悪役令嬢だと気づいたので、破滅エンドの回避に入りたいと思います!

飛鳥井 真理

文字の大きさ
60 / 89
第一章 目覚めた記憶

第60話 幸運値

しおりを挟む


「では、彼女が来るのを待ちましょうか」

 水面下での二人の攻防に気付いているのかいないのか……フレデリックがサラッと会話を進めた。

 ちょいちょい迂闊な発言をする彼だが、今回はナイスアシストですわっと、ヴィヴィアンは心の中で拍手喝采した。
 固定されていたシリルの冷え冷えした視線が外されたのだ。一旦、追求を諦める気になったらしい。



「いや、寮ぐらしの二人には門限があるでしょう。これはリリアンヌ嬢もご承知の件だから、早速、話に入ることにしよう」

「お気遣い、ありがとうございます。そうしていただけると僕達も助かります。ね、ヴィヴィアン嬢?」

「……ええ、そうですわね。それでシリル様、お話とは?」

「ああ。先日、リリアンヌ嬢と一緒にダンジョンに潜ったのですが、そこで思わぬ体験をしてね。是非二人にも伝えなくてはと思ったんです」

「……何があったんです?」

「それが、倒せば幸運値が上がる魔物に偶然、出会ったんですよ」

「え」 

 ええぇぇぇぇっ……な、何ですって――!?



「それは、本当ですの?」

「……信じられないのも無理はないけれど、本当です。私達も驚いたよ」

「そんな魔物がいるなんて……知りませんでした。勉強不足ですみません……」

「いや、これは噂話としても出回っていないと思うから、仕方がない。私も今まで聞いたことがなかったですから」

「完全なる偶然で発見されたってことですか……では、どうやって見つけられたんです?」

「今から話すよ。あれは、ダンジョンの十層に潜っていた時だった……」



 その日もいつも通りダンジョンに潜り、経験値稼ぎをしていた。

 順調に進んで第十層に来たとき、それと出会ったのだという……金眼の魔物と。

「金眼、ですか」

「ああ。薄暗いダンジョン内でその変化は異様に目立った」

 通常、戦闘態勢に入った魔物の目は赤いものだ。それが、倒し続けている内に、瞳の色が金色に変化する個体が出て来るようになったらしい。

 その時は特に深く考えず討伐に集中していたのだが、パーソナルレベルの測定で気づいたんだとか……いつもより、幸運値が上昇していることに……。

 その後の検証で、ダンジョンに入って金眼の魔物を討伐した後だけ上昇がみられたことで、確信を持ったという。

 効率を重視するシリルは、毎回ギルドで依頼報告ついでに測定していたらしく、そのことが功を奏したようだ。



「測定にはお金もかかるし、普通の冒険者ならこんなに頻繁に測らないだろうからね。今まで判明しなかったんじゃな」

「なるほど……確かにそうですね。体力や魔力、身体能力やなどと違って、幸運値なんて曖昧なものは、ステータスを直接確認しない限り、レベルが上がっているかどうかなんて、本人にも分かりませんからね」

「そうだろう?」

 そういった事情なら、今まで発見できなかったのも納得だ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?

藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。 目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。 前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。 前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない! そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...