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番外編
鎌倉挙式
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水風船のあと、秋の日のお話。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ニットカーディガンが肌に馴染むようになった、十月最後の日曜日。
「支度できたー? 七緒さん」
壮介さんに階下から声を掛けられた。寝室に使っている和室を見回して確認する。
「はーい! オッケーです、大丈夫~」
「玄関に置いてある荷物で全部だよね? 先に車に積んじゃうよ~」
「あ、うん! ありがとう」
二階の戸締りは全部よし。
階段を下り、一階を見回して指差し確認をしていく。戸締りよし、火の元よし。お泊りになるから雨戸もしっかり閉めておいた。
ぱたぱたとスリッパの音をさせて玄関へ。今日は歩きやすいヒールの低い靴を履く。外へ出ると早朝の空気がひんやりと頬に触れた。ドアの鍵を締めて、彼のいる車に乗り込む。
「隣近所にも声掛けておいたし、もう何もないね?」
「うん、お願いします」
「じゃあ出発。いざ鎌倉、だね」
「はい……!」
道路際の銀杏の葉が、ほんのりと黄色く色づき始めていた。
横浜方面へ向かう高速に乗る。隣でハンドルを握る壮介さんが嬉しそうに言った。
「いい天気になりそうだね~。道も空いてるし、これなら時間に余裕で着くな」
彼の運転している横顔が好き、なんて言ったら驚かれるかな。
「本当、いいお天気。台風が逸れてくれて良かった」
「ま、僕の普段の行いがいいからね」
「……」
「何でそこで黙るの、七緒さん」
壮介さんは左手で眼鏡の真ん中を押さえ、不満げな声を出した。
「えっとー、その通りだなって」
「棒読みになってるじゃない。……わかった、言い直す。七緒さんの普段の行いがいいからだよねー」
「壮介さんも棒読みになってるけど」
「バレた?」
「もう……!」
二人で吹き出し、クスクスと笑った。車中に流れる音楽が心地いい。
すっかり仲良しの私たちは、心が通じ合ってからというもの、喧嘩らしい喧嘩をしたことがなかった。気持ちのすれ違いを嫌という程味わったあの数か月を、お互いもう思い出したくないからなんだろう。
そんな私たちは今日、思い出の地、鎌倉で式を挙げる。予約を入れた春からずっと、壮介さんも私もこの日を待ち望んでいた。
「お義父さんとお義母さんは、何時くらいに到着予定?」
「それがね、はしゃいじゃって昨日からホテルに泊まってるらしいの。近いのに」
今朝早くに母からメールがあった。緊張してる~? なんて相変わらずのノリだったけど、お母さんの言葉に、今日は何だかとても安心できた。
「そうだったんだ。二人で泊まってるの?」
「……弟夫婦もなの」
「ははっ、それじゃあ帆夏ちゃんもか」
「うん。帆夏はね、自分もドレスが着られるって、すごい喜びようなんだって」
姪の帆夏は、彼女のお母さんである時恵ちゃんと、お店を何軒も回って挙式用のワンピースと披露宴用のドレスを決めたらしい。可愛いだろうな、きっと。
「楽しみだね。うちの親はなるべく早く出るって言ってたな」
「披露宴が終わったら、そのままプリンスに泊まってくださるのよね?」
「ああ、そのつもりでいるよ。手配した通り」
お義父さんとお義母さんは、明日もお店を休むことにしたので、せっかくだからとホテルに宿泊してもらうことにしていた。いつも忙しい二人だから、たまにはのんびりしてくださるといいな。
ホテルの駐車場へ車を停め、江ノ電で鎌倉駅まで向かった。
到着してすぐに、申し込みをしておいたサロンでヘアメイクと白無垢の着付けをしてもらう。花嫁衣裳なんて一生に一度しか体験することはないんだからと、着付けをしてくれる島田さんという方の動作に思わず見入ってしまった。
「もしや、普段から着物を着ていらっしゃいます?」
膝を付いて私を見上げた島田さんが、感じの良い笑顔で私に訊ねた。
「え、ええ。日は浅いんですが、自分でたまに着ています」
「やっぱり。着せやすく動いてくださるから、すぐわかるんですよ。古田さんは、なで肩で肌の色が白くていらっしゃるから、普段のお着物も、とてもよくお似合いでしょうね」
「ありがとう、ございます……」
突然褒められたことに照れてしまい、声が上ずってしまった。
「花嫁衣装もよくお似合いで。早く御新郎様に御覧いただきたいわ」
島田さんは花嫁が身に着ける小物を取り出しながら、ふふと笑った。
壮介さん、喜んでくれるかな。
仕度を終えて用意された椅子に座っていると、部屋に壮介さんが現れた。
「……七緒さん」
私の名を呼んだ、紋付羽織袴姿の彼に見惚れてしまう。一年前、和服姿の彼を初めて見た時と同じに胸がきゅんとして目が離せない。やっぱり壮介さんは和服が似合うよ。
「壮介さん、とても素敵。すごく似合ってます」
「あ、ああ」
私から視線を逸らした壮介さんは、袂をごそごそしたり、落ち着かない様子で手にしていた白扇で袴を叩いたりしてる内に、とうとう後ろを向いてしまった。……どうして?
「私……変、かな」
似合っていなかったんだろうか、と考えて悲しくなる。洋装の方が良かったのかな。人生で最高のおめかしの日だというのに、捨てた筈のコンプレックスが胸に甦ってしまった。俯いて膝に置いた末広を見つめていると、壮介さんが突然すーはーと大きな深呼吸をした。
驚いて顔を上げる。
「壮介さん?」
「いや、予想以上に」
「?」
「七緒さんが綺麗過ぎて、感動してる。言葉が出ないって言うか……眩しくてまともに見れない。急に緊張してきたよ」
聞き間違いじゃ、ないよね?
ゆっくりとこちらを振り向いた壮介さんが目の前に来て、私に手を差し伸べた。彼の手に私の手を載せる。
「七緒さんを見つけた時以上に気持ちが高揚してる。君の夫に相応しいと認めてもらえるように、今日はしっかりしないとね」
壮介さんは私の手をそっと握ると優しく微笑んだ。
「白無垢が、本当によく似合ってる。世界一綺麗だ。僕の自慢の奥さんだよ、七緒さんは」
「あ、ありがとう……」
それだけ言うのが精一杯で、胸に込み上げるものを抑えることが出来なかった。視界が揺らぎ、彼の姿がぼやけて見える。
「七緒さん、まだ泣いたら駄目でしょ」
「……うん」
「お義母さんたちが控室で待ってるんだからさ。涙はその時にとっておきなよ。ね?」
「そういう優しいこと言わないで。余計、泣けて来ちゃう……」
「ごめん、ごめん」
笑った壮介さんは、私の手を大切な壊れ物を扱うように、もう一度そっと握った。
介添えさんに導かれて、壮介さんと共に親族が待つ控室に入った。椅子に座った途端、弟の隆明と時恵ちゃんに連れられた帆夏が傍に寄って来た。
「ななちゃん!」
「帆夏。来てくれてありがとうね」
「ななちゃん……しろい」
ぽかんと口をあけて私を見る帆夏の言葉に、思わず笑ってしまった。周りの大人たちも釣られて笑う。もう、可愛いんだから……!
「お義姉さん、おめでとうございます」
「ありがとう時恵ちゃん。隆明も、忙しいのにありがとね」
「いえいえ。和装もいいもんだなぁ。馬子にも衣装じゃん、七緒」
「でしょ?」
弟家族と入れ替わりに、私の父と母が傍に来た。
「七緒、綺麗よ。うん……綺麗」
意外なことにお母さんが最初に泣き出してしまった。お母さんの隣にいるお父さんは、何も言わずにただ口を引き結んでいる。もしかして泣くのを堪えてる……?
