Boy Meets Boy

TERRA

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Boy Meets Boy

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廃工場の薄暗い空間に、朝の光が少しずつ差し込んでいた。  
ひんやりとした空気の中に、昨夜の余韻が微かに残っている。  
鉄骨の軋む音が時折響き、静寂の中にかすかな生活の気配が滲んでいた。  

ソファに腰を下ろした愛兎は、むすっとした表情で膝を抱えている。  
無言のまま視線を落とし、まるで誰かに文句を言いたそうに息をついた。  

簡易キッチンの隅では、恋がピザの箱を開け、電子レンジのボタンを押す。  
「チン」という機械的な音が鳴り、温められたピザの香りがゆっくりと広がった。  

「愛ちゃん、機嫌直してよ。」  

恋が軽く笑いながら、ピザの箱を片手に持ってソファへ戻ってくる。  
愛兎は顔をそむけたまま、何も言わない。  

「ほら、ピザの残り。温めたけど、食べる?」  

恋が一切れを差し出すと、愛兎は一瞬だけためらったあと、小さく頷いた。    

その仕草があまりに素直で、恋は思わず満足げに笑う。  
ピザの端を持ち上げながら、愛兎の口元へとそっと差し出した。  

「はい、あーん♡」  
「っ…!」  

愛兎は顔を赤らめながら、素早くピザを受け取る。  
その様子を見て、恋は面白そうに笑った。  

「愛ちゃんてさ、童貞?」  
「なっ…!」  

予想外の問いに、愛兎は反射的に声を上げる。  
手に持っていたピザを奪うように口へ運び、視線を逸らした。  

「やっぱそっか。」  
恋は肩をすくめながら、もう一切れを手に取り、のんびりとかじる。  

「ねぇ、今日は何したい?」  

「え?」  
愛兎はピザをかじりながら、戸惑うように恋を見上げる。  

「ほら、だって今日って学校休みでしょ?」  
「……。」  

「デートでもする?」  
「っ……デート?」  

愛兎は喉を詰まらせそうになり、慌ててピザを飲み込んだ。  

「って、大丈夫なんですか?」  
「あー、また敬語になってる。」  

恋はクスクスと笑いながら、ピザをかじる。  

「お金とか」  
「ん?」  
「だってほら、昨日。」  

恋は少しだけ目を細め、愛兎をからかうような口調で続けた。  

「あー、恥ずかしいとこ見られちゃったよね。恥ずかしいっていうか、犯行現場っていうか。」  
愛兎は顔を赤らめながら、ぎゅっと視線をそらした。  

「じゃあ俺の罪は、住居侵入と誘拐?と、窃盗……とか?」  

恋はふっと笑いながら、愛兎の反応を楽しむように言葉を継ぐ。  

「愛ちゃんはそんな男と寝て、怖くないの?」  

「寝……っ?」  
愛兎は驚いたように恋を見つめた。  

「ぐーすか寝てたじゃん、俺の隣で。」  

「……あっ。」  
愛兎は思い出したように顔を伏せた。  

「だって……眠くて。」  
愛兎は、恥ずかしそうに言葉を紡ぐ。

そんな愛兎の様子に、恋はピザを口に運びながら軽く肩をすくめた。  

「行きたいとこないなら、俺と一日中エロい事しよっか♡」  
「っ……!」  

愛兎は顔を真っ赤に染めながら、何も言えずにピザをかじった。  

「……あ。」  
「ん?」  

「行きたいとこ、あるん……だけど。」  

廃工場の空気はひんやりと冷たく、古びた鉄骨が静かに軋んでいる。  

恋はピザの箱をそっと押しのけ、目の前の空間を見つめる。  
愛兎は一瞬ためらいながら、視線を落とした。  
静かな空気の中で、二人の間にわずかな緊張が流れる。  

「……どこ行きたいの?」  

恋の声が、朝の冷たい空気に溶けていく。  
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