Boy Meets Boy

TERRA

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Boy Meets Boy

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水族館の中は、青い光がゆらめいていた。  
天井のガラス越しに柔らかな光が差し込み、海中のような静けさが広がる。  
大きな水槽の中を泳ぐ魚たちは、まるで無重力の中を漂うかのように滑らかに動いていた。  
水の流れが壁に映し出され、その揺らぎが二人の輪郭を曖昧にする。  

恋と愛兎は、人混みの中をゆっくりと歩いていた。  
子どもたちの笑い声や、水が循環する音が静かに響く。  
その中で、恋はふと立ち止まり、クラゲの展示をじっと見つめた。  

「んー、ベタでいいねぇ。」  

水槽の中をふわふわと漂うクラゲが、淡い光を反射するたびに幻想的な輝きを放つ。  
愛兎はその隣で、落ち着かない様子で立っている。  

「この後は遊園地とか映画館とか?」  
恋が軽く振り向いて言うと、愛兎は小さく首を振った。  
曇ったガラス越しに揺れる魚の影が、まるで水の中から見上げる世界のようだった。  

「俺、多分こういう場所って一生縁がなさそうだから、一度来てみたかったんだ。」  
恋の言葉に、愛兎は驚いたように顔を上げる。  
淡いブルーの光が横顔を照らし、その表情にどこか遠いものを感じた。  

「……ん?」  
「子供の頃には来たことあるかもしれないけど。ほら……定番のデートコースっていうか。デートの練習っていうか……。」  

恋は肩をすくめながら、ゆったりと泳ぐエイを見つめる。  
その動きは、まるで深海の静寂を体現しているかのようだった。  

「俺も初めて来たけど、やっぱ普通の人はこういうデートしてんのかな?」  

愛兎は少しだけ考え込むようにして、恋を見上げた。  
ガラス越しの青い世界に映る自分たちの姿が、どこか現実感を曖昧にする。  

経験豊富そうな彼が、定番のデートコースに来たことが無い。
なんだかそれは信じられない台詞だった。

「飲み屋と家とホテルが俺のデートコースだからさ。」  

恋が軽く笑うと、愛兎は顔を赤らめながら視線をそらした。  
「……じゃあ、恋くんは。」  

「ぷっ。」  
恋は思わず吹き出した。  

「何、くん付けって。なんか恥ずかしいね、ソレ。」  

愛兎はさらに顔を赤らめながら、口を閉じる。  

「恋でいいよ。」  

「……恋。」  

愛兎が小さな声でそう呼ぶと、恋は満足そうに笑った。  

クラゲの光の中、ふいに恋の手が動いた。  
愛兎の顎にそっと触れ、その動きはまるで水の流れのように自然だった。  

「……っ。」  

驚いて顔を上げると、恋の顔がすぐ近くにある。  
水槽の中の青い光が二人を包み、世界が静かに揺れる。  

そのまま、恋はゆっくりと愛兎の唇に触れるようにキスをした。  

青の透明な波の中、時間が溶けていく。  
愛兎は目を見開いたまま、何も言えずに立ち尽くしていた。  
恋はゆっくりと顔を離し、穏やかに微笑む。  

「……こういうデートも悪くないね。」  

愛兎は胸の鼓動が早くなるのを感じながら、ただ恋を見つめていた。  
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