黄泉ノ彼岸葬儀店

TERRA

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EP.6最後の刃Ultima Lamina

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静寂が、すべてを包んでいた。  

ここは精神世界。
未銅一郎の記憶が作り出した空間。 
 
整えられた和室の床は、磨き上げられた木の温もりを帯び、障子の奥には竹林が揺れている。  

かすかな風の音と共に、緑の葉がそよぎ、優雅な世界が広がっていた。  

黄泉と棺は、静かに正座していた。
  
未銅一郎は、彼らの前に座り、湯気の立つ茶碗を手にしている。  

卓上には緑茶のセットと、繊細な和菓子が並べられていた。  
翡翠の茶はほのかに苦みを含み、竹細工の菓子皿に乗る甘味は慎ましい彩りを添えている。  

未銅一郎は、ゆっくりと茶碗を持ち上げ、静かに口を開いた。  

「お二人には、礼を申すべきなのでしょう。」  

その声は落ち着いており、端正な言葉遣いだった。  
紺の甚兵衛を纏い、白髪を整えた姿は、静謐な空気を纏っている。  

棺は茶碗を手にしながら、軽く眉をひそめる。  

「未練……あるんですか?」  

未銅は静かに頷いた。  

「ええ。それは……『未完成』のものがあるということです。」  

彼は茶をひとくち含み、落ち着いた口調で続けた。  

「私は弟子へ、すべての技を伝えきれなかった。」  

「そして、私の最後の仕事が、未だ完成していないのです。」  

黄泉は緑茶を傾けながら、ふっと息を吐く。  
「なるほどねぇ……。」  

未銅はその言葉に微笑み、障子の外の竹林を静かに見つめた。  

「私の仕事は、ただ鍛冶をすることではなく、技を継ぐことに意味があるのです。」  

棺はその言葉に視線を向けた。  

未銅の目には、穏やかだが、確かな意思が宿っていた。  

竹林が静かに揺れる。  

その風の音が、彼の未練を語るように。  
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