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《第二部》一途なΩの新しい旅立ち
カーツとフェズ(2)
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フェズは、王宮から戻って自室で寛いでいた。急に、父親が部屋に入ってきて話し始めた。
「フェズ、ヘインズさんはどうだ」
「あの人、おかしくない?」
フェズは、1週間前から王宮の近衛騎士団の事務所で働いている。そこで、近衛騎士団副官のヘインズの下で、王宮内を走らされていた。
「書類を見る速度早い、間違い見つけるのも早くて的確ですごい。スペルの一文字を見つけたりするから俺は不備の書類を持って提出者に持って行くだけだけど、間違い探しする人が可哀想になる」
「そうだろうな」
「何回も返されてキレた人が呆気なく言い負かされて撃沈しているのも俺でも何回か見た」
フェズの父親も思い出しながら言う。
「仕事が早いから、一般の書類は午前中に終わる、その後は、トーマス副団長の部屋に置いてある書類を処理してサインして行くそれを王宮の中の然るべき所に持って行くのが俺の仕事だけど、トーマス副団長が見なくても良いの?」
「ヘインズさんはルーカス団長とトーマス副団長の副官だから2人がいないと彼がサインする。その2人も半年はいない、その間はカール元帥が指揮を取るし、元帥付きの秘書が付く、それまではヘインズは忙しいだからお前が就いたんだろう」
「それはわかるけど、王宮内をウロウロしていると結構色々な噂話が聞ける。中には本当か?嘘だろう?って言うぐらいなものもあってびっくりする。俺なんか書類運ぶ下僕扱いだからみんな平気で話す。これってどうなのかと思う」
「ふーん、噂話もバカにはできん、お前は誰に使えるのかを考えてお前が噂にならぬ様に聞き役に回れば良い」
「それはわかっているよ。情報は点でそれがいつか繋がりを持つ事がある。それを考えて情報を見据えるんだよな。カール元帥が昔王都の情報を集めさせた時によく言っていた」
「お前たちは、俺よりは学を積んできた。情報を得て策を練って次に繋いでいく。その次の存在が、リュウール様だ。『オーデンスのΩ』として立つにはまだ半人前と思う。非難する人間もいるだろう。狙われているのは生まれて以来ずっとだ。それでも彼の方は、怯まず立つ。彼の方のお母様、お祖母様方を見たことはあるが、芯のあるオーラが立っていた。下の者に話される時は、その視線まで身を下ろして話されるほど優しく強い方々だった」
父親は、昔を思い出して話していた。
「リュウールもそんな所がある。話を聞く時は相手をしっかり見る。他の貴族たちはあまりそうしないが、彼は俺たちと貴族を分け隔てしない」
フェズは、リュウールのことをそう父親に告げた。
父親は、思い出した様に話を変えた。
「そう言えばカーツが飛び級どうにかなったそうだ」
「良かった」
「それとカール元帥から伝言で、お前もカーツも兵舎に入る」
「えっ、俺もあいつも兵舎に家から通うようには」
「何言ってんだ、母ちゃんもお前がいない練習だ。カール元帥の指示だぞ受けないとダメだ。
明日の7時に先ずはロンの所でカーツと体術と剣術の訓練が始まるからほらこれお前の荷物だ、そのままリュウール様と合流するかもしれないと思っておけ、わかったな」
「わかった、父ちゃん、母ちゃんの身体気をつけてやって欲しい」
「わかっているよ、早く寝ろ明日は早いぞ、カーツ所が迎えにくる」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
父親は、フェズの部屋を出て行った。
居間に戻ると母親が、静かに泣いていた。
「おい、泣くな」
「だって、今回は難しいでしょ」
「うーん、そうなるな」
「キリアスの最前線の向こうへの行き来になりそうだ」
「だって、ルイが王宮の奥の侍女の仕事をしようと話しを持って来た。それって、父さんの時と同じだわ、父さんが亡くなる前に母親に住み込みの侍女の仕事の斡旋があった。お願いだから、未亡人にはなりたくないから戻ってきてね」
「わかっている。俺もあいつもお前達を悲しませることはしないからお前も王宮の奥でしっかり仕事して待っていて欲しい」
「うん」
