48 / 48
48 【おまけ番外編】ネーミングセンス
しおりを挟む
私とルークが初夜を迎えて、二ヶ月が経過していた。
先日、ルークに動物を飼いたいとお願いした。本当は騎士団にいる三尾が飼いたいと言ってみたけれど、やはり三尾は難しいと言われたので、犬か猫か鳥を飼いたいと言った。そしたら、今日、なんと知り合いから生まれたばかりの子猫を貰ってきてくれた。
「か、可愛いっ!!」
まだ生まれて十日くらいらしい。静電気に勝てていない真っ白のぱやぱやした毛、やっと開いたばかりと思われる青い目が特徴の、とっても可愛い子猫だった。
私の片手に乗るくらいの小ささで、愛らしくミーミー鳴いていて、夢中になる可愛さ。
「ありがとうございます、ルーク!」
「どういたしまして」
それから私は毎日子猫と過ごす。屋敷を管理する仕事の時間も、一緒に連れていって傍で見守る。
それから五日後。
ソファーにて、ルークの膝の上でルークに抱かれながら、私は私で膝に子猫を乗せている。子猫を撫でて癒されていると、ルークが口を開いた。
「猫の名前は決めたのか?」
「二つ候補を決めて、迷っています」
「二つの候補は?」
「『狼』と『わんちゃん』です」
「……は? 猫だぞ?」
「そうですよ」
まだ毛がぱやぱやしている子猫は、犬のような狼の三尾に色が似ている。そこから連想した。
「『狼』と『わんちゃん』はないだろう……」
「……? 似ていると思うのですが、変でしょうか」
私の前世の実家では、犬と猫を飼っていた。犬は『獅子』で猫は『トラ』という名前だったのだけれど。何かのアニメに出てくる『獅子』と『トラ』に似ていたのだ。
「その名前は、かなりややこしいと思うぞ」
「そうでしょうか……。では、『羊』はどうですか?」
「いったん、動物から離れろ」
駄目ですか。もこもこ感が似ているのに。
他に白くて連想されるものって何だろう。
「『泡』」
「消えそうな名だな」
「『雪』」
「今は夏だぞ」
「『わたあめ』」
「ワタアメ? 何だそれは」
うーん、わたあめ、現世にはないものね。作れそうだけれど。
白い、というところから連想するのは止めた方がいいだろうか。
「……『ミミ』はどうですか?」
「ミミ?」
「ミィミィ、と鳴いて、可愛いのですよ」
「……可愛いのはアリスだろう?」
いきなりキスをしてくるルークに、驚く。唇を離したルークは、再び軽く口づけする。
「アリスは鳴くのも可愛い」
「……」
なんだか、別の意味で言われているような気がして、返答したくない。
「ミミで決まりですね! ミミ、これからよろしくね」
私がミミを撫でて愛でている間、ルークが私とミミを見ながら、将来生まれてくるであろう私たちの子の名前は、私に付けさせないでおこう、と思っていたとは、私は知らない。
番外編おわり
------------
『おまけ番外編』はこちらで最終話です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
先日、ルークに動物を飼いたいとお願いした。本当は騎士団にいる三尾が飼いたいと言ってみたけれど、やはり三尾は難しいと言われたので、犬か猫か鳥を飼いたいと言った。そしたら、今日、なんと知り合いから生まれたばかりの子猫を貰ってきてくれた。
「か、可愛いっ!!」
まだ生まれて十日くらいらしい。静電気に勝てていない真っ白のぱやぱやした毛、やっと開いたばかりと思われる青い目が特徴の、とっても可愛い子猫だった。
私の片手に乗るくらいの小ささで、愛らしくミーミー鳴いていて、夢中になる可愛さ。
「ありがとうございます、ルーク!」
「どういたしまして」
それから私は毎日子猫と過ごす。屋敷を管理する仕事の時間も、一緒に連れていって傍で見守る。
それから五日後。
ソファーにて、ルークの膝の上でルークに抱かれながら、私は私で膝に子猫を乗せている。子猫を撫でて癒されていると、ルークが口を開いた。
「猫の名前は決めたのか?」
「二つ候補を決めて、迷っています」
「二つの候補は?」
「『狼』と『わんちゃん』です」
「……は? 猫だぞ?」
「そうですよ」
まだ毛がぱやぱやしている子猫は、犬のような狼の三尾に色が似ている。そこから連想した。
「『狼』と『わんちゃん』はないだろう……」
「……? 似ていると思うのですが、変でしょうか」
私の前世の実家では、犬と猫を飼っていた。犬は『獅子』で猫は『トラ』という名前だったのだけれど。何かのアニメに出てくる『獅子』と『トラ』に似ていたのだ。
「その名前は、かなりややこしいと思うぞ」
「そうでしょうか……。では、『羊』はどうですか?」
「いったん、動物から離れろ」
駄目ですか。もこもこ感が似ているのに。
他に白くて連想されるものって何だろう。
「『泡』」
「消えそうな名だな」
「『雪』」
「今は夏だぞ」
「『わたあめ』」
「ワタアメ? 何だそれは」
うーん、わたあめ、現世にはないものね。作れそうだけれど。
白い、というところから連想するのは止めた方がいいだろうか。
「……『ミミ』はどうですか?」
「ミミ?」
「ミィミィ、と鳴いて、可愛いのですよ」
「……可愛いのはアリスだろう?」
いきなりキスをしてくるルークに、驚く。唇を離したルークは、再び軽く口づけする。
「アリスは鳴くのも可愛い」
「……」
なんだか、別の意味で言われているような気がして、返答したくない。
「ミミで決まりですね! ミミ、これからよろしくね」
私がミミを撫でて愛でている間、ルークが私とミミを見ながら、将来生まれてくるであろう私たちの子の名前は、私に付けさせないでおこう、と思っていたとは、私は知らない。
番外編おわり
------------
『おまけ番外編』はこちらで最終話です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
1,723
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる