黄泉ノ彼岸葬儀店

TERRA

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EP.4Domus Silens 静寂の館

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優牙の精神世界は、静かで薄暗かった。  
古びた洋館の廊下が続き、壁には色褪せた絵画がいくつも掛けられている。  
床は軋むような音を立て、窓から差し込む光はどこか冷たい。  

黄泉と棺は、慎重に歩を進めていた。  
廊下の奥には、優牙の部屋がある、彼女の心の奥底を象徴する場所。  

「……ここか。」  
黄泉が立ち止まり、扉を見上げる。  

棺は息を整えながら、ゆっくりと扉を押した。  


部屋の中は、優雅でありながらどこか寂しげだった。  
アンティーク調の家具が並び、窓辺には鳥かごが置かれている。  
しかし、その鳥かごは空っぽだった。  

「……優牙さんの部屋か。」  
棺が呟く。  

黄泉は部屋を見渡しながら、軽く肩をすくめる。  
「こういうのが箱入り娘っていうんだろうな。」  

棺は鳥かごに近づき、その中を覗き込む。  
「……鳥がいない。」  

黄泉は無造作に棚を開けながら言った。  
「そりゃそうだろ。コイツは鳥かごの外に飛び出したんだから。」  

棺はその言葉に眉をひそめる。  
「でも、飛び出した先で傷ついた……。」  

黄泉は軽く舌打ちをしながら、棚の奥を探る。  
「さて、こいつの本音がどこにあるかだな。」  

棺は部屋の隅に目を向ける。  
そこには、小さな机が置かれていた。  
その上には、一冊のノートが置かれている。  

棺は慎重に近づき、ノートを手に取る。  
「……これかな?」  

黄泉が振り返り、ノートを見つめる。  
「ふーん?日記帳か。」  

棺はノートを開き、ページをめくる。  
そこには、優牙の本音が綴られていた。  

「……家族への感謝と謝罪。」  
「そして……自分の孤独。」  

黄泉は腕を組みながら、静かに呟いた。  
「こいつ、普段は本音を言えないタイプだろうな。」  

棺はページをめくり続ける。  
「でも、ここには全部書いてある。」  

黄泉は軽く笑いながら言った。  
「なるほどね。これが閉じ込められた鳥の声ってわけか。」  

棺はノートを閉じ、黄泉を見つめる。  
「これを家族に届ければ……優牙さんの未練は晴れるかもしれない。」  

黄泉は肩をすくめながら、部屋を見渡した。  
「まぁ、そうだな。問題は、こいつが悪霊化する前に間に合うかどうかだ。」  

棺はノートを握りしめ、静かに頷いた。  

部屋の空気は、微かに揺らいでいた。  
鳥かごの影が、窓辺で静かに揺れていた。
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