【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
819 / 856
◇ライブ準備

「サインボール」*優月

しおりを挟む
 途中、休憩をはさみながら、時間が過ぎて行く。
 あっという間、コンサートって。すごい。

 全部が終わって、一旦出演者が全員引いて、暗転。
 それから、少しして、ステージに全員が戻ってきた。アンコール、なのかな。

 コンサートが始まるまで、全然知らなかったのに、なんだか戻ってきてくれて嬉しい気分。急にファンになっちゃったみたいな。特に玲央の先輩たち。余計に目に入るから、すごくカッコよく見えるし。

 その内、音楽に合わせて、出演者の人たちが歌いながら、客席に向かって、ボールを投げ始めた。

「なあに、あれ」
 聞くと、玲央が「ボールにサインやメッセージが書いてあって、投げてくれるんだけど。ファンサービス、だな」と教えてくれる。

「オレらもやったことあるよね」
 勇紀が言って、玲央が頷いてる。

「そのボールって、貰えるの?」
「受け取ったらな。あれだよ、野球のホームランボールみたいな」
「そうなんだー」

 クスクス笑いながら、玲央がオレを見つめてくる。

 わー、なんかいいな。ちょっと欲しい。

 でも、ステージの人達は、ボールをなるべく遠くの方に届くように、ぽーん、と大きく投げてる。
 近すぎちゃって、逆に投げられないのかも。と思いながら、じー、と見つめていると。玲央の先輩たちが、玲央たちの方を見て、何か言ってる感じがする。

 何か言いながら、笑って、その場でボールに何か書きこんでいる。

「あれ、もしかして……」
「ん?」

 玲央は先輩達のこと、見てなかったみたいで。

「なんか玲央達のこと見ながら、何か書いてたよ?」
「そう?」
「うん」

 首を傾げながら、玲央も先輩達に顔を向けてる。

「投げてくれるかな?」

 わー、オレがわくわくしてきちゃった。
 でもコントロール、大事。

 先輩、頑張って!!
 もうすっかり投げてくれることは確信しつつ、じっとステージを見つめていると。なんか、ステージの上でこっちに投げようとしてた人が、止まった。

 あれ?? 
 投げないの?

 と思っていると、先輩たちの中で、クスクス笑って、一人の人が、オレが投げる、みたいな動作をしてる。

 投げるの上手なのかな? そう思って、めちゃくちゃわくわくしながら、玲央の腕をくいくい引きながら見つめていると。その人が、腕を引いて、投げたと思った次の瞬間には。


「えっ」

 不意にまっすぐ飛んできたボールにびっくりして手を出したら。
 すぽ、と、オレの手の中に入ってきた。

「――え」

 手の中にあるボールに、ただ、びっくり。

 オレが、もらっちゃたけど。なんだか笑ってる玲央と見つめ合う。

 あれれ。ミスったのかな?? と思って、ステージ上を見ると。

 グーサインを出して、笑い合ってる玲央の先輩たち。

 ――んん? オレでいいの??
 首を傾げていると、投げてくれた人が、オレに向けて指差した後、玲央達の方を指差してくる。

 あ、ボール、渡してってことかな。

「あ、はい」

 なんかすごく笑いながらこっちを見てた玲央たちに、はい、とボールを渡す。玲央が、くる、と回して、メッセージを読んで、ふ、と微笑む。

「またステージでな、だって」

 それを玲央に言うと、皆が、ふは、と笑って、先輩達に手を振ってる。向こうも手を振り返してくれてて。


 おお、なんか、すごくいい、なんて、一人こっちで感動していると。

「ほら。あげる」
 玲央がオレにボールを返してくる。

「え? 何で?」
「――優月がめちゃくちゃキラキラした顔で見てるから、お前に向けて投げたんだろ」
「え。そうなの?」
「どう見ても、そんな感じだったよな?」

 玲央が笑いながら、皆に言うと、皆もおかしそうに笑って頷いてる。


「どうせいっこで分けられないし。優月が持ってていいよ」
「えー……いいの?」

 いいよ、と笑う皆。
 ふとステージを見ると、ボールを持ったオレを見て、投げてくれた人が、親指を立てて、ニッと笑った。「ありがとうございます」とぺこ、と頭を下げると、先輩たちは笑って、玲央たちにも手を振ると、また別の方に移動していく。


「わー……なんか」
「ん?」

「……なんか嬉しい」

 言ったら、玲央がオレの頭を撫でて、「あんなキラキラしてたら、絶対オレでも渡してる」なんて言って楽しそうに、玲央が笑った。



 ――ふふ。大事にしよ。






 





◇ ◇ ◇ ◇

(2024/11/3)

αのBL大賞。初日5位スタート。2日目6位。
応援下さる皆さん、ほんとうにありがとうございます( ノД`)
しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

処理中です...