Boy Meets Boy

Boy Meets Boy

16

夜の公園は、静寂の中に冷たい空気が漂っていた。  
街灯の光がぼんやりと地面を照らし、ブランコの鎖が風に揺れて微かにきしむ音を立てる。  
虫の鳴き声が遠くで響き、夜の空気に溶け込んでいた。  

「俺が居た部屋の窓と玄関が同時に見える場所っていうと、思いつくのは一つしかない。」  

恋の声が静かに響く。  
その言葉に、愛兎の肩がピクリと震えた。  
確信に満ちたその声は、夜の冷たい空気をさらに重くするようだった。  

「……うん。」  

愛兎は小さな声で呟いた。  
視線を地面に落とし、靴先で砂を掻く。  
その動作は、何かを隠そうとするかのようにぎこちなかった。  

「恋が部屋荒らしてるのも、女の人と鉢合わせしそうになってるのも……全部見てた。」  

恋はポケットに手を突っ込みながら、ふっと息を吐いた。  
その息は、夜の冷たい空気に溶けていく。  

「つか、俺から盗んだもの、返してくんない？」  

愛兎はポケットに手を入れ、震える指でナイフを取り出した。  
その刃は街灯の光を受けて冷たく光っていた。  

「ごめん。もう会えないと思ったから……。」  

恋はナイフを受け取りながら、微かに笑った。  
その笑みは、どこか乾いたものだった。  

「必死だね。」  

愛兎は何も言えず、唇を噛んだ。  
その動作が、胸の奥に広がる不安を隠そうとするかのようだった。  

「あの屋上で、死ななくてもいい理由でも探してた？」  

恋の言葉が、夜の静寂を切り裂くように響く。  
愛兎は息を詰め、目を閉じた。  

「……っ。」  

恋はナイフをポケットにしまいながら、静かに言葉を続けた。  

「俺のこと、屋上から見てたんだよね？」  

愛兎は何も答えられなかった。  
ただ、胸の奥で何かが崩れる音がした。  

「へぇ……。」  

恋はブランコの鎖を軽く揺らし、夜の空を見上げた。  
その動作はどこか無造作で、けれど何かを確かめるようなものだった。  

恋はブランコから立ち上がり、愛兎を見下ろした。  
その視線は冷静で、どこか鋭さを帯びている。  

愛兎はその場に座ったまま、冷たい風に吹かれていた。  
街灯の光が二人の影を長く伸ばし、夜の静寂がさらに深まっていく。