言じゃないですか」
リュカは眉間に深いしわを刻んだ。
命が惜しければ、とまで書いてある。
本気なら生ぬるい手は使わないだろう。
クロエが凄腕というほどの相手だ。
リュカの顔が歪む。
視界がぼやけてきた。
何度か口を開閉したが、言葉が出てこなかった。
クロエは本来なら、こんな危険な目に遭う必要のなかった人だ。
リュカが一方的に巻き込んだ。
なら、解放するのもリュカの側からでなくては……。
「リュカ」
クロエに手を引かれ、クロエの胸に顔を埋める形になった。
その柔らかさと良い匂いが、焦燥にかられたリュカの心をなだめてくれる。
リュカはみっともないと思いながらも、クロエの服をぎゅっと握った。
柔らかな声がリュカの耳に降ってくる。
「リュカ。そう思い詰めないで。まだ何か起こったわけではないのよ」
「でも……」
「私なら大丈夫。これでも何度も死線をくぐっているの。……妖魔相手だけではなく、人間相手でもね」
クロエはそう言ってくれるが、リュカは余計に申し訳ない気持ちになった。
クロエの顔を見る勇気もなく、顔を伏せたままでぽつりとつぶやく。
「巻き込んで、ごめんなさい」
「リュカ」
クロエの声が硬質を帯びる。
おそるおそる埋まっていた胸から顔を上げると、クロエは不機嫌そうな顔をしていた。
「私を見くびらないでちょうだい」
ぴしゃりとクロエが言った。
「確かに相手の力量は未知数よ。でも私の命が狙われるのも、リュカの貞操が狙われるのも、想定内なの。両陛下からの圧力があったことも否定しないけれど、最終的にリュカとの結婚を承諾したのは私。この程度のことで後悔する程度の覚悟で結婚したのではないわ。リュカは違うの?」
虚偽は許さないと鋭い目で見下ろされる。
クロエはいつもリュカに甘かった。
部下にびしばし指示を飛ばしている所を見たことはあるが、カッコいいと思っても怖いとは思わなかった。
次兄がどうしてそこまでクロエを恐れるのか、正直分からなかった。
今までは。
「私と離縁して、精霊王の所へ逃げ込めば、私もリュカも大丈夫でしょう。安全面では、ね」
含みを持たせた言い方をしたクロエが、すっと目を細めた。
リュカの肩が思わず跳ねる。
蛇ににらまれた蛙の気持ちがよく分かった。
クロエに見えないことを良いことに様子をうかがっていた精霊たちも、部屋の隅で固まって震えている気配がする。
「どうかしら、リュカ? 離縁したくなったかしら?」
クロエの再度の問いかけに、我に返ったリュカはぶんぶんと首を横に振った。
「い、嫌です! クロエさんのお側に居たいです! 離縁したくないです!」
口から出てきたのは、自分本位な言葉だ。
クロエが鋭い目つきのまま、わずかに首を傾げた。
「本当に?」
「本当です!」
リュカはクロエの背中に腕を回し、ぎゅっとしがみついた。
クロエを危険な目に遭わせる可能性があっても、結局リュカはクロエから離れたくないのだ。
一度手に入れてしまった幸福を、手放すことは出来そうもない。
「そう……」
クロエが思案するように間を置いた。
リュカはびくびくと沙汰を待った。
脅迫状が来たというだけでここまで取り乱してしまった自分を、クロエが見放すかも知れない。
そう考えると恐ろしくて堪らない。
「リュカ」
再度、名前を呼ばれる。
その声は優しくて、リュカは泣きそうになった。
「それならば、私があなたを守るわ。だから怯えないで」
「ぼ、僕は……僕がクロエさんに返せるものがあるでしょうか?」
リュカの言葉に、クロエがひょいと片眉をあげた。
「あら、結構返してもらっているでしょう。リュカに癒されているし、ご飯は美味しいし、加護付きの小物までもらって…………あとは好意も」
ぽつりと最後に付け足したクロエの目元が赤い。
それを見たリュカは辛抱するようにぷるぷる震え、
「クロエさん!」
結局たまらずにクロエを押し倒した。
ソファの肘掛けに頭を預け目を瞬くクロエの唇を、自身の唇でふさぐ。
「んっ、はあ、ちょっ」
「はむっ、あ、」
何度も角度を変えて、浅く深く、ねっとりと口腔を犯す。
部屋着の上から脇腹を撫で上げ、クロエの脚の間に膝を割り込んだ所で、力ずくで引き剥がされた。
こういう時、我が身の非力が恨めしい。
