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◇希生さんちへ
「良い日」*優月
しおりを挟む「玲央は、ほんと……」
「ん?」
「殺し文句みたいなのを、さらっと言う」
オレがそう言うと、玲央は、そうか? と首を傾げてから。
「オレより、優月の方が得意だと思うけど。殺し文句」
「……オレ、得意じゃないよ??」
オレがいつ殺し文句言ったことあるんだろうと、玲央を見つめて首を傾げると、玲央は、可笑しそうに笑った。
「言おうとしてない殺し文句だから、効くんだよなぁ」
なんて言って、クスクス笑ってる。
言おうとしていない殺し文句。
……さっき玲央が言ったみたいな? かな。
普通に、オレと一緒ならどこでも楽しいみたいに言われるとなんかもう、嬉しすぎて困っちゃうよね。そういうのもあって、どんどん好きになっちゃうんだよね。……って、それが無くても、好きになってると思うけど。
「あ、そういえば、蒼さん、朝の内に出るとか言ってたよな。何時か聞いた?」
「朝ごはん食べたら出るって言ってたよ。お昼くらいに打合せだから、車で早めに出て、ゆっくり行くって」
「あー。じゃあもう少ししたら、一回戻るか」
「ん、そだね」
頷きながら、池のすぐそばでしゃがむと、餌をくれると思うのか、鯉がめっちゃ集まってくる。
「ねー玲央―」
「ん?」
「オレがもしここに落ちたらさ、鯉に、食べられそうになるのかなあ?」
「………………」
「あれ? 聞いてる??」
鯉を見ながら返事を待っていたけど、返ってこない。くる、と振り返ると、顔を背けて、口を押えてる。
「……玲央、笑ってる?」
「――――……」
ふは、と笑い出して、玲央がなんかムせてる。
「何でそんな笑うの??」
首を傾げると、ああ、ごめん、と玲央が笑いながら言って、オレの肩を抱いた。
「さすがに生きてる人間は食べないだろうって思ったんだけど……答える前に、なんか優月が、吸い付かれて助けて―とか言ってる光景が浮かんで来て……」
クックッと可笑しそうに笑う玲央。
「それに、なんか、優月は本気で食べられそうって思ってるから聞いて来てるんだろうなーと思ったら、可笑しくて」
なんかもう笑いが抑えられないらしい。
「むー……笑いすぎでは」
確かに、本気で食べられそうな気はしてましたが……。そういえば、金魚とかって、死んじゃうと共食いするって聞いたことあるし……。鯉の方がよっぽど強そうだし、とちょっとよぎったのは確かだけど。
「ピラニアじゃないし、食いちぎられたりはしないって」
そんな風に言いながら、でもまだ玲央はずーっと笑ってる。
「なんか優月といると、たまにめちゃくちゃ笑える」
「ふざけて言ったんじゃないよー?」
むむ、と言うと、じっとオレを見てから、また、ぷ、と吹き出す。
「だから……マジで言ってるから面白いんだって。ほんと、可愛い」
はー、笑った。と、玲央がしみじみ言ってる。
「大丈夫、鯉に襲われても、助けてやるから」
ぽんぽん、と肩を叩かれて、でもまた、ふ、と笑う。
「――――あーほんと。……可愛いよな」
そんなにいっぱい笑われて言われても、と思うのだけど。
笑顔の玲央は、ますますキラキラしているので。
無理。勝てない。早々に諦める。
ふ、と微笑んでしまって、見つめ返すと、玲央は、お? とオレを不思議そう。
「笑ってるから怒ってたんじゃねえの?」
「んー……玲央が笑ってるのは、好きだから、いいやっていう結論に……」
考えながらそう言うと、「はは。そっか」と玲央。
なんだかんだ言って。
好きな人の笑顔は、やっぱり最強なんだなと、しみじみ。
「優月、一回帰るか」
「うん」
立ち上がって、玲央と一緒に歩きながら。
今日も楽しい日になりそう、なんて、思った。
◇ ◇ ◇ ◇
(2024/5/19)
デート、いつかどこかで書きますね。
水族館が多かったかなぁ…?
デートで、似たぬいぐるみを買うって定番な気がするんですけど。
私の中に、水族館に、優月に似てるものはいっこしかないような…(笑 あ。もういっこ浮かんだ。二つ。
玲央に似てる水族館の生き物……浮かばない。無理矢理探して、ひとつかなあ。
読者の皆さんは何が浮かぶかなあ…? 浮かんだら教えてください(*´ω`*)
私の思ってるのは (忘れなかったら笑)次回……。
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