「お母さん、お父さ……ん」
そう思った途端、ぼろっと涙が零れてしまった。家を出て一年近く経つのに、今さらどうしてこんなに泣けるんだろう。
介添えさんが差し出す前に、お母さんが綺麗なハンカチを私の手に載せた。素直に受け取って、そのハンカチでそっと涙を押さえた。
「もう何も心配はしてないわよ。これからも今まで通り、壮介さんについていって、しっかりやんなさいね」
「ありがとうお母さん。お父さんも」
お父さんは黙って何度も頷くだけだった。その瞳が潤んでいることに、気付かない振りをしているのが精一杯。
お父さんとお母さんは壮介さんと話を始めた。
「七緒ちゃん、本当に綺麗よ」
「壮介には勿体ないな」
壮介さんのお義母さん、お義父さんが、私の傍に来てくれた。
「……ありがとうございます」
優しい笑みに、瞳がまた涙で潤んでしまう。
壮介さんと暮らしてみて、一緒の家にいることや、家族として生きていくことの大切さが少しずつわかってきたように思う。
私たち家族の為に一生懸命働いていた父と、私たちの為に家を守っていてくれた母。感謝してもしきれない。そして壮介さんを育ててくれた両親にも、同じように感謝の気持ちでいっぱいだった。
写真撮影を済ませ、親族は歩いて鶴岡八幡宮へ。壮介さんと私は、待機していた人力車に乗って少し遠回りをしながら八幡宮へ向かった。
若宮大路を進んで行くのだけれど、とにかく周りの人たちの注目がすごい……! 今日は日曜日だから観光客が多いんだよね。スマホで写真を撮っている人がたくさんいる。外国人観光客の集団もこちらを指差しながら大きな声で何かを言っているのが聴こえた。
おめでとうと声を掛けられる度、そちらへ顔を向けて小さく頭を下げた。恥ずかしさと緊張で顔はひきつるし、体が固まってしまう。
大丈夫だよ、と壮介さんが温かな手で、私の震える手を握ってくれた。
八幡宮へ到着し、太鼓橋へ向かうと既に親族が待っていた。集合写真の撮影を済ませ、舞殿へと出発する。雅楽を奏でる神社の人たちの後を並んでついていくのだ。
八幡宮の境内は若宮大路を通って来た時よりも人が多かった。お天気が良いから余計なんだろう。
恥ずかしかったけれど……境内を静々と歩く内に、不思議と気持ちが落ち着いてきた。爽やかな秋風の匂いと雅な音楽に包まれて、花嫁としての気持ちが段々と高まっていく。ちらりと隣の壮介さんに目をやった。彼はとても堂々としていて、和服を着た時の所作が自然で、本当に素敵。気持ちが通じたのか、彼も私の方を向いて、目が合うと優しく微笑んでくれた。私もまた微笑みを返す。
たくさんの人に見守られながらの、くすぐったいような恥ずかしいような……そんな一瞬のやりとりだった。
近しい親族のみで行う、舞殿での挙式。中の様子は外からしっかり見える造りになっており、私たちのことを観光客が見守っていた。
全員着席をし、雅楽演奏と共に式が始まった。お祓いを受け、祝詞を聞く。凛とした空気の中、誓いの盃を交わしながら隣にいる壮介さんを思った。
ちょうど一年前。古都鎌倉で壮介さんに出逢った。
浄妙寺の和室で彼の和服姿に心を奪われ、優しい声と表情に瞬く間に惹かれてしまった。私に向けてくれた彼の思いなど何も知らずに、誘われるがまま高徳院から一緒に散策をした。江ノ電に乗って窓の外に広がる海を見つめ、江の島の鳥居を抜けて参道を上がり、また同じ海を見つめた。「古都に咲く花」という名のネックレスを受け取り、食事に誘われた。
初めての一夜を過ごして、逃げ出して……お見合いで再会して、もみじの紅い葉が散る中、契約結婚を交わした。それから数か月後。ようやく気持ちが通じ合ってから、春にここへ参拝に来た。
お互いの心をわかり合えたことが嬉しくて幸せで……
出逢う前から、ううん、出逢ってからも、そして気持ちが通じ合わない時だって本当はいつも……私のことを思っていてくれた人。真面目に働いて、忙しい中でも私をたくさん愛してくれる、この人と結婚して本当に良かった。傍にいたいと思ったのは間違いではなかった。
生涯、彼の隣にいたい。何があっても一緒に乗り越えていきたい。そして、彼を幸せにしたい。神聖な儀式の中……そう、心に誓った。
