黄泉ノ彼岸葬儀店

EP.7幕が下りる時Curtain Call

7

劇場の灯りが落ち、漆黒の闇が場内を包み込んだ。  

一瞬の静寂。

そして、舞台に光がともる。  

そこに立つのは、麗人の姿を纏った朔良明美。  

彼女の背筋はまっすぐに伸び、男装の衣がしなやかに揺れる。  
観客の目が彼女へと集まる。  
そして、その瞬間。

剣が閃いた。  

殺陣の舞が始まる。  

舞台の上で、明美はまるで別人のようだった。  
鋭い足さばき、しなやかな身のこなし。  
刃が空を裂き、相手役の剣と交錯するたび、場内の空気は一層張り詰める。  

その姿は、まるで柴崎妃そのものだった。  

彼女の剣捌きには、確かに妃の面影が宿っていた。  
一太刀ごとに、舞が完成されていく。  
空間が静まり返り、観客は息をのむ。  

明美自身も気づいていた。  

これは私の動きではない。  

刀を握る指先が、まるで誰かに導かれているかのようだった。  

視界が揺らぎ、耳の奥に微かな囁きが響く。  

「最後の舞台だ。」

妃の声が聞こえた気がした。  


そんな彼女達を、劇場の隅で、黄泉と棺は静かに見守っていた。  

棺は目を凝らしながら、かすかな緊張を感じる。  

黄泉は僅かに口角を上げ、目を細めた。 

場内は幻のような雰囲気に包まれていた。  
観客も、明美自身も、何かに取り憑かれたかのような陶酔を感じていた。  

彼女の剣は今、柴崎妃とともに舞っている。  

舞台の幕が降りるその瞬間まで。