オーデンスのΩの物語《I》

風鈴

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《第二部》一途なΩの新しい旅立ち

クラーブのオーク潜入(3)

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 次の日夕方、男は昨夜の酒場に入ってビールを飲んで、カウンターでバーテンダーと昨日のポーカーの事を話していた。
「今日も又行くのかい?」
「まぁね、昨日の勝ちがあるからイーブンまでは掛けられる。」
「それがあそこの罠だよ」
「あそこってオーナーっているの?」
「もちろんいるよ」
「賭場をウロウロしている痩せた男?」
「違う、デブっていて話しが丁寧な感じの」
「あぁ、俺に声かけて来た男か」
「オーナーから声かけられた?」
「そりゃダメだ、もう目をつけられたなあそこはオーナーが1番強い、カモもオーナーが決める」
「へぇー、フーンそうなんだ、俺は違うってここで言えれば良いんだけど、そんな風に言われれば燃えて来る」
「そして燃えて火ダルマになって灰になった奴を何人も知っているよ」
 バーテンは、笑いながら言った。男も笑いながら答える。
「なるほどね、肝に命じておくよ。明日の朝にはここを出て行くから、じゃね」
「五体満足でこの街を出て行ける事を祈っててやるよ」
 笑い声が聞こえてくる。男は酒場を後にし賭場に向かった。
『本当に何も無い街だ、街道の要所からも外れている。バザールも今まで開催していない。対象にも上がらない。貧しい村人が物欲しそうに見ているだけだったから、結構安く売ったようだ。特に子供達に甘いものを配って盛り上げた。あの教会自体も街から離れた山の中にあって裕福な信者が通っている様にも思えない。そのくせ牧師はブクブクと太っていた。それだけでも牧師には裏があるのは決定的だ。後はブクブクの牧師が賭場のオーナーだと言う証拠だな、俺がわかっているのは、教会の沈香の匂い、さぁ仕上げだ上手くいく、上手くやれる』男に化けたクラーブは自身を鼓舞しながら賭場に入ると、子供が絡まれていた。
「お前は何者だ」
「俺はチノだ、院長様に頼まれた手紙を届けに来ただけだ、ゴンさんに渡すように頼まれた」
 男は2人の中に入って、
「子供の使いだろう、俺がゴンさんに渡してやる、渡せば良いよ」
「本当にありがとう」
 子供は男に手紙を渡すと直ぐ走り去ってしまった。
「ゴンさんって?」
 男が言うとさっきまで争ってた男が手紙を乱暴に持っていった。
 男はそれから何ゲームかをして、昨日の勝ちが無くなりそうになって田舎者と目が合う、
「さぁ、これで終わりにする」男が宣言してゲームが始まった。
 第三ターンまで残ってるのは田舎者と男ともう1人、
「コール」田舎者
「レイズ」もう1人
「レイズ」男
 最後のターン
「オールイン」田舎者
「オールイン」もう1人
「フォールド」男
 ショウダウン、
 もう1人と田舎者が見せ合う
 もう1人、フォーカード
 田舎者ストレートフラッシュ
 田舎者の大儲け、
 その時急に男達が入って来た。
「バル、やっと見つけた、さぁ借金かえせ」
 大声で田舎者に言うと、さっきまで嬉しいそうにしていた田舎者が一目散に出て行こうとテーブルをひっくり返す。賭場は騒然となる。
 田舎者は男達に捕まらない様必死になって逃げ回るが最後の入り口で背の高い男に捕まった。
「こいつは詐欺師です。田舎の賭場を荒らし回っている。こいつの被害を受けた王都の賭場より依頼されて捕まえに来ました。連れて行け」
「何んだ、そいつはここに借金がある、簡単には連れて行けないぞ」
「いくらの借金ですか?取り立てたい場合は王都のゼルダの賭場に連絡ください。お騒がせしました」
 騒然となった賭場には隻眼の男の姿も無くなっていた。
「これはどうした」
小太りの男が、散らかった賭博場に入って来た。
「今ゼルダの賭場の取り立て屋がきて田舎者を詐欺師だと言って連れて行きました」
「それが一番の詐欺なのでは?」
 小太りの男が、冷静になって子分たちに怒鳴る。
「追いかけて、早く取り返せ」
 子分や用心棒達が追いかけて行く。
「先程、キャサリン院長と言う方からの手紙が届きました」
 ゴンはハーツ神父への手紙を小太りの男に渡す、手紙を受け取って中身を読んで大声を出した。
「何だって、9月14日に慰霊祭を行うって、その後で教会を取り壊して新しくする。これはゆっくりできない急いでオーデンスに行かないと大変な事になる」
 急に小太りの男が騒ぎ出した。
「あいつらを呼び戻せ、今からオーデンスに行く、俺は先に出るがお前たちは後からついて来い。わかったな」
 部下達は、用心棒達を呼び戻しに出て行く。小太りの男は急いで教会に戻ってオーデンスに行く支度を始めた。
 隻眼の男のクラーブは、全てを物影から見ていた。
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