リュカがぷくっと頬を膨らませると、クロエが真っ赤な顔で抗議してきた。
「いきなり何をするの!」
「だって、クロエさんが可愛かったんですもん」
「かわっ、~~~っ、真面目な話をしていたでしょう!」
「はい! 身辺には今まで以上に気をつけますし、お祖父様とか使える人は使いましょう! クロエさんも気を付けてくださいね!」
「切り替えが早過ぎではないの、リュカ」
じとっとクロエが半眼でにらんでくる。
リュカは満面の笑みを浮かべて答えた。
「クロエさんと離れるのは、死んでも嫌だなって心底思ったので! クロエさん、大好きです!」
全力で心を込めて言うと、クロエは数瞬目を泳がせた後、頬を染めて小声で答えた。
「私も……好きよ」
「クロエさん!!!」
クロエの一言で理性が吹き飛んだリュカは、再びクロエにのし掛かった。
クロエももう一度リュカを引き剥がすようなことはなく、ソファの上で身体の力を抜いた。
嬉々としてクロエの服を脱がすリュカの目の端に、やれやれと首を振りながら部屋を出て行く精霊たちの姿がちらりと映ったが、もはや気にする余裕もリュカにはなかった。
リュカはお玉で芋をひと欠片、スープと一緒にすくい、味見用の小皿に乗せる。
「うん。ちゃんと煮えてる。味は……もう少し胡椒を足そうかな」
味を調整し、もう一度スープの味見をする。
今度はちょうど良い。
リュカは一つうなずいて、火を止めた。
ブランセルの家が用意してくれたこの家は、最新式の魔導具が備え付けられていて、かまどの火加減もつまみで調節出来る優れものだ。
洗濯も魔導具が粉石鹸での洗い、濯ぎ、脱水までしてくれる。
こうした魔導具は大変高価で、金持ちの道楽扱いされていた。
魔導具を買うより、女中を雇う方が安価なのだ。
ただ、家に他人を入れるのは、リュカの体質を考えると出来ない。
魔導具を駆使すれば、リュカ一人でも家事を回せる。
義両親の心遣いが有り難かった。
必要なものはクロエが休みの日に一緒に買い出しに行くか、仕事帰りにクロエが買ってきてくれる。
祖父にもらった外套があれば外出出来ないことはないが、無闇に外出すれば揉め事の原因になることは身にしみて分かっていた。
家の中でやることはあるし、読書や小物作り、将来の事業計画などやりたいこともある。
外の空気が吸いたければ、裏庭もある。
日中に朝番帰りの次兄が訪ねてくることもあるし、母や妹たちとお茶をしたりもする。
クロエは鬱屈しないか心配してくれるが、リュカの中では”成体になるまでの我慢”と折り合いがついていた。
何よりクロエの気配がそこかしこにある家は、リュカには心地いい。
「これもあるしね」
リュカはそっと、左手首にはめた銀細工の腕輪を指で撫でる。
腕輪から感じるクロエの魔力は、穏やかで安定しているのに力強い。
一言でいうと悠久に流れる大河のようだ。
魔術師ではないリュカはそれをぼんやりと感じられるだけだが、この腕輪を見た魔術の素養のある次兄は「鉄の魔女の本気、こえー」と顔を引きつらせた。
なんでも雷がリュカに直撃しても、火傷一つ負わないくらいの加護が込められているらしい。
それだけの加護を込められる魔術師はそうは居ないと。
クロエは恥ずかしがってあまり自分の話をしてくれないが、騎士団員の次兄によれば、クロエは地方騎士団を含め全国で一万人は居る騎士の中で、上位三十人の中には入る実力者なのだという。
「試合だとそこそこ強いって感じに見えるけど、殺し合いだと断然強い。剣もそうだけど魔術の制御がヤバい。去年の妖魔退治、ブランセル隊長の部隊と一緒に俺が所属している部隊も行ったんだけどな、ホントマジヤバかったからな。こう、飛べる妖魔がさぁ、ぶわーってたくさんやって来て、それをバッシバッシ打ち落とすんだよ。もちろんウチの隊長もバッサバサ落としてたけどさ。王都騎士団の隊長格って化け物級の猛者揃いだからさー。ホントマジつえーよ。……ってかさ、あのブランセル隊長が義妹とか、俺ヤバ過ぎてヤバいんじゃね?」
これはクロエとの結婚が決まった後、クロエについて尋ねた時の次兄の言だが、そういう次兄の顔は見物だった。
そして、ヤバいのは次兄の言語能力だとリュカは思った。
