催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

文字の大きさ
110 / 136
大きな戦いに挑もう

休戦しよう

しおりを挟む


「そ、その……助けていただき、誠にありがとうございました!」

「えっ? あ、うん……そうだったな」

 空間魔法で逃げただけの俺と違い、彼女はなんだか凄い技を使っていた。
 そう考えると、功績的な意味でも明らかに俺の方が助けられている。

 防衛システムが発動しなかったとはいえ、救われたのもまた事実。
 少女の能力はまだ分からないが、それをコピーさせてくれる意味でも感謝しないとな。

「俺こそありがとうだ。ああ、自己紹介が遅れたな……俺はイム。どこにでも居る普通の一般人だ」

「い、一般人はここには来れませんよ!?」

「あれ、そうだったか? ……まあ、それとなく迷い込んだってことで」

「えっ? あっ……はい」

 催眠魔法を使って誤魔化すという選択肢もあったが、ここは適当にはぐらかすだけにしておいた。

「わ、わたしはサリスです! あ、あの、イムさんは……どうして、わたしを?」

「助けてもらったお礼だ。あとは……いろいろと聞きたくてな」

「き、訊きたいこと……ですか?」

「ああ、よければだが聞かせてほしいんだ」

 おどおどとした挙動を見せる彼女なら、質問に答えてくれると思った。
 助け助けられのイベントを起こしたばかりなので、少し考え……頷いてくれる。

 ──まあ、いろんなことを尋ねよう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 まずここ、特殊な異空間らしい。
 どれだけ破壊行動をしたとしても、現実にはいっさいの影響を及ばさない……なんとご都合主義な場所なんだろう。

「へー、異世界人が先祖にいるのか?」

「そ、そうなんです。けど、わたしは全然強くないのに選ばれちゃって……」

 選ばれる、とは神の加護を受けることなんだとか。
 そして職業が書き換わり、何かしらの凄まじい職業となるらしい。

「今はまだただの【英雄】ですけど、功績を神様が見てもう一段階上の【英雄】になるんだそうです」

「【英雄】か……凄いんだな」

「で、ですが、あんまり……【英雄】って柄でもないのに、どうしてわたしなんでしょうか……」

「…………さあ?」

 最後には逆に質問されてしまう始末だが、まあだいたい終わったので充分だ。

「わたし、あんまり戦いは好きじゃないんです……けど、神様は自分と組していない相手は倒せって伝えてきますし……【英雄】っていったい、何をすればいいんですか?」

「んー。俺の考えでいいなら、答えられるけど……まあ、そうだな。そもそもサリスはどういう奴が英雄なんだと思う?」

「そ、それは……や、やっぱり、誰かを救える存在……ですか?」

「なら、それが【英雄】という職業だ。人をたくさん殺した奴が英雄なんて言う奴もいるけど、その分誰かを救う奴もいる。サリスにとって【英雄】ってのは誰かを守ることができるんだろう? なら、それを目指そうぜ」

 ちなみに俺にとっての英雄とは、俺の代わりになんでもやってくれる都合のいい奴のことである。

 誰かのために、なんてことは言わないので俺のために頑張ってもらいたいのだ。
 もちろん、自分が英雄になりたいなんて思わない……絶対忙しいだろう、面倒臭い。

「なあ、力を得られたとして、【英雄】は神様の言うことを聞かないとならないのか?」

「え、えっと、神様に背くことをすると、剥奪されるって聞いたことがあります」

「つまり、都合の悪い奴は処分されるってことだな。マジか、神ってどんだけ気儘なんだよ……まあいいか。ちょっと触るぞ」

「へっ? そ、そんな急に……!?」

 催眠魔法を彼女自身ではなく、その神様とやらに繋がるシステムっぽい感覚と接続してみる……なんとなくだが、できた感覚だ。

 そして、それをさらに改竄してみる。
 具体的には、システムを一方的なモノとして、剥奪ができないようにしておく。

「……さすがに進化は無理か」

「あ、あの……その……」

「おっと、悪い悪い。とりあえず、逃げ出しても【英雄】は剥奪されなくなったぞ。自分の理想の英雄が職業としての【英雄】としてやっていることと違うと思ったら……そのときは、いつでも止められるぞ」

「えっ……ええっ!」

 一方的に力を押し付けておいて、剥奪するのも自在なんてのは不公平だろう。
 だからこそ、受け取ったモノをどうするかも彼女自身に委ねるべきだ。

 ……という口実はともかく、その神とやらに催眠魔法が通じるか試しておきたかった。
 とりあえず、間接的に干渉されたシステムなら改竄できるようだな。

「これはお礼だ。起こしてくれて、助けてくれたお礼……ついでに質問に答えてくれたこともな」

「だ、大丈夫なんでしょうか……?」

「…………まあ、たぶん」

「た、たぶんですか!?」

 やったことのない初実験なので、細かい部分はさっぱりなのだ。
 バレても剥奪されないし、もう一段階上とやらも条件を満たせば進化するはずだがな。

「あの、イムさん……これから何をするんですか? わ、わたしはこれから、他の方々から逃げるのですが……も、もしよろしければですが、い、いっしょにいませんか?」

「いっしょにか? うーん……」

「み、皆さん他の人を倒すために戦っていますので、きょ、協力したいのです」

「……どうしようか」

 物凄く面倒臭いのだが、彼女が居れば先ほどの投げ技を使って敵を追い払ってくれるだろう……そう、わざわざ応対せずとも済むわけだな。

「よし、分かった。ひとまず休戦、いっしょに生き残ろうか」

「──ッ! は、はい!」

 さて、設定を変更して“存在分身”は不可視状態で作成するようにしておこうか。
 ついでに【英雄】の解析も行って……いろいろと試してみるとしよう。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

異世界配信中。幼馴染みに捨てられた俺に、神々(視聴者)がコメントしてくるんだが。

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...