【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇ライブ準備

「そこまでの、人」*優月

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「なんかほんとなら見慣れちゃうくらい近くに居るのにさ。すぐ、見つめちゃうし。やっぱり、玲央って、強烈だと思う」
「強烈、ねぇ……」
「なんかこないだも聞いたけど。自分では見惚れないの? 自分で鏡見た時、作り、完璧だなーとか、見ちゃわない?」
「――――……」

 しばらく真顔で見つめられた後、笑いだした玲央が、オレとは反対の方を向いて、肩を震わせてて。しばらくしてから、オレを見てまだ笑う。

「無いから――嫌だろ、オレが完璧だなーて自分を見てたら」
「ないの?? オレがその顔だったら、絶対見つめる。バランスとか、形とか」

 うーん、と考えていると、玲央が苦笑する。

「それは、優月が絵、描くからだと思うけどな」
「そう?」
「前も言ったよな、オレは、自分より、優月を見てたいって」
「……ふふ」

 玲央が笑いながら言ってくれた言葉に、そういえば、言ってくれた気がする。……オレは永遠に玲央を見ていたいけどなぁ……。

「なんか夏休みに色んなとこ回るの、楽しみだね。玲央の歌とか、カッコいいとこ、今知らない人達も、知るんだーて思うと……」

 思うと。
 ……思うと。とっても嬉しい。けれど。

「優月? ……どした?」
 止まったオレに気づいて、玲央が覗き込んでくる。
 コンビニの手前、二人で足を止める。

「……なんか今オレ、いっぱい想像したんだけど、言ってもいい?」
「何を? いいよ」

 面白そうな顔をしてる玲央を見つめながら。

「……ライブでまわったら玲央がSNSとかですごい有名になっちゃって、めちゃくちゃ注目されて、役者とかモデルとかスカウト来ちゃって、めちゃくちゃ人気者になって、忙しくて会えなくなっちゃって、テレビで玲央を見る日々、とかになっちゃったら、どうしよう……?? いやもちろん、応援はするのだけど、でもどうしよう、って思っちゃった」

 一瞬で想像したことを全部一気に言う間、玲央はずっと黙っていたのだけれど、オレが言い終えた途端、また笑い出した。

「っはは。おもしろ……」

 ……オレは結構真剣にあるかもしれないと思ってるのだけれど。なんだかすごく楽しそうに笑っている。

「まず、優月はオレんちに引っ越すだろ? 会えないなんてないし」
「……忙しいから帰ってこれないとか……」
「ない。オレが無理。優月に会えないとか」
「…………」
「つか、オレ、役者とか無理だし」
「――――そう?」
 そうかなあ。なんでも出来ると思うんだけど。

「そもそもやりたくねーし」
「……そっか」
「優月のオレの評価って高すぎるよな。稔とかにも言われただろ?」

 まあ言われたけど……。
 でも、高すぎるってことはないような。

「つか、優月はオレのことがそんくらい好きってことで受け取るから嬉しいけど。そこまでじゃないって」

 玲央はキラキラした笑顔でそんなふうに言って、オレの背中をぽんぽんと叩く。中入ろ、と促されて、コンビニの自動ドアを玲央が開けて中に入った瞬間。

 めっちゃくちゃキラキラの笑顔で迎えてくれたおばちゃんたちを見て、絶対「そこまで」の人だよなぁ、と一人納得しながらも。
 おばちゃんたちの予想以上の歓迎に、二人には分からないだろうけど、ちょっぴりだけ引いてるみたいな玲央の笑顔が、可愛く見えて、きゅんとする。

 さっきここに来た時はオレ一人だったから、今は余計に、「きたー!」みたいなノリなんだろうなあ。過去一番にハイテンションのおばちゃんたちにも笑ってしまうけど。

 戸惑ってる玲央、可愛いなぁ……ふふ。
 いつも余裕だから。
 こんなのも、とっても可愛い。

 ちょっと一歩引いたところでそんなことを思いながら笑ってると、ちら、と振り返った玲央に視線を流される。助けろよ、みたいな顔をされて、ますますクスクス笑ってしまった。









(2025.3.22)
自分で書いててなんですが、
おばちゃんたちになりたい笑
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