「フェズは、もう俺らの手から離れた、俺らよりも上に上がる為に仕事をする。リュウール様と同じ年で生まれた運命だ、だけどカーツが一緒だから大変だろうが上手くいく。リュウール様は本当に慈悲深い、大丈夫だ」
フェズの両親は抱きしめ合った。そして、フェズの家の火は消えた。
「フェズ、ヘインズさんはどうだ」
「あの人、おかしくない?」
フェズは、1週間前から王宮の近衛騎士団の事務所で働いている。そこで、近衛騎士団副官のヘインズの下で、王宮内を走らされていた。
「書類を見る速度早い、間違い見つけるのも早くて的確ですごい。スペルの一文字を見つけたりするから俺は不備の書類を持って提出者に持って行くだけだけど、間違い探しする人が可哀想になる」
「そうだろうな」
「何回も返されてキレた人が呆気なく言い負かされて撃沈しているのも俺でも何回か見た」
フェズの父親も思い出しながら言う。
「仕事が早いから、一般の書類は午前中に終わる、その後は、トーマス副団長の部屋に置いてある書類を処理してサインして行くそれを王宮の中の然るべき所に持って行くのが俺の仕事だけど、トーマス副団長が見なくても良いの?」
「ヘインズさんはルーカス団長とトーマス副団長の副官だから2人がいないと彼がサインする。その2人も半年はいない、その間はカール元帥が指揮を取るし、元帥付きの秘書が付く、それまではヘインズは忙しいだからお前が就いたんだろう」
「それはわかるけど、王宮内をウロウロしていると結構色々な噂話が聞ける。中には本当か?嘘だろう?って言うぐらいなものもあってびっくりする。俺なんか書類運ぶ下僕扱いだからみんな平気で話す。これってどうなのかと思う」
「ふーん、噂話もバカにはできん、お前は誰に使えるのかを考えてお前が噂にならぬ様に聞き役に回れば良い」
「それはわかっているよ。情報は点でそれがいつか繋がりを持つ事がある。それを考えて情報を見据えるんだよな。カール元帥が昔王都の情報を集めさせた時によく言っていた」
「お前たちは、俺よりは学を積んできた。情報を得て策を練って次に繋いでいく。その次の存在が、リュウール様だ。『オーデンスのΩ』として立つにはまだ半人前と思う。非難する人間もいるだろう。狙われているのは生まれて以来ずっとだ。それでも彼の方は、怯まず立つ。彼の方のお母様、お祖母様方を見たことはあるが、芯のあるオーラが立っていた。下の者に話される時は、その視線まで身を下ろして話されるほど優しく強い方々だった」
父親は、昔を思い出して話していた。
「リュウールもそんな所がある。話を聞く時は相手をしっかり見る。他の貴族たちはあまりそうしないが、彼は俺たちと貴族を分け隔てしない」
フェズは、リュウールのことをそう父親に告げた。
父親は、思い出した様に話を変えた。
「そう言えばカーツが飛び級どうにかなったそうだ」
「良かった」
「それとカール元帥から伝言で、お前もカーツも兵舎に入る」
「えっ、俺もあいつも兵舎に家から通うようには」
「何言ってんだ、母ちゃんもお前がいない練習だ。カール元帥の指示だぞ受けないとダメだ。
明日の7時に先ずはロンの所でカーツと体術と剣術の訓練が始まるからほらこれお前の荷物だ、そのままリュウール様と合流するかもしれないと思っておけ、わかったな」
「わかった、父ちゃん、母ちゃんの身体気をつけてやって欲しい」
「わかっているよ、早く寝ろ明日は早いぞ、カーツ所が迎えにくる」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
父親は、フェズの部屋を出て行った。
居間に戻ると母親が、静かに泣いていた。
「おい、泣くな」
「だって、今回は難しいでしょ」
「うーん、そうなるな」
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「わかっている。俺もあいつもお前達を悲しませることはしないからお前も王宮の奥でしっかり仕事して待っていて欲しい」
「うん」
「フェズは、もう俺らの手から離れた、俺らよりも上に上がる為に仕事をする。リュウール様と同じ年で生まれた運命だ、だけどカーツが一緒だから大変だろうが上手くいく。リュウール様は本当に慈悲深い、大丈夫だ」
フェズの両親は抱きしめ合った。そして、フェズの家の火は消えた。
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