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第二章 シークレットステージ
第85話 照れ隠し
しおりを挟む「こんなに近くでリリィの声が聞こえるなんて……何だか君に囁かれているようで。て、照れますね!?」
「そ、そっ、そうかしらっ」
耳元に不意打ちで届けられた可愛らしい声に、フレデリックもドキドキしたようだ。
そんな風に聞こえるとは思ってなかったらしく、耳を手で押さえて真っ赤になっている。
彼に負けず劣らず茹で上がっているリリアンヌも答えた声が上ずっていて、予想外に近い距離で響いた声に動揺しているみたいだ。
「……もう、シリル様。教えて置いてくださいよ」
「……い、いや、その。声が聞こえる通信器具だから聞こえないとダメだろう。そこまで動揺するとは想定外だったというか」
「……そう、ですよね、すみません。リリィが可愛すぎてちょっと取り乱してしまったようです」
「う、うん。そうか」
「ちょっ、フレデリック様!? もう、シリル様に変なことおっしゃらないでくださいなっ」
「でも本当の事で……うん、ごめん、リリィ。シリル様もすみません」
「いや、まぁ、うん」
本心だと告げようとしたところで、気恥ずかしさで限界だったリリアンヌに上目遣いでキッと睨まれた。
怒った顔まで可愛い婚約者だが、それを言うと今度こそ機嫌を損ねるかもしれない。
シュンとしながら、ここは素直にシリルに謝ったフレデリックだった。
結局、お互いの声に慣れるまでもう少し練習する事にした二人は、すぐに仲直りしたようだ。
彼らの醸し出す甘い空気に溺れそうになりながらも、ヴィヴィアンは通信の魔道具を選ぶため婚約者に声をかける。
「あの、シリル様。私、まだ決められなくて。先に選んでくださいませ」
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「あ、そう? 分かりました」
婚約者を前にすると気障なセリフを連発しだす友人に、慣れていても落ち着かない様子だったシリル。
ヴィヴィアンに声をかけられて、心なしかホッとしたような表情になる。
それから彼女の顔を見て、思考停止状態になっているのを感じた彼は、少し考えて宝石箱の中から二つ、アクセサリーを選んだ。
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