オーデンスのΩの物語《I》

風鈴

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《第一部》一途なΩは幼馴染のαに恋をする

クラーブとトーマス(5)

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 クラーブは、左腕を摩りながら
「秘書ねぇ、ハーデン帝国での学友は、ひとり見つけていますが、彼とリュウールの相性が良ければ北を纏めるまではリュウールに就くことが可能です。しかし、最終的には外交官になってもらうつもりなので、オーデンス伯爵家の秘書として長く務める事は出来ないと思います。今回は修行の一環として就かせようと考えています」
 と、答えると、トーマスは、俯きながら
「まぁ、北をまとめる間でもいてくれると助かるなぁ。実は、俺も考えをまとめて思考を繰り返すが、これ以上の事については相手の動きをもう少し見極めてからじゃないと結論が出ない。1番の悩みは、リュウールがどこまで成長するのか?してくれるのか?なんだよな」
「リュウールの成長は、考えなくても良いと思う。彼は、経験不足が1番の問題だと思うので、経験不足の部分はこれから先徐々に埋まって行く。その為にも彼へ情報を集める仕組みと情報を掴む手足になるものが必要ですよ。ジャックの下には2チーム6人はいます」
「情報を取りまとめるのはフェズにさせるが、実際情報を吸い上げる要はカーツにさせる。カーツの特技は、人物の顔認証が出来る勿論変装や顔を変えても大丈夫で、加えてその人物の名前、性別、親の名前なども覚えている。そして、初めて行った所もほぼ1日で覚えて迷わず歩く事ができる。そして、あいつは明るく懐が深い。ボブの所で、情報以外の尋問、制裁、調書等のリュウールの苦手とする影の部分を担当させる為の研修に入った。カール元帥は今回リュウールらに付ける影の編成と研修をお願いしている。カーツとフェズの父親は影の長に当たる人だから、カーツやフェズが頭をすることを馬鹿にする様な形にはならない編成を作っている。リュウールへの投入はハーデン帝国入学には間に合う予定だ」
「了解です。あいつらは、王都の情報貴族から庶民迄の独自の情報網を構築しています。多分、彼らがいなくても集めて蓄積はしていく仕組みもあると睨んでいます」
「まぁ、そうじゃなくては、高い金をかけて学園に入れた続けたカール元帥の意図が霧散する。そして、今回、ロンが近衛騎士団を退団する予定だ、本来ならもう少し近衛騎士団に残って欲しいが、ロンもオーデンス伯爵家の筆頭騎士の末裔として入城する。そして、辺境拍の任命の後に、フォンテン男爵の継承式をその場でリュウール・オーデンス伯爵が取り仕切ることになる。
 今までロンとボブは俺の下で情報を集め分析までをさせてきたが、ロンをフォンテン男爵と格上げするにあたり、俺のいない間の王都の情報、分析、戦略をボブに一任することになった。カール元帥が復帰するからボブもこき使われながらスキルを身に着けていく。フェズとカーツの事はリュウールにカール元帥より伝える予定だが、アーツ伯爵が辺境伯として行く事で、事務系な引き続きをする為に、リュウールへの研修は後1週間終える。オーデンス入城に行く道中の時間を使って再開するらしい」
「あぁ、それぞれの場所に散って行くのですね。これからのアスランを考えると必要不可欠の事だと思います。俺もうかうかしているとリュウールに先を越される可能性が出てくる」
「よく言う、お前が言うと嘘にしか聞こえないぞ。大人たちは内側をしっかり纏めてもらう。セバスチャン殿下もカール元帥の秘書として入る。セバスチャン殿下の王太子の就任式は来年の春に行う。その時にはミッシェル・バーム君の王太子妃候補就任と王太子妃としてのお妃教育の実施を発表する。実際のお妃教育はリュウールの王都出発の後には王宮で始まる予定だ。ギル・ブロック侯爵の事はグランデール侯爵とカール元帥でにらみを利かす。ただ、キリアス公国の動きがおかしい、いくらリュウールを嫁に迎える事に執着することの本来の意味を掴めそうで掴めない。あの国でなにが起きているのかなかなか見えないことがこれからのアスラン王国にとってマイナスにならない様な手を打つことになる」
「そうですね、大伯父の報告は定期的に来ていますが、この頃特に検閲されているような文章なので、父も心配しています。大伯父の傍には従兄がいるのでこの人は腕の立つ人でロンさん並みの腕前です。だからと言ってほっとけない」
「お前はわかっているだろう。だから、リュウールを鍛えているんだ。カール元帥もキャサリンさんも必死だ。ある意味競争だ。発情期だけでは済まなくなりそうだ、世の中の流れをしっかりと確実に掴める者が勝利すると思う」
「わかっています」
 今度はクラーブが俯きながら答える。
「それと、暗部の動きだが少し動きが見える」
 トーマスが、思い出したように言うと
「えぇ、何もないとは思えない状況ですね」
「動くなら、大聖堂前の辺りかなぁ」
「多分、あそこの部分の動きが一番緩慢なので、俺が狙うならそそこです」
「俺と同じか」
 トーマスが、呟いた。
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