挙式を済ませて舞殿を出ると、外で友人たちが待っていた。家に遊びに来てくれた美月と千里と若菜だ。ここのところは頻繁に彼女たちと連絡を取り合い、外でランチをすることもあった。
「七緒……! おめでとう!」
「綺麗よ、七緒」
ハンカチで涙を押さえ、お祝いの言葉を掛けてくれる。そんな彼女たちの様子に、私も再び涙が零れた。辺りの木々は紅葉が始まり、美しく染まった葉がひらりと、私たちに舞い落ちて来る。
「ありがとう」
女同士って、結婚をすると遠くへ行ってしまったり、子どもを産んで忙しくなったりして中々会えなくなる。でも、何かをきっかけにこうして顔を合わせれば、また昔に戻って声を掛けあうことができる関係って、とてもいい。
「七緒を、よろしくお願いします」
美月が壮介さんに頭を下げると、他の友人たちも同じように頭を下げた。
「ええ、任せてください」
彼女たちの嬉しそうな笑顔と壮介さんの力強い言葉が、私の中にしっかりと刻み込まれた。
私の友人と入れ替わりに、壮介さんの学生時代のお友達とお話も出来た。友人と楽しそうに冗談を言い合う壮介さんの姿が新鮮。
親族と友人は、着付けや着替えをしたサロンに一旦戻ってもらい、披露宴を挙げるプリンスホテルへマイクロバスへ移動、となっていた。
披露宴には私の元同僚や、みもと屋の店員さんたち、壮介さんがお世話になっているお仕事関係の人や、あの風香泉庵の相馬さんもいらっしゃるという。椅子カフェ堂のくるみさんたちも出席してくれるそうで、とても楽しみだ。
私と壮介さんは、皆とは違う車が迎えに来ている場所まで行く為に、再び人力車へと乗り込んだ。元気の良い若い俥夫さんが、挨拶と共にゆっくりと人力車を引き始めた。
八幡宮から、行きと同じに若宮大路へ戻る。さっきよりも人が増えているみたい。陽射しが柔らかで気持ちがいい。
「七緒さん、疲れた?」
「ううん。緊張したけど、あっという間だったから。それに……皆がお祝いしてくれて、すごく幸せ」
ホッとしたこともあって、ようやく幸せをじんわりと感じ取れるようになっていた。
「挙式が終わったから一安心だけど、披露宴は長いんだから無理しちゃダメだよ?」
「うん。壮介さんもね」
私たちは今夜と明日、プリンスホテルに二泊する予定。せっかくだから観光しようと、壮介さんがお休みを取ってくれた。新婚旅行は、また別の日に行くことが決まっている。
明日はどこに行こうかな。以前、二人でゆっくり回れなかった江の島に行くのもいいかもしれない。
壮介さんはひとつ咳払いをしてから、私の顔を覗き込んだ。
「無理はしないで欲しいけど……少し体力温存しておいてくれると嬉しいかな」
「どうして? 何かあるの?」
私の綿帽子の耳の方へ顔を近付けた彼が、声を落とした。
「今夜は一年分の思いを込めて、愛してあげるからさ」
「!」
熱くなった頬に手を当てようとすると、彼がその手を掴んで握りしめた。
「ありがとう。僕と結婚してくれて」
目を細めた壮介さんの優しい表情と、穏やかな声が私の胸を締め付け、同時に涙を込み上がらせた。
「私、こそ……ありが、とう」
「ああ七緒さん、お化粧が流れちゃうよ」
彼の手が、頬を伝う私の涙をそっと拭う。温かい感触は、ますます喜びの滴を溢れさせた。
「だって、本当に本当に、幸せなの」
「僕も幸せだよ。七緒さんのこと一生、大事にするからね」
「私も壮介さんのこと一生……大切にします」
お互いの顔を見つめて微笑み合うのは、今日何度目だろう。
道ゆく人が私たちに手を振り、写真を撮り、おめでとうと声を掛けてくれる。
今度は緊張せずに、笑顔で応えることが出来た。
空はどこまでも気持ち良く晴れて、一年前、壮介さんと出逢った時と同じ色をしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ニットカーディガンが肌に馴染むようになった、十月最後の日曜日。
「支度できたー? 七緒さん」
壮介さんに階下から声を掛けられた。寝室に使っている和室を見回して確認する。
「はーい! オッケーです、大丈夫~」
「玄関に置いてある荷物で全部だよね? 先に車に積んじゃうよ~」
「あ、うん! ありがとう」
二階の戸締りは全部よし。
階段を下り、一階を見回して指差し確認をしていく。戸締りよし、火の元よし。お泊りになるから雨戸もしっかり閉めておいた。
ぱたぱたとスリッパの音をさせて玄関へ。今日は歩きやすいヒールの低い靴を履く。外へ出ると早朝の空気がひんやりと頬に触れた。ドアの鍵を締めて、彼のいる車に乗り込む。
「隣近所にも声掛けておいたし、もう何もないね?」
「うん、お願いします」
「じゃあ出発。いざ鎌倉、だね」
「はい……!」
道路際の銀杏の葉が、ほんのりと黄色く色づき始めていた。
横浜方面へ向かう高速に乗る。隣でハンドルを握る壮介さんが嬉しそうに言った。
「いい天気になりそうだね~。道も空いてるし、これなら時間に余裕で着くな」
彼の運転している横顔が好き、なんて言ったら驚かれるかな。
「本当、いいお天気。台風が逸れてくれて良かった」
「ま、僕の普段の行いがいいからね」
「……」
「何でそこで黙るの、七緒さん」
壮介さんは左手で眼鏡の真ん中を押さえ、不満げな声を出した。
「えっとー、その通りだなって」
「棒読みになってるじゃない。……わかった、言い直す。七緒さんの普段の行いがいいからだよねー」
「壮介さんも棒読みになってるけど」
「バレた?」
「もう……!」
二人で吹き出し、クスクスと笑った。車中に流れる音楽が心地いい。
すっかり仲良しの私たちは、心が通じ合ってからというもの、喧嘩らしい喧嘩をしたことがなかった。気持ちのすれ違いを嫌という程味わったあの数か月を、お互いもう思い出したくないからなんだろう。
そんな私たちは今日、思い出の地、鎌倉で式を挙げる。予約を入れた春からずっと、壮介さんも私もこの日を待ち望んでいた。
「お義父さんとお義母さんは、何時くらいに到着予定?」
「それがね、はしゃいじゃって昨日からホテルに泊まってるらしいの。近いのに」
今朝早くに母からメールがあった。緊張してる~? なんて相変わらずのノリだったけど、お母さんの言葉に、今日は何だかとても安心できた。
「そうだったんだ。二人で泊まってるの?」
「……弟夫婦もなの」
「ははっ、それじゃあ帆夏ちゃんもか」
「うん。帆夏はね、自分もドレスが着られるって、すごい喜びようなんだって」
姪の帆夏は、彼女のお母さんである時恵ちゃんと、お店を何軒も回って挙式用のワンピースと披露宴用のドレスを決めたらしい。可愛いだろうな、きっと。
「楽しみだね。うちの親はなるべく早く出るって言ってたな」
「披露宴が終わったら、そのままプリンスに泊まってくださるのよね?」
「ああ、そのつもりでいるよ。手配した通り」
お義父さんとお義母さんは、明日もお店を休むことにしたので、せっかくだからとホテルに宿泊してもらうことにしていた。いつも忙しい二人だから、たまにはのんびりしてくださるといいな。
ホテルの駐車場へ車を停め、江ノ電で鎌倉駅まで向かった。
到着してすぐに、申し込みをしておいたサロンでヘアメイクと白無垢の着付けをしてもらう。花嫁衣裳なんて一生に一度しか体験することはないんだからと、着付けをしてくれる島田さんという方の動作に思わず見入ってしまった。
「もしや、普段から着物を着ていらっしゃいます?」
膝を付いて私を見上げた島田さんが、感じの良い笑顔で私に訊ねた。
「え、ええ。日は浅いんですが、自分でたまに着ています」
「やっぱり。着せやすく動いてくださるから、すぐわかるんですよ。古田さんは、なで肩で肌の色が白くていらっしゃるから、普段のお着物も、とてもよくお似合いでしょうね」
「ありがとう、ございます……」
突然褒められたことに照れてしまい、声が上ずってしまった。
「花嫁衣装もよくお似合いで。早く御新郎様に御覧いただきたいわ」
島田さんは花嫁が身に着ける小物を取り出しながら、ふふと笑った。
壮介さん、喜んでくれるかな。
仕度を終えて用意された椅子に座っていると、部屋に壮介さんが現れた。
「……七緒さん」
私の名を呼んだ、紋付羽織袴姿の彼に見惚れてしまう。一年前、和服姿の彼を初めて見た時と同じに胸がきゅんとして目が離せない。やっぱり壮介さんは和服が似合うよ。
「壮介さん、とても素敵。すごく似合ってます」
「あ、ああ」
私から視線を逸らした壮介さんは、袂をごそごそしたり、落ち着かない様子で手にしていた白扇で袴を叩いたりしてる内に、とうとう後ろを向いてしまった。……どうして?
「私……変、かな」
似合っていなかったんだろうか、と考えて悲しくなる。洋装の方が良かったのかな。人生で最高のおめかしの日だというのに、捨てた筈のコンプレックスが胸に甦ってしまった。俯いて膝に置いた末広を見つめていると、壮介さんが突然すーはーと大きな深呼吸をした。
驚いて顔を上げる。
「壮介さん?」
「いや、予想以上に」
「?」
「七緒さんが綺麗過ぎて、感動してる。言葉が出ないって言うか……眩しくてまともに見れない。急に緊張してきたよ」
聞き間違いじゃ、ないよね?
ゆっくりとこちらを振り向いた壮介さんが目の前に来て、私に手を差し伸べた。彼の手に私の手を載せる。
「七緒さんを見つけた時以上に気持ちが高揚してる。君の夫に相応しいと認めてもらえるように、今日はしっかりしないとね」
壮介さんは私の手をそっと握ると優しく微笑んだ。
「白無垢が、本当によく似合ってる。世界一綺麗だ。僕の自慢の奥さんだよ、七緒さんは」
「あ、ありがとう……」
それだけ言うのが精一杯で、胸に込み上げるものを抑えることが出来なかった。視界が揺らぎ、彼の姿がぼやけて見える。
「七緒さん、まだ泣いたら駄目でしょ」
「……うん」
「お義母さんたちが控室で待ってるんだからさ。涙はその時にとっておきなよ。ね?」
「そういう優しいこと言わないで。余計、泣けて来ちゃう……」
「ごめん、ごめん」
笑った壮介さんは、私の手を大切な壊れ物を扱うように、もう一度そっと握った。
介添えさんに導かれて、壮介さんと共に親族が待つ控室に入った。椅子に座った途端、弟の隆明と時恵ちゃんに連れられた帆夏が傍に寄って来た。
「ななちゃん!」
「帆夏。来てくれてありがとうね」
「ななちゃん……しろい」
ぽかんと口をあけて私を見る帆夏の言葉に、思わず笑ってしまった。周りの大人たちも釣られて笑う。もう、可愛いんだから……!
「お義姉さん、おめでとうございます」
「ありがとう時恵ちゃん。隆明も、忙しいのにありがとね」
「いえいえ。和装もいいもんだなぁ。馬子にも衣装じゃん、七緒」
「でしょ?」
弟家族と入れ替わりに、私の父と母が傍に来た。
「七緒、綺麗よ。うん……綺麗」
意外なことにお母さんが最初に泣き出してしまった。お母さんの隣にいるお父さんは、何も言わずにただ口を引き結んでいる。もしかして泣くのを堪えてる……?
