転生先の説明書を見るとどうやら俺はモブキャラらしい

夢見望

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第30話 危険な状況でも美人教師にドキドキしています

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 突然ダンジョンが揺れたことで、先生達がダンジョンにいる生徒達を避難させていたらしい。
 俺とリーゼ以外の生徒は全員ダンジョンの外に出たかと思っていたが、王子と複数の生徒がいないとフレア先生から聞いた。
『アルファ、このダンジョンに残っている俺達以外の生態反応は?』
『この場にいるマスター達の他には先程もお伝えした5階層のボスの部屋にしか反応はありません』
『じゃあ、ボスの部屋にいるのが王子達であることは確定だな』
 王子達がまだ戻っていないのは、人数が多くて早く移動出来ないから・・・みたいなことを考えたかったが、アルファが調べたのならボスの部屋にいるのは、間違い無く王子達だ。
 ただ、不思議なのはどうして王子達が5階層しかもボスの部屋にいるのか。
『なあ、アルファ、俺より早く3階層に到達していた奴らっていたか?』
『いいえ、マスターが一番に到達していました。その次に到達したのはリーゼです』
 これでもアルファに色々と叩き込まれている。
 3階層で俺以外の気配があれば気づける自信はある。
 そもそも、3階層まで行ったのは魔石を集めている最中に他の生徒達に邪魔されたくなかったからだ。
『途中で他の生徒の戦闘をいくつか見たが、3階層まで来れるような実力を持っている奴はいなかったしな』
『順当にダンジョンを進んで行くのであれば、マスターより早い者はいないでしょう。ただ、このダンジョンには何か仕掛けがあったようです』
『仕掛け?』
『転移トラップです』
『嘘だろう? それに引っかかってボスの部屋に直接移動したってことか?』
『ある場所から大量の魔力を感知しています。恐らく、その場所に転移トラップがありボスの部屋に移動してしまったのではないかと』
『でも、ここは学園が管理している場所だぞ? そんな危ない場所放置しておくか? 普通』
『教師達が知らない場所なのか、もしくは意図して隠しているのか。詳しい話しは、直接聞いた方が宜しいかと』
 近くにはフレア先生がいる。
 詳しいことは、先生に聞けってことか。
「フレア先生、すみません」
「ん? どうした?」
「このダンジョンに、不思議な場所ってあったりしませんか?」
「不思議な場所?」
「ええ~~っと、何となくいつもより魔力が感じられる場所だったり、モンスターが何故か出現しない場所だったり、変な模様が描かれている場所だったりとか」
 王子達がいないと言った傍から、変な質問をする生徒になってしまったが、フレア先生は真剣に考えてくれた。
 「う~ん」と少し考えた後、何か思い当たる場所があったのか教えてくれた。
「確か、2階層に人が数人しか入れない大きさの部屋のような場所があってな。モンスターが出現しないからダンジョン内の安息地かとも思われていたんだが、地面に魔法陣が描かれていてな」
「魔法陣?」
「ああ、魔法専門の教師達を集め調べたんだが、それが一体何の効果がある魔法陣か分からなくてな。トラップの可能性もあり、消してしまおうともしたんだが魔法陣が消えることはなかったんだ。発動するような気配も無かったが、危険な可能性があることも拭いきれなかった為、その場所は立ち入り禁止区域に指定されたんだ。その場所がどうかしたのか?」
 フレア先生の話しを聞き、アルファにも場所の確認を行う。
『フレア先生は2階に部屋があるって言っているけど、アルファが魔力を感じた場所は?』
『私が、感知した場所も2階になります』
『てことは、そこに王子達は入って何故か魔法陣が発動してボスの部屋に行ってしまったと』
『そう考えた方が辻褄は合うかと』
『・・・ちなみに、ボス部屋の奴らはどんな状況? ボス倒して戻って来れそう?』
『そうですね。今は何とか生きていると言った状況でしょうか。少なくともボスを倒すことは不可能かと』
『・・・マジか』
 恐らく、王子がいるのだから他の攻略者達も一緒にいるだろう。
 正直に言うと、王子達が死んでしまっても個人的にはどうでも良いのだが・・・。
 もしもユリスとかいう、ちんちくりんな女への好意が冷めてしまった場合、本来の主人公であるリーゼがどうなるのか分からない。
 リーゼを幸せに出来るのが、馬鹿な王子達だけというのなら、このまま死なせる訳にはいかない。
『アルファ、急げば王子達を助けられる可能性はあるか?』
