Boy Meets Boy

TERRA

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Boy Meets Boy

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水族館のカフェは、まるで水の中にいるような不思議な空間だった。  
壁一面に広がる巨大な水槽には、色鮮やかな魚たちがゆったりと泳ぎ、  
その動きが青い光と共に、店内のテーブルや椅子に反射している。  

柔らかい波紋のような光が、恋と愛兎の手元にも揺れていた。  
テーブルには二人分の飲み物が並び、カップの縁に細かい水滴がついている。  
水族館特有の静けさの中に、遠くから子どもたちの歓声や水の流れる音が微かに混ざる。  

「愛ちゃーん、いつまで怒ってんの?」  

恋がストローをくわえながら、からかうように言う。  
愛兎は無言のまま視線をカップへ落とし、その指先で縁をなぞった。  
水槽の中の魚たちは、ゆるやかに体を揺らしながら、まるで二人の様子を覗き込んでいるかのようだった。  

「デートの予行練習したかったんでしょ?」  

恋の言葉に、愛兎は顔を上げる。  
水槽の中をゆらゆらと漂うクラゲが、青白い光を反射しながら波のように揺れた。  

「愛ちゃんの恋愛対象が男か女か知らないけど、どっちにしろテンプレで攻略できるっていう練習のつもりだったんだけど。」  

「……は?」  
愛兎は眉をひそめる。恋は肩をすくめながら続けた。  

「だってそうじゃん?恋愛の入口なんてさぁ、男は手軽にヤれて言うこと聞いてくれそうなスキのある幸薄美人が好きだし、女はお姫様扱いしてくれるイケメンのクズが好きなんだよ。」  

恋は軽い口調で言い放つが、その言葉にどこか冷たさが滲んでいた。  
愛兎はその言葉に何も返せず、ただ恋を見つめる。  

水槽の向こうで、小さなエイがすっとガラスの表面を滑るように動いた。  
その様子がまるで、恋の言葉を静かに受け止めているかのようだった。  

「恋って、誰かを好きになったことないでしょ。」  

愛兎の問いに、恋はふっと笑う。  
水槽の青い光が、その目の奥でゆっくりと揺れる。  

「愛ちゃんは?」  
「わかんない。」  

愛兎は視線を落とし、カップの中の飲み物を見つめた。  
波紋のような光が、テーブルに淡く広がっている。  

「別に誰でも良さそうだけど、多分誰とも上手くいかないと思う。」  

その言葉に、恋は少しだけ目を細めた。  

「なら俺と恋愛してみる?」  

「?」  
愛兎は驚いて顔を上げる。恋はストローをくわえたまま、軽く笑った。  

「お試しってことで。」  

愛兎は何も言えずに恋を見つめた。  
水槽の中の魚たちが、二人の様子を静かに見守っているようだった。  

恋はふっと息を吐き、視線を水槽に向ける。  

「でさ、俺は……また誰かを死ぬほど好きになってみたい。」  

その言葉に、愛兎は息を飲んだ。  
「……恋?」  

恋は少しだけ目を伏せ、笑みを浮かべた。  
水の揺らぎが、その表情に微かに重なる。  

「俺にも一応、純粋だった子供時代があるんだよ。」  

恋の声には、どこか遠い記憶を懐かしむような響きがあった。  

「……もう戻れないけど、俺のは最高の初恋だった。」  

愛兎はその言葉の意味を考えながら、恋の横顔をじっと見つめていた。  
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