催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

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異なる世界に行ってみよう

ダンジョンの夢を見よう

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 大迷宮──王家の迷宮(自称)。

 昔、ハマっていたゲームで見たことのある迷宮ダンジョンの名前を、兵士は俺たち異世界人に説明している。

 説明によると王家が解放した迷宮だの騎士たちの訓練施設だの言っていたが、正直どうでも良かったな。

 どれだけ言葉を取り繕っても、結局はレベリングスポット兼アイテムドロップエリアであることに、変わりは無いんだからさ。

 俺たちは現在、ダンジョンに現れた魔物を倒した後の小休憩の真っ最中だ。
 最初は魔物に怯えていたクラスメイトも、今ではすっかり戦える戦士だよ。

「……面倒だな」

「ハァ、ハァ、ハァ」

「ヒ……ヒロシ、そんなに荒い息を吐いてもヒロイン路線は無理だと思うぞ」

「──ヒ、ヒデオだよ、イム君。今の僕のステータスじゃあ、まだここの魔物と戦うのが難しいんだよ」

 俺の隣で戦闘をしていたヒ……ヒデキがそう言ってくる。
 他の奴らもこの時間を潰すため、誰かしらと言葉を交わしていた。

「御呪いも掛けてんだから、いちおうはいつも以上のスペックがあるだろう?」

「それは……たしかにね」

 ヒムロに掛けた御呪いは、痛覚遮断と精神状態のコントロールだ。
 キーワードを心で念じると、それらの状態に入れるようにしてある。

 そう、今の彼は痛覚を遮断して精神を少々高揚させている……そうやって火事場の馬鹿力を引き出さないと、彼はかなり不味いと一回目の戦闘で気づいたらしい。

「イム君のスキルは凄いね」

「まだお前にしかやってないスキルなんだからな、これも考慮に入れてくれよ」

「ハハ、分かっているさ。これがあればいろいろと便利そうだからね」

「……あっ、でも、ストレスも来ないから、あの魔王様は無理だと思うぞ」

「……うん、そこだけが少し悩んでいるんだよ。白髪ってのもカッコイイけど、黒髪のままでも闇に映えて良いと思わないかい?」

 ……ハァ。
 俺は面倒臭いヒ……ヒグチとの会話をしながら、小休憩を過ごした。

  ◆   □ 迷宮 帰還 □   ◆

「……フゥ、やっと終わったな」

 時は過ぎ、俺は真夜中に独り呟く。
 場所も迷宮ではなく、王城の中にある用意された俺の個室だ。

 あの後も快進撃を続けていき、みんなでボスへ挑もうということになった……が、そこでイベントが起こった。

「──初日で成り上がりイベントは、早すぎじゃないだろうかな?」

 あの迷宮──『王家の迷宮』は五階層ごとにボスが出現する場所だったのだが、一番最初の階層でそれ・・は起こった……らしい。

 残念ながら細かいことは覚えておらず、大まかなことしか思い出せない。

「……面倒だし、夢の中で考えるか」

 今回のレベリングで入手したスキルに、結構便利なスキルがあった。
 その中に夢を自在に操れるスキルもあったからな、そこで今回の考察でも行おうか。

 ──思いだせずとも、そこでなら記憶の洗い直しができる。

「お休み~…………Zzz」

 そして、俺の意識は瞬時に夢の中へ旅だっていった。

  ◆   □   夢   □   ◆

『キャーーー!!』

 かなり便利なスキルだな。
 俺は目の前で起きている惨劇を見ながら、そんな場違いなことを思う。

 現在の俺はとある光景を──上空から半透明な姿で眺めていた。

 部屋は中心に巨大な円、そこに橋が架かり階段へと移動できる形となっている。
 巨大な円からはみ出たものは、死ぬと思われる程に真っ暗な穴が存在していた。

 先ほどの叫び声は、上層へと続く階段の所で発せられたものだ。
 黒髪の少女が穴に向かって叫ぶ……。

 俺が使ったのは明晰──ならぬ(解晰夢)。
 一度経験した事柄を、夢の中で再解析できるスキルなのだ。

 そして、何を眺めているかというと──

『ヒデ君が、ヒデ君が!!』

『落ち着けアユミ! 彼は……もう、助からないんだ』

『でも! ……でも!!』

 どうやらヒ……ヒグチもクラスにヒロインが居たようだ~。
 俺はこのとき、半分ぐらい意識が飛んでたからな……あんまり分からなかったんだよ。

 ──俺が見ているのは、彼がボスと共に奈落に落ちた後の映像だ。
 よく覚えて無かったし、いろいろと識っておきたかった。

 先ほどから観ていた情報を纏めると、彼は復讐者へのイベントを行えたようだ。

 彼がこの事態を故意で起こしたのかは不明だが、それでも実際にやるヤツはなかなかいないだろうな。

 ……えっ、もっと前?
 記憶はあるけど特に問題があったわけじゃないぞ。

 まあ、セリフだけ抽出しておいたから、これで予測してみてくれ。


『それじゃあみんな、僕たちの力だけで戦えることを証明しようじゃないか!』

『フフ、さすが勇者様だ……む? いつもと様子が違う……不味い、この気配は! ──逃げるんだ! コイツは君たちだけで戦えるような奴じゃない!!』

『いいえ。この先に戦うであろう敵は、こんなものではないと思われます。ならば、僕たちの力がイレギュラーに対応できるだけのものであることを──今ここで示す!』

『ウォオオオ! “聖気纏斬ホーリースラッシュ”!』

『いや、まだだ! お前たち、今すぐこちら側に逃げるんだ!!』

 ――そして、さっきの部分に戻るわけだ。

 ヒ……ヒダリ君は一番を最後に橋を渡って逃げようとしていたのだが、橋をクラスメイトの誰かに落とされて、ボスと共に下へと向かっていった。

 ……ああ、ボスの説明がスッカリ無かったよな。
 兵士はその魔物を見て、『魔りゅうジェルス!』とか言っていたぞ。

 りゅうが竜か龍なのかは分からないが、巨大な体躯と四肢を使って動いている姿を見たし……たぶん龍の方だと思いたいな。

 焦げ茶色の鱗に覆われた体、鋭い牙と爪を具え、真っ黒な瞳でクラスメイトを威圧してた龍なのだが……もっとも見ていたのはユウキの方だったな。

 女神から愛されると、弊害でもあるんだろうか?

 これからもアイツの近くにいると、強敵がアイツを襲うために、周りに被害を及ぼすと考えられる。

 ──ああ、面倒だな。
 夢の中だってのに、どうしてそんな気分になれねばならないんだか。

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