黄泉ノ彼岸葬儀店

TERRA

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EP.7幕が下りる時Curtain Call

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昼下がりの楽屋は、まるで嵐のような慌ただしさに包まれていた。  

スタッフが行き交い、衣装の調整や舞台セットの確認に追われている。
  
本番前の緊張感が空気を張り詰めさせ、誰もが忙しなく動いていた。  

黄泉と棺は、楽屋の隅で立ち止まっていた。  
今日が舞台の封切りの日。

「事件性はない、か。」  

黄泉がぽつりと呟く。  
彼女の死因についての調査は終わり、事故として処理された。  

遺体はようやく警察から戻り、葬儀の最終調整を進めるために、黄泉と棺はここに来ていた。  

その時、目の前に現れたのは朔良明美。  

彼女は男装の麗人の衣装を纏い、舞台の準備を整えていた。  
深い紫の衣装が彼女の長い黒髪と色白の肌を引き立てている。  

代役として舞台に立つ彼女は、柴崎妃とは全く違うタイプの女性だった。  
だが、その静かな佇まいには、妃とは異なる魅力があった。  

「黄泉さん、葬儀の準備は…」  

明美が軽く声をかける。  
黄泉は僅かに微笑みながら、礼儀正しく答えた。  

「はい、滞りなく進めております。ご安心ください。」  

その端正な言葉に、棺は内心「真面目だな」と思いながら黙っていた。  

楽屋の喧騒が続く中、スタッフが明美を呼ぶ声が響く。  

「朔良さん、舞台の確認をお願いします!」  

明美は振り返り、急ぎ足でスタッフの方へ向かおうとする。  

その瞬間。

黄泉が彼女の背中に軽く触れた。  

ポンッ

「おっと失礼。衣装に少し埃がついていたもので。」  

そう言いながら、さりげなく手を払う。  

だが、その瞬間。
明美の瞳が微かに揺れ、一瞬フリーズした。  

彼女は何かを感じ取ったように立ち止まり、わずかに眉を寄せる。  

黄泉は何事もなかったかのように手を引き、棺はその様子をじっと見つめていた。  

「朔良さん、急いで!」  

再びスタッフに呼ばれた明美は、慌てて楽屋を後にする。  
その背中には、どこか新たな気配が宿っているようだった。  

黄泉は静かに棺の方を振り返り、軽く肩をすくめた。  

「さて、舞台が始まるぞ。」  

楽屋の喧騒の中、黄泉の言葉が静かに響いた。  
そして、舞台の幕が上がる準備が進んでいく。
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