Boy Meets Boy

Boy Meets Boy

12

夜風が静かに吹き抜ける山の頂上。  
星空が広がり、無数の星々が冷たい光を放っている。  
その光は、恋と愛兎の間に漂う微妙な空気を照らし出すようだった。  

恋は愛兎をそっと抱きしめ、唇を重ねた。  
その瞬間、星空の静寂が二人の間に溶け込む。  

「……んっ。」  

愛兎は驚きながらも、恋の温もりに身を委ねる。  
唇が触れ合うたび、胸の奥がざわめくような感覚が広がっていく。  
その感覚は、まるで星々の光が心の奥深くまで届いているかのようだった。  

「……んん。」  

恋はゆっくりと唇を離し、愛兎の顔を見つめた。  
その瞳には、一瞬だけ迷いのようなものが浮かんでいたが、すぐに冷たい笑みへと変わる。  

「家まで送るよ。」  

「……恋？」  
愛兎は戸惑いながら恋を見上げる。  
恋はポケットに手を突っ込み、軽く肩をすくめた。  

「ほら、だってもう、愛ちゃんのこと攻略できそうだし。」  

「……っ。」  
愛兎の胸に、冷たい言葉が突き刺さる。  
その言葉は、星空の静けさを一瞬で壊すような鋭さを持っていた。  

「ホント、どいつもこいつも依存体質のメンヘラばっかで、イージー過ぎてつまんねぇから。」  

恋の声は軽い調子だったが、その裏に隠された感情は、愛兎には見えなかった。  
その言葉の奥にあるものを探ろうとする愛兎の視線は、恋の冷たい笑みに遮られる。  

車のドアが閉まる音が、夜の静寂を切り裂いた。  
恋は無言でエンジンをかけ、車はゆっくりと山道を下り始める。  

助手席に座る愛兎は、窓の外を見つめていた。  
街の灯りが近づくにつれ、山の暗闇が後ろへと遠ざかっていく。  

窓越しに見える景色は、どこか冷たく、遠い。  
街灯が点々と並ぶ道路、夜遅くまで営業しているコンビニの明かり、そして、すれ違う車のヘッドライト。それらが、まるで別れの予感を告げるように、静かに流れていく。  

愛兎は、ふと窓に映る自分の顔を見た。  
その表情は、自分でも驚くほど曖昧で、何を考えているのか分からなかった。  

恋はハンドルを握りながら、前を見つめている。  
その横顔は、山の頂上で見せた柔らかさとは違い、どこか冷たく、硬いものだった。  

車内に流れる静寂は、二人の間に広がる距離を象徴しているかのようだった。  

街の中心部に近づくにつれ、車の窓から見える景色は、ますます鮮やかになっていく。  
ネオンの光、行き交う人々、そして、夜の喧騒。それらが、二人の静けさを際立たせていた。  

愛兎は、そっと目を閉じた。  
胸の中に広がる感情を整理しようとするが、答えは見つからない。  

恋は何も言わず、ただ車を走らせ続けた。  
その横顔には、星空の下で見せた迷いが、微かに残っているようだった。