『馬鹿を助けるほどお人好しではなかったのでは?』
『ああ、その通りだよ。でも、現状リーゼを幸せに出来る可能性があるのは王子を含む攻略者達だ。だったら、リーゼの為に頑張るしかない』
『どうして、リーゼの為なら頑張ろうとするのですか?』
『・・・主人公が不幸になるのは嫌いなんだよ』
『マスター自身が幸せにするという手もありますが』
『残念ながら俺にそんな甲斐性はない』
『自分でそれを言いますか』
『そんなことより、どうやってボスの部屋に行くかだ』
 本気を出せば、ボスの部屋まですぐにたどり着けるだろう。
 ただ、扉が開くかが分からない。
 後は、王子達が掛かったであろう転移トラップを利用するか。
 上手くいけば、王子達がいる場所に直接ボスの部屋の中に行ける可能性がある。
「フレア先生、もしかしたら殿下達は魔法陣がある部屋にいたかもしれませんよ?」
「シュトラウド、どうしてそう思う?」
「先程の先生の話しから、今まで魔法陣は発動されなかったのことですが、先程のダンジョンの揺れから、もしかしたらその魔法陣が発動した可能性もあるんじゃないかと」
「何!? いや、確かに可能性はあるが、あそこは立ち入りを禁止していた筈だ。生徒が誤って入らないように教師も配置していたし」
「でも、殿下達はまだ戻って来ていないんですよね?」
「あ、ああ」
「念の為に確認しておいた方が良いとは思いますが」
「そ、そうだな。確認してこよう。お前達は、早くダンジョンから出るんだ」
「あ、えっと・・・」
 フレア先生と一緒に転移トラップがある場所に行こうと思ったが、よくよく考えたら危険な場所に生徒を一緒に連れて行ったりしないよな。
 それに、リーゼだけはダンジョンの外、安全な場所に居て欲しい。
 そんなことを悩んでいると
『ドォーン!!』
 また、ダンジョンが揺れるほどの爆発音がした。
 先程の揺れよりも大きく、一部の壁は崩れてしまった。
「危ない!!」
「きゃっ!!」
 1階層に続く階段も壁が崩れてしまい入り口が塞がってしまった。
 入り口近くにいたリーゼは、フレア先生に腕を引っ張られた事で、崩落に巻き込まれずに済んだ。
「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます先生」
「何、生徒を守るのは私の仕事だからな」
(えっ? 先生カッコイイ)
 女性である筈のフレア先生のカッコ良さに、そんな場合じゃないのに思わずキュンとしてしまった。
「フレア先生、ミリアーデさん、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
「ああ、お前は大丈夫か?」
「何ともありません。しかし、上に向かう階段が塞がれてしまいました」
「すまない、私が早くお前達を見つけて上に戻していれば」
「いやいや、先生の所為じゃないですって。でも、これからどうしましょうか」
 先生は、目を閉じ少し間を開けてから口を開いた。
「立ち入り禁止の部屋に行こう。シュトラウドが言っていたように殿下達がいたかもしれない」
「でも、私達も一緒に行って良いんですか?」
「ここに生徒だけを置いて行く方が危険だと思ってな。今の状況を、外に居る教師達に念和で伝えた。救助に動いてはくれるだろうが、すぐにここに来ることは出来ないだろう」
(さっき、目を閉じていたのは念和をしていたからか)
「救助が来るまでに殿下達を見つけておく必要がある。お前達には悪いが私と一緒に付いて来て欲しい。何かがあっても近くに居てくれれば守ってやれるからな」
「正直、俺も先生が一緒に居てくれた方が安心出来ますよ」
「わ、私もです! 今も守って貰ったばかりですし」
「お前達は大切な生徒だ。きちんと私が守ってやる」
 そう言うとフレア先生は、俺とリーゼの頭を撫でてくれた。
 リーゼは、安心するような表情をしていた。
 一方俺は、フレア先生の美人なお顔にドキドキし、目線を逸らそうと下を向くと服の上からでも分かる程の山脈がが見えてしまう為、結局先生を見続けるしかなかった。
「よし、それじゃあ行くとしようか」
「はいっ」
「ふぁ、はい」
 リーゼとフレア先生が気合いを入れる中、俺だけ先生の美貌にやられて心がフワフワしてしまった。
『マスター、電気ショックはいかがですか?』
『ああ、2人にバレ無いように頼む』
 アルファから強力な電気ショックを貰い気合いを入れ直した俺は、体が痺れているのがバレ無いように後ろから付いて行った。


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