(小兄さんは脳味噌まで筋肉詰まってるもんね)
その時のことを思い出しながら、リュカはオーブンをのぞき込んだ。
鶏の香草焼きの焼き色は、もう少しといったところだろうか。
もうすぐクロエが帰ってくる時間だ。
なるべく出来立てを食べてもらいたいが、時間を見計らうのはなかなか難しい。
これも経験を積めば、もっと要領よく出来るだろうか。
ちょんちょん。
良い焼き色がついた香草焼きをオーブンから取り出し一息ついたところで、ふくらはぎをつつかれた。
見下ろした先に居たのは、この家を住処にしている小さな精霊だ。
精霊は物理的な距離を越えて移動することが出来る。
その精霊が普通の人には聞こえない声で、用件を告げた。
「クロエさんが帰ってきた!」
リュカはぱっと顔を輝かせ、エプロンをはぎ取った。
用意してあった飴を精霊に渡し、早歩きで玄関に向かう。
「おかえりなさい! クロエさん!」
玄関扉を閉めたばかりのクロエに、リュカはぎゅっと抱きついた。
「ただいま、リュカ」
クロエはリュカを軽く抱きしめ返してから、肩を掴んでリュカを引き剥がした。
リュカはもっとくっついていたのだが、いつまでも慣れない様子でほんのり頬を赤く染めるクロエが見られるのも悪くはない。
表面上は渋々といった顔を浮かべつつ、クロエから一歩離れた。
そしていつものようにクロエの顔をまじまじと見たリュカは、「あれ?」と眉をひそめた。
「クロエさん、何かありましたか?」
いつもより、クロエの表情が暗い感じがしたのだ。
仕事のことでの悩みなら、リュカに話せないことかも知れない。
ただ、一人で抱え込んで欲しくはなかった。
リュカの問いかけに、クロエは二、三度瞬き、苦笑を浮かべた。
「リュカには何でもお見通しね」
「何かあったんですね」
クロエの返答に、リュカは眉根を寄せた。
大抵のことは何でもないと答えるクロエが、何かあったことを認めたのだ。
よほどのことがあったのだろう。
ざっと見た限りでは怪我などしていないようだが、体調を崩したりはしていないだろうか。
心配だという気持ちを隠さずクロエの全身を舐めるようにリュカに、クロエは頬を染めて首を横に振った。
「具体的な被害にあったわけではないの。ただ、少し話しておきたいことがあるから、夕飯の後、いいかしら?」
「もちろんです」
リュカはこくりとうなずいた。
クロエの話は気になるが、後で話してくれると言うのだから焦る必要はない。
気持ちを切り替えたリュカは、にっこりと笑う。
「夕飯の準備は出来てますから、クロエさんは着替えてきてください」
「ありがとう。そうするわ」
ほっとしたように笑ってクロエが自室に向かう。
(嫌な話でも、美味しいご飯の後なら悲観的になり過ぎずにすむっていうよね。パンを温めて、いい方のバターを出そうっと)
クロエが部屋着に着替える間に食卓を整えておかねばならない。
最後の仕上げをする為に、リュカもまた台所へ早歩きで戻った。
夕食を食べ終えたリュカとクロエは、後片付けを済ませて居間へ移動する。
食事中は普段通りに穏やかな笑みを浮かべて他愛もない話をしていたクロエだったが、持ってきていた大きめの茶封筒を手にすると、その表情が堅くなった。
リュカは若干不安になりつつ、いつものようにソファに腰を下ろしたクロエの隣にぴったりくっついて座る。
向き合ってクロエの顔を見るのも好きだが、こうしてクロエの体温を感じている方が落ち着くのだ。
クロエも慣れてきたのか、文句を言われることなく話をきり出した。
「リュカ、最近、何か変わったことはなかった?」
クロエの質問に、リュカは首を傾げた。
ここ最近のことを思い返してみたが、特に何かあった記憶はない。
困惑した表情を浮かべるリュカに、クロエはふぅと息を吐いた。
「特に思い当たることはないのね? そう……。これを見て欲しいの」
クロエはそう言って、茶封筒の中身を取り出した。
出てきたのはなんの変哲もない白い封筒と何枚もの便箋、一葉の印画紙だった。
それらを受け取りざっと内容を確認したリュカの顔から、表情が抜け落ちた。
陳腐で筋違いなことが書かれている脅迫状だった。
リュカとクロエが結婚したことが気に食わない者が、一定数居るのはリュカも知っていた。