「お母さん、お父さ……ん」
そう思った途端、ぼろっと涙が零れてしまった。家を出て一年近く経つのに、今さらどうしてこんなに泣けるんだろう。
介添えさんが差し出す前に、お母さんが綺麗なハンカチを私の手に載せた。素直に受け取って、そのハンカチでそっと涙を押さえた。
「もう何も心配はしてないわよ。これからも今まで通り、壮介さんについていって、しっかりやんなさいね」
「ありがとうお母さん。お父さんも」
お父さんは黙って何度も頷くだけだった。その瞳が潤んでいることに、気付かない振りをしているのが精一杯。
お父さんとお母さんは壮介さんと話を始めた。
「七緒ちゃん、本当に綺麗よ」
「壮介には勿体ないな」
壮介さんのお義母さん、お義父さんが、私の傍に来てくれた。
「……ありがとうございます」
優しい笑みに、瞳がまた涙で潤んでしまう。
壮介さんと暮らしてみて、一緒の家にいることや、家族として生きていくことの大切さが少しずつわかってきたように思う。
私たち家族の為に一生懸命働いていた父と、私たちの為に家を守っていてくれた母。感謝してもしきれない。そして壮介さんを育ててくれた両親にも、同じように感謝の気持ちでいっぱいだった。
写真撮影を済ませ、親族は歩いて鶴岡八幡宮へ。壮介さんと私は、待機していた人力車に乗って少し遠回りをしながら八幡宮へ向かった。
若宮大路を進んで行くのだけれど、とにかく周りの人たちの注目がすごい……! 今日は日曜日だから観光客が多いんだよね。スマホで写真を撮っている人がたくさんいる。外国人観光客の集団もこちらを指差しながら大きな声で何かを言っているのが聴こえた。
おめでとうと声を掛けられる度、そちらへ顔を向けて小さく頭を下げた。恥ずかしさと緊張で顔はひきつるし、体が固まってしまう。
大丈夫だよ、と壮介さんが温かな手で、私の震える手を握ってくれた。
八幡宮へ到着し、太鼓橋へ向かうと既に親族が待っていた。集合写真の撮影を済ませ、舞殿へと出発する。雅楽を奏でる神社の人たちの後を並んでついていくのだ。
八幡宮の境内は若宮大路を通って来た時よりも人が多かった。お天気が良いから余計なんだろう。
恥ずかしかったけれど……境内を静々と歩く内に、不思議と気持ちが落ち着いてきた。爽やかな秋風の匂いと雅な音楽に包まれて、花嫁としての気持ちが段々と高まっていく。ちらりと隣の壮介さんに目をやった。彼はとても堂々としていて、和服を着た時の所作が自然で、本当に素敵。気持ちが通じたのか、彼も私の方を向いて、目が合うと優しく微笑んでくれた。私もまた微笑みを返す。
たくさんの人に見守られながらの、くすぐったいような恥ずかしいような……そんな一瞬のやりとりだった。
近しい親族のみで行う、舞殿での挙式。中の様子は外からしっかり見える造りになっており、私たちのことを観光客が見守っていた。
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ちょうど一年前。古都鎌倉で壮介さんに出逢った。
浄妙寺の和室で彼の和服姿に心を奪われ、優しい声と表情に瞬く間に惹かれてしまった。私に向けてくれた彼の思いなど何も知らずに、誘われるがまま高徳院から一緒に散策をした。江ノ電に乗って窓の外に広がる海を見つめ、江の島の鳥居を抜けて参道を上がり、また同じ海を見つめた。「古都に咲く花」という名のネックレスを受け取り、食事に誘われた。
初めての一夜を過ごして、逃げ出して……お見合いで再会して、もみじの紅い葉が散る中、契約結婚を交わした。それから数か月後。ようやく気持ちが通じ合ってから、春にここへ参拝に来た。
お互いの心をわかり合えたことが嬉しくて幸せで……
出逢う前から、ううん、出逢ってからも、そして気持ちが通じ合わない時だって本当はいつも……私のことを思っていてくれた人。真面目に働いて、忙しい中でも私をたくさん愛してくれる、この人と結婚して本当に良かった。傍にいたいと思ったのは間違いではなかった。
生涯、彼の隣にいたい。何があっても一緒に乗り越えていきたい。そして、彼を幸せにしたい。神聖な儀式の中……そう、心に誓った。
挙式を済ませて舞殿を出ると、外で友人たちが待っていた。家に遊びに来てくれた美月と千里と若菜だ。ここのところは頻繁に彼女たちと連絡を取り合い、外でランチをすることもあった。
「七緒……! おめでとう!」
「綺麗よ、七緒」
ハンカチで涙を押さえ、お祝いの言葉を掛けてくれる。そんな彼女たちの様子に、私も再び涙が零れた。辺りの木々は紅葉が始まり、美しく染まった葉がひらりと、私たちに舞い落ちて来る。
「ありがとう」
女同士って、結婚をすると遠くへ行ってしまったり、子どもを産んで忙しくなったりして中々会えなくなる。でも、何かをきっかけにこうして顔を合わせれば、また昔に戻って声を掛けあうことができる関係って、とてもいい。
「七緒を、よろしくお願いします」
美月が壮介さんに頭を下げると、他の友人たちも同じように頭を下げた。
「ええ、任せてください」
彼女たちの嬉しそうな笑顔と壮介さんの力強い言葉が、私の中にしっかりと刻み込まれた。
私の友人と入れ替わりに、壮介さんの学生時代のお友達とお話も出来た。友人と楽しそうに冗談を言い合う壮介さんの姿が新鮮。
親族と友人は、着付けや着替えをしたサロンに一旦戻ってもらい、披露宴を挙げるプリンスホテルへマイクロバスへ移動、となっていた。
披露宴には私の元同僚や、みもと屋の店員さんたち、壮介さんがお世話になっているお仕事関係の人や、あの風香泉庵の相馬さんもいらっしゃるという。椅子カフェ堂のくるみさんたちも出席してくれるそうで、とても楽しみだ。
私と壮介さんは、皆とは違う車が迎えに来ている場所まで行く為に、再び人力車へと乗り込んだ。元気の良い若い俥夫さんが、挨拶と共にゆっくりと人力車を引き始めた。
八幡宮から、行きと同じに若宮大路へ戻る。さっきよりも人が増えているみたい。陽射しが柔らかで気持ちがいい。
「七緒さん、疲れた?」
「ううん。緊張したけど、あっという間だったから。それに……皆がお祝いしてくれて、すごく幸せ」
ホッとしたこともあって、ようやく幸せをじんわりと感じ取れるようになっていた。
「挙式が終わったから一安心だけど、披露宴は長いんだから無理しちゃダメだよ?」
「うん。壮介さんもね」
私たちは今夜と明日、プリンスホテルに二泊する予定。せっかくだから観光しようと、壮介さんがお休みを取ってくれた。新婚旅行は、また別の日に行くことが決まっている。
明日はどこに行こうかな。以前、二人でゆっくり回れなかった江の島に行くのもいいかもしれない。
壮介さんはひとつ咳払いをしてから、私の顔を覗き込んだ。
「無理はしないで欲しいけど……少し体力温存しておいてくれると嬉しいかな」
「どうして? 何かあるの?」
私の綿帽子の耳の方へ顔を近付けた彼が、声を落とした。
「今夜は一年分の思いを込めて、愛してあげるからさ」
「!」
熱くなった頬に手を当てようとすると、彼がその手を掴んで握りしめた。
「ありがとう。僕と結婚してくれて」
目を細めた壮介さんの優しい表情と、穏やかな声が私の胸を締め付け、同時に涙を込み上がらせた。
「私、こそ……ありが、とう」
「ああ七緒さん、お化粧が流れちゃうよ」
彼の手が、頬を伝う私の涙をそっと拭う。温かい感触は、ますます喜びの滴を溢れさせた。
「だって、本当に本当に、幸せなの」
「僕も幸せだよ。七緒さんのこと一生、大事にするからね」
「私も壮介さんのこと一生……大切にします」
お互いの顔を見つめて微笑み合うのは、今日何度目だろう。
道ゆく人が私たちに手を振り、写真を撮り、おめでとうと声を掛けてくれる。
今度は緊張せずに、笑顔で応えることが出来た。
空はどこまでも気持ち良く晴れて、一年前、壮介さんと出逢った時と同じ色をしていた。
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じれじれと、甘く、不器用に。
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