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EP.11蒼き夜のノクターンNocturne Caeruleus
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湿った空気が部屋の隅々まで染みついていた。
煙草の匂い。
甘く、苦く、どこか錆びたような残り香がカーテンにこびりついている。
バスルームから、遠くシャワーの音が響いていた。
水が落ちる音が規則的に続く。
だが、部屋の中の時間はどこか歪んでいた。
蒸し暑さが篭るこの空間は、沈黙と湿気が交じり合い、重く、息苦しい。
耳鳴りがする。
揚羽はゆっくりと目を開いた。
視界がぼやける。
薄暗い室内に、オレンジ色のランプが滲んで見えた。
シーツの感触が、不快だった。
冷たいはずなのに、肌にまとわりつく。
指を動かす。
震えていた。
バスルームの向こう。
あの男の気配がまだ残っている。
揚羽は息を詰めながら、ゆっくりと身体を起こした。
思考が追いつかない。
だが、ここにいる理由は分かっていた。
それは、言葉にするまでもなく。
服を探す。
指先が布の感触を拾い、揚羽は素早く腕を通した。
震えが止まらない。
だが、それを気にしている時間はない。
逃げないと。
余計な音を立てず、足音を殺す。
ホテルのドアノブを握る。
湿った手のひらが、金属の冷たさに吸い付く。
そして揚羽は静かに、だが躊躇なくドアを開けた。
夜の廊下は、寒々しく蒼ざめていた。
その向こうに広がる闇へ、揚羽はただ、足を踏み出した。
煙草の匂い。
甘く、苦く、どこか錆びたような残り香がカーテンにこびりついている。
バスルームから、遠くシャワーの音が響いていた。
水が落ちる音が規則的に続く。
だが、部屋の中の時間はどこか歪んでいた。
蒸し暑さが篭るこの空間は、沈黙と湿気が交じり合い、重く、息苦しい。
耳鳴りがする。
揚羽はゆっくりと目を開いた。
視界がぼやける。
薄暗い室内に、オレンジ色のランプが滲んで見えた。
シーツの感触が、不快だった。
冷たいはずなのに、肌にまとわりつく。
指を動かす。
震えていた。
バスルームの向こう。
あの男の気配がまだ残っている。
揚羽は息を詰めながら、ゆっくりと身体を起こした。
思考が追いつかない。
だが、ここにいる理由は分かっていた。
それは、言葉にするまでもなく。
服を探す。
指先が布の感触を拾い、揚羽は素早く腕を通した。
震えが止まらない。
だが、それを気にしている時間はない。
逃げないと。
余計な音を立てず、足音を殺す。
ホテルのドアノブを握る。
湿った手のひらが、金属の冷たさに吸い付く。
そして揚羽は静かに、だが躊躇なくドアを開けた。
夜の廊下は、寒々しく蒼ざめていた。
その向こうに広がる闇へ、揚羽はただ、足を踏み出した。
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※この物語はフィクションです。
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