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第一章 目覚めた記憶
第60話 幸運値
しおりを挟む「では、彼女が来るのを待ちましょうか」
水面下での二人の攻防に気付いているのかいないのか……フレデリックがサラッと会話を進めた。
ちょいちょい迂闊な発言をする彼だが、今回はナイスアシストですわっと、ヴィヴィアンは心の中で拍手喝采した。
固定されていたシリルの冷え冷えした視線が外されたのだ。一旦、追求を諦める気になったらしい。
「いや、寮ぐらしの二人には門限があるでしょう。これはリリアンヌ嬢もご承知の件だから、早速、話に入ることにしよう」
「お気遣い、ありがとうございます。そうしていただけると僕達も助かります。ね、ヴィヴィアン嬢?」
「……ええ、そうですわね。それでシリル様、お話とは?」
「ああ。先日、リリアンヌ嬢と一緒にダンジョンに潜ったのですが、そこで思わぬ体験をしてね。是非二人にも伝えなくてはと思ったんです」
「……何があったんです?」
「それが、倒せば幸運値が上がる魔物に偶然、出会ったんですよ」
「え」
ええぇぇぇぇっ……な、何ですって――!?
「それは、本当ですの?」
「……信じられないのも無理はないけれど、本当です。私達も驚いたよ」
「そんな魔物がいるなんて……知りませんでした。勉強不足ですみません……」
「いや、これは噂話としても出回っていないと思うから、仕方がない。私も今まで聞いたことがなかったですから」
「完全なる偶然で発見されたってことですか……では、どうやって見つけられたんです?」
「今から話すよ。あれは、ダンジョンの十層に潜っていた時だった……」
その日もいつも通りダンジョンに潜り、経験値稼ぎをしていた。
順調に進んで第十層に来たとき、それと出会ったのだという……金眼の魔物と。
「金眼、ですか」
「ああ。薄暗いダンジョン内でその変化は異様に目立った」
通常、戦闘態勢に入った魔物の目は赤いものだ。それが、倒し続けている内に、瞳の色が金色に変化する個体が出て来るようになったらしい。
その時は特に深く考えず討伐に集中していたのだが、パーソナルレベルの測定で気づいたんだとか……いつもより、幸運値が上昇していることに……。
その後の検証で、ダンジョンに入って金眼の魔物を討伐した後だけ上昇がみられたことで、確信を持ったという。
効率を重視するシリルは、毎回ギルドで依頼報告ついでに測定していたらしく、そのことが功を奏したようだ。
「測定にはお金もかかるし、普通の冒険者ならこんなに頻繁に測らないだろうからね。今まで判明しなかったんじゃな」
「なるほど……確かにそうですね。体力や魔力、身体能力やなどと違って、幸運値なんて曖昧なものは、ステータスを直接確認しない限り、レベルが上がっているかどうかなんて、本人にも分かりませんからね」
「そうだろう?」
そういった事情なら、今まで発見できなかったのも納得だ。
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