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第一章 目覚めた記憶
第10話 頭が痛い……
しおりを挟む――乙女ゲームの全体的なシナリオの記憶が断片的にあるくらいで、時系列が分からないというか……。
なので悪役令嬢ヴィヴィアンに生まれ変わってしまった身としては、ヒロインという最大最悪の地雷源を回避するためにも、王立学園という舞台から完全に降りてしまうのが一番いいと判断したのである。
「ああ、成る程、分かりました。そういうことなら、少なくとも僕の方がまだ詳しいってことみたいです。前世の妹が初めて出会う場面がお気に入りだったらしくて、繰り返し聞かされましたから。だから今回、すぐに気づけたんですけど」
「そうだったんですの」
「はい。あの時は鬱陶しく感じたものですが、今となってはちゃんと相手をしてあげればよかったと思ってしまいますけどね」
「それは……私も一緒ですわ。友人の話を、興味が無いからと聞き流していたのですから」
「まさかこんな事態が現実に起こるなんて、ね」
「ええ。誰にも想像できないことです。 まさに事実は小説より奇なりといったところでしょうか……仕方がないですわ」
「そうですね。分かっては、いるんですけど……」
そう言って、少し切なげに目を伏せた。
……後悔していらっしゃるのですね。
思い出したばかりですと、前世でのご家族の記憶はつい昨日のことのように感じ取れてしまうはず。
私がそうだったように、フレデリック様にとってもその記憶はとても大切なものなのでしょうから……。
「でも、思いがけずこの世界に転生して、あの頃の記憶を役立てることが出来る訳ですし。大切に使わせていただきましょう?」
この未来が予想できたならもっと真剣に聞いておいたのに、と思わないこともないけれど……。
「うん、そうですね……ここは、現実だ」
「はい。逃げきれなかった場合、私には過酷な結末が待ち構えていますからっ。現実逃避することは許されておりませんの!」
「う、うん、分かった。ヴィヴィアン嬢が破滅しないように、僕も協力しますから」
「ええ。是非、お願い致しますわ!」
「じゃあ早速、僕の推察を話そうと思う。……多分だけど、ヒロインちゃんも日本からの転生者なんじゃないかな、と考えてます」
「は? そ、そんな……よりにもよってヒロインさんが?」
「はい。まだはっきりと確かめたわけじゃないけど、その可能性が高いかと……」
――嘘でしょう!?
では三人目の転生者と言うことですの!?
そしてその三人共が、この世界の元となる乙女ゲームの知識があると……そういうことですの?
「……異世界転生って、そんなお手軽にホイホイと出来るものなのでしょうか?」
「いやぁ、それは僕にも分からないけど。でも、そう考えると辻褄が合うといいますか……」
「まあ、何てこと…… 」
――頭が痛くなってきましたわ。
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