黄泉ノ彼岸葬儀店

TERRA

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EP.2Memoria et Tea記憶と紅茶

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視界が回転するように歪み、二人は無重力のような感覚に包まれた。  

次の瞬間、足元にしっかりとした地面の感触が戻る。  

静寂。  

棺はぐらりと揺れながら姿勢を整え、周囲を見渡した。  
目の前には、数十年前の裏山の景色が広がっている。  

「っ……これって、過去?」  
棺は息をのみながら黄泉に視線を向ける。  

黄泉は腕を組み、飄々とした態度で言った。  

「当然だろ。こっちの方が楽だからな。」  

棺は呆れたようにため息をつきかけたが、その瞬間、足音が近づいてくるのが聞こえた。  

二人は反射的に振り返る。  

木々の隙間から、二人の子供が現れた。  
小学生くらいの少女と少年。  

少女の髪は揺れ、瞳は澄んでいる。  
その顔には、確かな懐かしさがあった。  

「碧野さん……!」  
棺は驚きの声をあげた。  

過去の記憶の中で動く透子の姿。  
彼女はあどけない笑顔を浮かべながら、少年と共に切り株の前に立った。  

「透子ちゃん、この切り株の下でいいかな?」  
少年がスコップを持ち、楽しげに問いかける。  

「うんっ!」  
透子は嬉しそうに頷いた。  

二人は無邪気に話しながら、小さな手で穴を掘り始める。  
そこにタイムカプセルをそっと埋め、優しく土をかぶせる。  

少年が木の幹を叩き、「これで大丈夫!」と微笑む。  
透子も「うん、またいつか掘り起こそうね!」と楽しげに笑う。  

棺はその光景を眺めながら、ほっと微笑んだ。  

「いいなぁ……こういうの。」  

黄泉は飄々と答える。  
「ふーん?」  

しかし、次の瞬間。  

棺はぎょっとした。  
視線の先で黄泉が無造作にシャベルを持ち、すでにタイムカプセルを掘り起こし始めていた。  

「……え?」  
棺は思わず絶句する。  

「おいおい、今埋めたばっかりなのに!?風情ってものが……!」  

黄泉は肩をすくめながら、黙々と作業を続ける。  
「今すぐ取り出した方が楽じゃん。後で探すとかダルいし。今なら土も軟らかいし……」  

棺は苦笑して黄泉を見る。  
「今掘るとか、さすがにムードがないって…。」  

しかし黄泉は完全に気にしていない様子で、土をかき分け続ける。  

その時だった。  

ポツ、ポツ、と雨が降り始めた。  
空が暗くなり、風がわずかに強まる。  

棺はふと、気になったことを口にした。  
「黄泉……精神世界で盗ったものって、現実に影響とか与えるの…?」  

黄泉は掘る手を止め、ニヤリと笑った。  
「問題になったことはないねぇ。持ち主はもう死んでるし。」  

棺はその言葉に少し息を詰まらせた。  
しかし、その直後。  

――ドォォォンッ!

轟音が響く。  

地面が揺れた。  

棺は驚愕し、すぐさま木にしがみつく。  

「っ!?地震……!?」  

黄泉はタイムカプセルをしっかり抱えながら、冷静に周囲を見渡す。  

「おい、棺。試してみる?」  

「試すって……何を……!」  

しかし、その問いに答える間もなく。  

雨が激しさを増し、揺れる木々が不吉な音を立てる。  

そして

棺の背後から、土砂崩れが迫ってきた。  

「うわあぁぁぁぁぁ――――!」  

絶体絶命。  

棺は叫び、必死に足を動かそうとする。  

しかし次の瞬間

黄泉が飛び込むように棺を掴み、視界が歪んだ。  

そして、世界が弾けるように変わった。

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