リュカの魅了の力は、リュカと接触しなければ徐々にその影響が抜けていく。
ただ、中にはリュカに対する執着に意識がいき過ぎ、魅了の力が抜けない者も居るのだ。
東の魔王はリュカの明確な拒絶で引き下がったが、それは彼が強固な自我と意志を持っていたからだろう。
自分を持っている者は、魅了の力に影響されても囚われることはない。
逆を言えば、東の魔王並みの強固な自我がなければ、魅了の力が持続している者は段々と狂っていく。
それこそ、余程の衝撃がない限りは……。
リュカは形の良い下唇を噛み締めた。
悔しかった。
元々、リュカの身を守るための婚姻だ。
結婚さえしてしまえば、大方は諦めるだろうと予測していた。
実際、実家に押し寄せていた求愛者は激減した。
ただ、それでも諦めない厄介な相手は残っている。
だからといって王都騎士団の隊長格であるクロエに喧嘩を売る度胸の持ち主は居ないだろうと思っていた。
東の魔王さえ引き下がれば、あとは雑魚しかいないと。
祖父の力で聖域化したこの家に居れば、聖域を囲うようにクロエが張った結界があれば問題ないと油断していたのだ。
リュカは重たい息を吐いて、もう一度印画紙に視線を落とした。
写っているのは、確かに外に着ていったことのない作業着姿のリュカだ。
布だけ婚姻以前に買い求めたもので、婚姻後にリュカが練習がてら意匠から一人で仕立てた。
裏庭いじりの時にしか着ていない作業着を、クロエや家を尋ねてきた家族以外が知るはずがない。
つまり、合成念写ではなく、実際にリュカの姿が撮影されてしまったということだ。
クロエの懸念していることは、リュカにも分かる。
相手は結界と聖域の二重の目くらましをすり抜けてリュカの姿を撮影出来る者だ。
並みの術師ではないだろう。
「リュカ。唇が傷つくわ」
噛みしめた唇に、クロエの指先が触れた。
リュカははっと顔を上げる。
クロエの深緑の瞳が、心配そうにリュカを見つめていた。
リュカが見つめ返すと、クロエがふっと目線を落とす。
「……あなたに心労をかけたかったわけではないの。リュカに脅迫状を黙っていることも考えたのよ。でも、それでは万全を期せないと思った。相手は凄腕の術師本人、もしくはその術師につながりを持っている者だもの。他の有象無象とは違うわ。さすがに家の内部を透視する術はないし、庭はともかく家自体にも術が刻んであるからある程度は大丈夫だとは思うけれど、狙われている自覚を持ってもらった方が良いと、私は判断したの。ラ・トゥールのお家とブランセルにも相談するわ。聖域のこともあるから精霊王にも。……本当は私ひとりで守れれば良いけれど、矜持に拘っている場合ではないものね」
クロエが自嘲気味に笑う。
己の力不足を嘆くクロエの手を、リュカは両手で握った。
「僕よりクロエさんの方が心配です。天誅を加えるって……クロエさんを害するって宣言じゃないですか」
リュカは眉間に深いしわを刻んだ。
命が惜しければ、とまで書いてある。
本気なら生ぬるい手は使わないだろう。
クロエが凄腕というほどの相手だ。
リュカの顔が歪む。
視界がぼやけてきた。
何度か口を開閉したが、言葉が出てこなかった。
クロエは本来なら、こんな危険な目に遭う必要のなかった人だ。
リュカが一方的に巻き込んだ。
なら、解放するのもリュカの側からでなくては……。
「リュカ」
クロエに手を引かれ、クロエの胸に顔を埋める形になった。
その柔らかさと良い匂いが、焦燥にかられたリュカの心をなだめてくれる。
リュカはみっともないと思いながらも、クロエの服をぎゅっと握った。
柔らかな声がリュカの耳に降ってくる。
「リュカ。そう思い詰めないで。まだ何か起こったわけではないのよ」
「でも……」
「私なら大丈夫。これでも何度も死線をくぐっているの。……妖魔相手だけではなく、人間相手でもね」
クロエはそう言ってくれるが、リュカは余計に申し訳ない気持ちになった。
クロエの顔を見る勇気もなく、顔を伏せたままでぽつりとつぶやく。
「巻き込んで、ごめんなさい」
「リュカ」
クロエの声が硬質を帯びる。
おそるおそる埋まっていた胸から顔を上げると、クロエは不機嫌そうな顔をしていた。
