黄泉ノ彼岸葬儀店

EP.6最後の刃Ultima Lamina

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未銅一郎の家は、静けさに包まれていた。  

障子の向こうに広がる竹林は、僅かな風の流れに応じて揺れ、敷き詰められた白砂が夜の光を反射して、穏やかな輝きを帯びている。  

黄泉と棺は玄関を抜け、広々とした和室へと足を踏み入れた。  

その室内では、一人の青年が通夜の準備を進めていた。  

赫夜。
未銅一郎の弟子であり、彼の世話を最後までしていた青年。  

卓上には、位牌や供物の並ぶ整然とした空間。  
しかし、その中心には、赫夜が困惑した表情で抱え込む 小さな木箱があった。  

黄泉はそれに目を留める。  

赫夜は戸惑いながら、それを手のひらで転がした。  
「ははは…。申し訳ない。師匠の遺言が見つからなくて困ってるんですよ。金庫は何故か空っぽで…。」  

「でも、代わりにコレだけが残されていたんです。」  

棺は赫夜の手元をじっと見つめた。
  
木箱は精巧に作られ、表面には何やら細かな彫刻が施されている。  
それはただの箱ではなく、職人の手によるからくり仕掛けのようだった。    

「師匠は、刀鍛冶だけじゃなく、こういう物を作るのが得意だったんです。」  
赫夜は苦笑しながら、軽くそれを指でなぞる。

「たまに、こうやって謎解きを仕掛けて、私に試練を与えてたんですよ。」  

黄泉はその言葉に軽く口角を上げた。  
「へぇ…そりゃまた粋な遺し方ですね。」  

「でも正直、今はそれどころじゃないんです。」  
赫夜は困ったように息を吐く。

「葬儀の準備もあるし……この箱の謎を解いてる暇は」  

黄泉は赫夜の言葉を遮るように、軽く手を挙げた。  

「では、我々がお手伝い致しましょう。」  

赫夜は驚いたように目を見開いた。  
「え……？」