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日常編:ビャクヤ✕キョーヤ/霧生兄弟
ガラガラ抽選会と南の島
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商店街の賑わう通りを、白夜と狂夜が並んで歩く。
年の瀬の空気は、どこか胸が高鳴るような活気を帯びていた。
提灯がぶら下がり、店先には「福引き会場」の案内が掲げられている。
「にーちゃん、見ろよ!1等はペア旅行券だってよ!」
狂夜が興奮気味に指をさす。
「……エルドラリオン島?」
白夜はちらりと景品札を眺めた。
南国の楽園、透き通る海、青い空。
兄弟にとっては、まるで縁のない世界だ。
「俺、旅行とか行ったことねぇんだよな」
狂夜はふと思い出すように呟く。
「1回ぐらい、旅行とか行ってみてぇー」
その言葉に、白夜は小さく肩をすくめた。
そうして、二人は福引き会場の列に並ぶ。
「ほら、これ。俺ら5回分あるぞ」
狂夜は握りしめた抽選券を嬉しそうに見せる。
まずは弟の挑戦。
ガラガラッと勢いよく抽選機を回すと……。
「お!洗剤セット!」
幸先の良いスタートに、笑みがこぼれる。
だが、次は……たわし。
「……は?」
さらに、ポケットティッシュ。
「くそっ!」
四回目も、ポケットティッシュ。
カラカラ……と寂しい音が響く。
「……オイ、こっち見んな!」
無言の敗北感に包まれた狂夜は、最後の1回を兄に託した。
「白夜……頼む、ここはにーちゃんの運で決めてくれ。」
白夜は面倒そうな顔をしながら、黙って抽選機を回す。
カラカラ……
カラカラ……
チリーン!!!
大当たりの鐘が鳴り響き、会場がざわめいた。
「おめでとうございます!!!1等・エルドラリオンペア旅行券当選です!!」
「にーちゃん!!すげぇ!!マジで当たったじゃん!!」
狂夜は思わず飛び跳ねる。
商店街の人々が驚き、笑い声と拍手が沸き起こる。
白夜は、受け取った旅行券をじっと見つめた。
「……パスポート作んなきゃ。」
冷静に現実を考える兄の隣で、狂夜は期待に満ちた声を上げた。
「俺ら、ついに南の島に行くんだぞ!?やったーーー!冒険の旅だっ!」
冬の空に、ほんの少し春のような暖かさが宿った気がした。
この年の暮れ、兄弟は人生初の海外旅行に出ることになる。
年の瀬の空気は、どこか胸が高鳴るような活気を帯びていた。
提灯がぶら下がり、店先には「福引き会場」の案内が掲げられている。
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狂夜が興奮気味に指をさす。
「……エルドラリオン島?」
白夜はちらりと景品札を眺めた。
南国の楽園、透き通る海、青い空。
兄弟にとっては、まるで縁のない世界だ。
「俺、旅行とか行ったことねぇんだよな」
狂夜はふと思い出すように呟く。
「1回ぐらい、旅行とか行ってみてぇー」
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そうして、二人は福引き会場の列に並ぶ。
「ほら、これ。俺ら5回分あるぞ」
狂夜は握りしめた抽選券を嬉しそうに見せる。
まずは弟の挑戦。
ガラガラッと勢いよく抽選機を回すと……。
「お!洗剤セット!」
幸先の良いスタートに、笑みがこぼれる。
だが、次は……たわし。
「……は?」
さらに、ポケットティッシュ。
「くそっ!」
四回目も、ポケットティッシュ。
カラカラ……と寂しい音が響く。
「……オイ、こっち見んな!」
無言の敗北感に包まれた狂夜は、最後の1回を兄に託した。
「白夜……頼む、ここはにーちゃんの運で決めてくれ。」
白夜は面倒そうな顔をしながら、黙って抽選機を回す。
カラカラ……
カラカラ……
チリーン!!!
大当たりの鐘が鳴り響き、会場がざわめいた。
「おめでとうございます!!!1等・エルドラリオンペア旅行券当選です!!」
「にーちゃん!!すげぇ!!マジで当たったじゃん!!」
狂夜は思わず飛び跳ねる。
商店街の人々が驚き、笑い声と拍手が沸き起こる。
白夜は、受け取った旅行券をじっと見つめた。
「……パスポート作んなきゃ。」
冷静に現実を考える兄の隣で、狂夜は期待に満ちた声を上げた。
「俺ら、ついに南の島に行くんだぞ!?やったーーー!冒険の旅だっ!」
冬の空に、ほんの少し春のような暖かさが宿った気がした。
この年の暮れ、兄弟は人生初の海外旅行に出ることになる。
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