4 / 136
異なる世界に行ってみよう
ダンジョンの夢を見よう
しおりを挟む大迷宮──王家の迷宮(自称)。
昔、ハマっていたゲームで見たことのある迷宮の名前を、兵士は俺たち異世界人に説明している。
説明によると王家が解放した迷宮だの騎士たちの訓練施設だの言っていたが、正直どうでも良かったな。
どれだけ言葉を取り繕っても、結局はレベリングスポット兼アイテムドロップエリアであることに、変わりは無いんだからさ。
俺たちは現在、ダンジョンに現れた魔物を倒した後の小休憩の真っ最中だ。
最初は魔物に怯えていたクラスメイトも、今ではすっかり戦える戦士だよ。
「……面倒だな」
「ハァ、ハァ、ハァ」
「ヒ……ヒロシ、そんなに荒い息を吐いてもヒロイン路線は無理だと思うぞ」
「──ヒ、ヒデオだよ、イム君。今の僕のステータスじゃあ、まだここの魔物と戦うのが難しいんだよ」
俺の隣で戦闘をしていたヒ……ヒデキがそう言ってくる。
他の奴らもこの時間を潰すため、誰かしらと言葉を交わしていた。
「御呪いも掛けてんだから、いちおうはいつも以上のスペックがあるだろう?」
「それは……たしかにね」
ヒムロに掛けた御呪いは、痛覚遮断と精神状態のコントロールだ。
キーワードを心で念じると、それらの状態に入れるようにしてある。
そう、今の彼は痛覚を遮断して精神を少々高揚させている……そうやって火事場の馬鹿力を引き出さないと、彼はかなり不味いと一回目の戦闘で気づいたらしい。
「イム君のスキルは凄いね」
「まだお前にしかやってないスキルなんだからな、これも考慮に入れてくれよ」
「ハハ、分かっているさ。これがあればいろいろと便利そうだからね」
「……あっ、でも、ストレスも来ないから、あの魔王様は無理だと思うぞ」
「……うん、そこだけが少し悩んでいるんだよ。白髪ってのもカッコイイけど、黒髪のままでも闇に映えて良いと思わないかい?」
……ハァ。
俺は面倒臭いヒ……ヒグチとの会話をしながら、小休憩を過ごした。
◆ □ 迷宮 帰還 □ ◆
「……フゥ、やっと終わったな」
時は過ぎ、俺は真夜中に独り呟く。
場所も迷宮ではなく、王城の中にある用意された俺の個室だ。
あの後も快進撃を続けていき、みんなでボスへ挑もうということになった……が、そこでイベントが起こった。
「──初日で成り上がりイベントは、早すぎじゃないだろうかな?」
あの迷宮──『王家の迷宮』は五階層ごとにボスが出現する場所だったのだが、一番最初の階層でそれは起こった……らしい。
残念ながら細かいことは覚えておらず、大まかなことしか思い出せない。
「……面倒だし、夢の中で考えるか」
今回のレベリングで入手したスキルに、結構便利なスキルがあった。
その中に夢を自在に操れるスキルもあったからな、そこで今回の考察でも行おうか。
──思いだせずとも、そこでなら記憶の洗い直しができる。
「お休み~…………Zzz」
そして、俺の意識は瞬時に夢の中へ旅だっていった。
◆ □ 夢 □ ◆
『キャーーー!!』
かなり便利なスキルだな。
俺は目の前で起きている惨劇を見ながら、そんな場違いなことを思う。
現在の俺はとある光景を──上空から半透明な姿で眺めていた。
部屋は中心に巨大な円、そこに橋が架かり階段へと移動できる形となっている。
巨大な円からはみ出たものは、死ぬと思われる程に真っ暗な穴が存在していた。
先ほどの叫び声は、上層へと続く階段の所で発せられたものだ。
黒髪の少女が穴に向かって叫ぶ……。
俺が使ったのは明晰──ならぬ(解晰夢)。
一度経験した事柄を、夢の中で再解析できるスキルなのだ。
そして、何を眺めているかというと──
『ヒデ君が、ヒデ君が!!』
『落ち着けアユミ! 彼は……もう、助からないんだ』
『でも! ……でも!!』
どうやらヒ……ヒグチもクラスにヒロインが居たようだ~。
俺はこのとき、半分ぐらい意識が飛んでたからな……あんまり分からなかったんだよ。
──俺が見ているのは、彼がボスと共に奈落に落ちた後の映像だ。
よく覚えて無かったし、いろいろと識っておきたかった。
先ほどから観ていた情報を纏めると、彼は復讐者へのイベントを行えたようだ。
彼がこの事態を故意で起こしたのかは不明だが、それでも実際にやるヤツはなかなかいないだろうな。
……えっ、もっと前?
記憶はあるけど特に問題があったわけじゃないぞ。
まあ、セリフだけ抽出しておいたから、これで予測してみてくれ。
『それじゃあみんな、僕たちの力だけで戦えることを証明しようじゃないか!』
『フフ、さすが勇者様だ……む? いつもと様子が違う……不味い、この気配は! ──逃げるんだ! コイツは君たちだけで戦えるような奴じゃない!!』
『いいえ。この先に戦うであろう敵は、こんなものではないと思われます。ならば、僕たちの力がイレギュラーに対応できるだけのものであることを──今ここで示す!』
『ウォオオオ! “聖気纏斬”!』
『いや、まだだ! お前たち、今すぐこちら側に逃げるんだ!!』
――そして、さっきの部分に戻るわけだ。
ヒ……ヒダリ君は一番を最後に橋を渡って逃げようとしていたのだが、橋をクラスメイトの誰かに落とされて、ボスと共に下へと向かっていった。
……ああ、ボスの説明がスッカリ無かったよな。
兵士はその魔物を見て、『魔りゅうジェルス!』とか言っていたぞ。
りゅうが竜か龍なのかは分からないが、巨大な体躯と四肢を使って動いている姿を見たし……たぶん龍の方だと思いたいな。
焦げ茶色の鱗に覆われた体、鋭い牙と爪を具え、真っ黒な瞳でクラスメイトを威圧してた龍なのだが……もっとも見ていたのはユウキの方だったな。
女神から愛されると、弊害でもあるんだろうか?
これからもアイツの近くにいると、強敵がアイツを襲うために、周りに被害を及ぼすと考えられる。
──ああ、面倒だな。
夢の中だってのに、どうしてそんな気分になれねばならないんだか。
23
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。
どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!
スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!
天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる