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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋
2.やってみよう、稲作農家②
しおりを挟むお屋敷の東側にある、農具や台車などが置かれている納屋の前に、一抱えほどもある麻袋が5つ積まれていた。
たぶん、スーパーで売ってる、お米の10㎏袋よりちょっと大きいくらい……
「これって……」
「シオリが食べたがっていた、『お米』だよ」
──やっぱり!!
「どうしようかな? 全部『田んぼ』とやらを作って植えるかい? それとも、まずは一袋くらいだけ試してみるかい? いや、まずは、その美味しい主食としての『お米』がどんな物か食べてみようか」
カインハウザーさま、楽しそう。
「でも、今から間に合うでしょうか? 春から初夏の間に、苗を作って、土を作って、田植えして……夏に実って秋に収穫するんですけど、もう、夏が近いですよね?」
「まぁ、とにかく、少しだけ、えっと『セイマイ』?して食べてみようよ。
で、今夜は、お米について、シオリの知る限りのことを教えてくれるかな?」
めげない人だ。
グレイスさんに精米の事を教えてみたけど、さすが料理人、理屈原理はすぐに理解し、お酒や調味料にもなる事も瞬時に機転を利かせ訊ねてくるほどで、私もそんなに詳しい訳ではないけれど、だいたいのところは呑み込んだようだった。
そんな訳で、今夜のメインテーマは『和食』
お米の袋の中身を見ると、籾種用なのだろう、殻付きだったので、まずは籾すりから。
すり鉢はこの世界にもあったので、軽くひとつかみ少量だけ入れ、ソフトボールはないので布で保護したすりこ木棒を使って、お米を割らない程度に摩って籾殻を剝いていく。
《フィオ、何してるの?》
《それ、面白い?》
台所に棲んでる小妖精達が集まってきて、手伝ってくれる。
おかげで、手が痛くならずに済んだ。
次に、竹筒(この世界にも竹は群生してて、山の斜面を覆ってた)に籾すりした玄米を入れる。
「このままでも玄米と言って、栄養価は高いのですが、クセがあって人によっては食べにくいかも」
「今回は食べやすい方で。栄養価は次に」
「はい。では、精米していきますね。玄米の表面にあるこの薄茶色い成分を磨いて落としていきます」
力を入れすぎないように、竹筒の中のお米を、差し込んだ棒で突いていく。少しづつ糠が取れて、白くなっていく。
「この過程でどれくらい白くするかで、一分搗き、三分搗き、五分搗きと言って、白くなるほど美味しく食べやすく、お酒にするにも高級になりますが、ビタミンや食物繊維など栄養価は落ちていきます」
生徒さん達(カインハウザー様やグレイスさん達周りのみんなと妖精達)はふんふん頷きながら真剣です。
特に、グレイスさんとリリティスさんはメモをとられていました。
この精米がまた骨が折れる仕事なのだけど、勤勉で好奇心旺盛な妖精さん達が殆どやってくれた。
「この糠で、漬物や美容洗顔石鹸などが作れますので、これもとっておきますね」
「無駄がないんだね」
「お百姓さんの知恵と自然の恵みですね」
もちろん、籾殻も、土地に混ぜ込んで肥料にしたり発行させて堆肥にしたり、冬は地面に巻いて畑のカバーになったりする。
それを聞いたセルヴァンスさんは、散らかった籾殻を集めて箱詰めにして処分しかけていたのを、下男の人に倉庫へ運ぶよう指示していた。
ピカピカの光るお米が出来上がる。
「これが上白米。美味しく炊けそうです。日本酒を造るには、もっと削って、本当に芯の部分しか使いません。勿体ないですが、米粉もお団子や小麦粉の代わりに使えるのでそれはそれで」
子供の頃、町内の子供会で行った飯盒炊爨の記憶を頼りに、水加減もこのお米の特色が判からないので一般的な分量で、炊いてみる。
朧気な知識で恐る恐るしたけれど、竃と竃に縛られた火の精霊が助けてくれるので、さすがにお焦げにはならずに済んだ。
グレイスさんが精霊達に愛されてて助かった。
「ほおぉぉぉぅ」×一同
皆さん、スープカップに盛られたご飯を見て、感嘆の声をあげる。見た目は微妙だけど、東洋のいわゆるお茶碗はないからね。
妖精たちの手を借りて、前からお味噌っぽい発酵豆やお醤油っぽい発酵調味油は作ってあったので(熟成期間は足りないけれど彼女達も妖精、魔法で急速発酵させてあるらしい)、味醂はないけどお塩はあるし、それなりの事は出来たので、お魚とお野菜で、『和食』を私が作った。
「シオリ! 素晴らしいよ!! ただの川魚が、塩で焼いただけなのに、『ミソシル』と『ゴハン』のおかげで、こんなに美味しく感じるなんて、いつもの魚とまったく違うものみたいだ」
いたくお気に召されたようです。
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