「私を見くびらないでちょうだい」
ぴしゃりとクロエが言った。
「確かに相手の力量は未知数よ。でも私の命が狙われるのも、リュカの貞操が狙われるのも、想定内なの。両陛下からの圧力があったことも否定しないけれど、最終的にリュカとの結婚を承諾したのは私。この程度のことで後悔する程度の覚悟で結婚したのではないわ。リュカは違うの?」
虚偽は許さないと鋭い目で見下ろされる。
クロエはいつもリュカに甘かった。
部下にびしばし指示を飛ばしている所を見たことはあるが、カッコいいと思っても怖いとは思わなかった。
次兄がどうしてそこまでクロエを恐れるのか、正直分からなかった。
今までは。
「私と離縁して、精霊王の所へ逃げ込めば、私もリュカも大丈夫でしょう。安全面では、ね」
含みを持たせた言い方をしたクロエが、すっと目を細めた。
リュカの肩が思わず跳ねる。
蛇ににらまれた蛙の気持ちがよく分かった。
クロエに見えないことを良いことに様子をうかがっていた精霊たちも、部屋の隅で固まって震えている気配がする。
「どうかしら、リュカ? 離縁したくなったかしら?」
クロエの再度の問いかけに、我に返ったリュカはぶんぶんと首を横に振った。
「い、嫌です! クロエさんのお側に居たいです! 離縁したくないです!」
口から出てきたのは、自分本位な言葉だ。
クロエが鋭い目つきのまま、わずかに首を傾げた。
「本当に?」
「本当です!」
リュカはクロエの背中に腕を回し、ぎゅっとしがみついた。
クロエを危険な目に遭わせる可能性があっても、結局リュカはクロエから離れたくないのだ。
一度手に入れてしまった幸福を、手放すことは出来そうもない。
「そう……」
クロエが思案するように間を置いた。
リュカはびくびくと沙汰を待った。
脅迫状が来たというだけでここまで取り乱してしまった自分を、クロエが見放すかも知れない。
そう考えると恐ろしくて堪らない。
「リュカ」
再度、名前を呼ばれる。
その声は優しくて、リュカは泣きそうになった。
「それならば、私があなたを守るわ。だから怯えないで」
「ぼ、僕は……僕がクロエさんに返せるものがあるでしょうか?」
リュカの言葉に、クロエがひょいと片眉をあげた。
「あら、結構返してもらっているでしょう。リュカに癒されているし、ご飯は美味しいし、加護付きの小物までもらって…………あとは好意も」
ぽつりと最後に付け足したクロエの目元が赤い。
それを見たリュカは辛抱するようにぷるぷる震え、
「クロエさん!」
結局たまらずにクロエを押し倒した。
ソファの肘掛けに頭を預け目を瞬くクロエの唇を、自身の唇でふさぐ。
「んっ、はあ、ちょっ」
「はむっ、あ、」
何度も角度を変えて、浅く深く、ねっとりと口腔を犯す。
部屋着の上から脇腹を撫で上げ、クロエの脚の間に膝を割り込んだ所で、力ずくで引き剥がされた。
こういう時、我が身の非力が恨めしい。
リュカがぷくっと頬を膨らませると、クロエが真っ赤な顔で抗議してきた。
「いきなり何をするの!」
「だって、クロエさんが可愛かったんですもん」
「かわっ、~~~っ、真面目な話をしていたでしょう!」
「はい! 身辺には今まで以上に気をつけますし、お祖父様とか使える人は使いましょう! クロエさんも気を付けてくださいね!」
「切り替えが早過ぎではないの、リュカ」
じとっとクロエが半眼でにらんでくる。
リュカは満面の笑みを浮かべて答えた。
「クロエさんと離れるのは、死んでも嫌だなって心底思ったので! クロエさん、大好きです!」
全力で心を込めて言うと、クロエは数瞬目を泳がせた後、頬を染めて小声で答えた。
「私も……好きよ」
「クロエさん!!!」
クロエの一言で理性が吹き飛んだリュカは、再びクロエにのし掛かった。
クロエももう一度リュカを引き剥がすようなことはなく、ソファの上で身体の力を抜いた。
嬉々としてクロエの服を脱がすリュカの目の端に、やれやれと首を振りながら部屋を出て行く精霊たちの姿がちらりと映ったが、もはや気にする余裕もリュカにはなかった。
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