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第2話 契約を交わしたんだけど
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「確認の為だけど……本当よね? 嘘じゃないよね?」
「当たり前だ。君に子供が生まれたら君は元の世界に帰して子供はこちらで育てる。なんなら契約書にサインして良いぞ」
パチン! とアルグレートが右手の指を鳴らすと何もない所からいきなり契約書が現れた。
……でもなんて書いてあるかわかんない。
「契約書だ。ここにサインをしてくれ」
「なんて書いてあるの?」
「さっき俺が言った内容だ。君を番として認め、子を作ると」
子を作るって事は……そうだよね、あんな事やこんな事をするんだよね。てか私、処女をこいつに捧げなきゃいけないのかあ……。
なんか激しそうだなあ……。いや、妄想はここまでにしておこう。
「オトネ様、こちらペンでございます。どうぞ」
まだ不服そうな顔をしているアルグレートを目を細めて見ているとツォルグさんから羽ペンを受け取ったので、指定された場所に松原乙音と書き込んだ。
その後は、アルグレートが私の名前の下に自身の名前をサインする。
「わっ」
契約書が赤く光り輝く。契約成立って事かな?
「これで契約成立だ。君は今日から俺の妻として子作りをしてもらう」
「……え? 妻?」
いやいや待って。てかさっきの説明で妻だなんて言った!?
「いやそんな、いきなりあなたの妻だなんて……!」
「子作りするという事はそう言う事だろうが。そんな事もわからないのか?」
さも当たり前のように言ってるけど……! いきなり知らない人と結婚だなんて!
「と言う事でよろしく頼む」
ぶっきらぼうに手を差し伸べてきた彼の手を取るか否か迷う。けど、こういう時は手を取って握るのがマナーなんだろうか?
「こちらこそ」
彼の大きくてゴツゴツした手は冷え切っていた。アルグレートは冷たい目つきのまま頷くとさっさと手を離して踵を返していく。
「ツォルグ。あとは頼むぞ。明日の結婚式の予定も全部任せる」
「はっ、仰せのままに」
アルグレートが靴音を鳴らしながらどこかへと去っていく。アレは完全に私に興味ない感じだな。
わかっているとはいえ、なんだかきっつい。
「ほんと……何よアイツ……! っていうか明日結婚式しちゃうの……?」
「オトネ様、まずはお部屋にご案内いたしましょう」
「お願いします。ツォルグさん」
ツォルグさんの背中をついていく。とにかく大理石の床に世界遺産に登録されてそうな洋風な内装は目が慣れないし、迷いそうだ。
「こちらがあなたのお部屋でございます」
固く閉ざされた赤い扉が開かれる。その先には圧巻の景色が広がっていた。
「わあ……」
圧倒的な広さに天蓋付きの巨大なベッドにベルベットのソファに黄金の机。大きなクローゼットなんかもある。
「広い……」
「そうでしょう? アルグレート様がご用意した特別なお部屋ですからね」
どうせ無愛想な顔をしながら部下に命じて用意させたんだろう。だけどそれでも嬉しいものは嬉しいものなのである。
「こちらにはお手洗いが、そして反対の扉には浴室がございます」
「な、なるほど……」
「お食事は1日3回メイドがお持ちします。では、アルグレート様がお呼びになるまでこちらでどうぞおくつろぎください」
ここにいたらいいのかな? なんか結婚式がどうたら言ってたけど……。
「わかりました……ここにいます」
「では、入浴のご準備とドレスをご用意いたしましょう。メイドをお呼びします」
ツォルグさんが連れてきたメイドは3人。皆年齢は私くらいで背は……170センチ以上はあるかも。茶色い髪をシニョンにまとめていて、ライオンみたいな丸い耳が頭の上に生えている。
「こちらにおわすオトネ様が今日からアルグレート様の番……そして妻となるお方でございます」
「はっ、よろしくお願いいたします」
「こちらにいるメイドは獅子人という種族の亜人でございます。忠誠力が高く、能力も高いので重宝されている種族ですな」
獅子だからやっぱりライオンって事か。3人とも厳つい表情をしてるなあ……。話しかけにくいかも。
そうこうしている間にもメイドさん達が入浴の準備をしてくれた。
「着脱、お手伝いしましょうか?」
「あ、いや……これはひとりで出来ます」
脱衣所で服を脱いで、浴室に入ると浴槽には白い濁り湯が張られていた。入浴剤でも使ったのかな?
湯加減はちょうど良い。シャワーを浴びて湯船に浸かると夜勤で疲れた身体にお湯が染み渡る。
「あ~……極楽極楽」
メイドさん達は浴室の外で待機している。ここまでついてくるかと思ったけど、そうでもないみたい。
まあ、外で待機してくれていた方が助かるのは事実だ。
「……異世界、なんだ。ここは」
まさか異世界に自分が生きたまま転移されるなんて思ってもみなかった。
最近流行りの小説や漫画、アニメでよく異世界は登場する。それも私のように転移するか、トラックに轢かれるなりして死んで、そしたら異世界の人物に転生したと言うパターンは結構見てきた気がする。
「まさか私が異世界に行くなんてなぁ……」
異世界の悪役令嬢に転生した主人公が活躍する系の漫画がよくスマホの広告に出ていたのが懐かしい。
「あ、でも多分……スマホ使えないよね」
スマホなどを入れたバッグは脱衣所に置いてある。メイドの人達に中を覗かれたり盗まれたりしないといいんだけど……。
でも心配になったので、私は湯船からあがって一旦脱衣所に向かう事にした。
「あるかな……あった!」
バッグの所在を確かめた時、外から話し声が聞こえてきた。
「オトネ様、中々気が強そうなお方ね。アルグレート様に殺されなければいいけど」
「アルグレート様は冷酷公爵という異名があるお方だというのは、教えて差し上げた方がよろしいかしら?」
「もちろんよ。何かあっては困るのだから」
うわ物騒だな! 殺されたら元の世界には戻れないし……。やっぱりおとなしくした方が良いのかな? でも自分はそういう性分じゃないしなあ……。
「マリア様がこの事を知ったら……どう思われるでしょうか?」
……マリア様? 誰の事だろう?
「当たり前だ。君に子供が生まれたら君は元の世界に帰して子供はこちらで育てる。なんなら契約書にサインして良いぞ」
パチン! とアルグレートが右手の指を鳴らすと何もない所からいきなり契約書が現れた。
……でもなんて書いてあるかわかんない。
「契約書だ。ここにサインをしてくれ」
「なんて書いてあるの?」
「さっき俺が言った内容だ。君を番として認め、子を作ると」
子を作るって事は……そうだよね、あんな事やこんな事をするんだよね。てか私、処女をこいつに捧げなきゃいけないのかあ……。
なんか激しそうだなあ……。いや、妄想はここまでにしておこう。
「オトネ様、こちらペンでございます。どうぞ」
まだ不服そうな顔をしているアルグレートを目を細めて見ているとツォルグさんから羽ペンを受け取ったので、指定された場所に松原乙音と書き込んだ。
その後は、アルグレートが私の名前の下に自身の名前をサインする。
「わっ」
契約書が赤く光り輝く。契約成立って事かな?
「これで契約成立だ。君は今日から俺の妻として子作りをしてもらう」
「……え? 妻?」
いやいや待って。てかさっきの説明で妻だなんて言った!?
「いやそんな、いきなりあなたの妻だなんて……!」
「子作りするという事はそう言う事だろうが。そんな事もわからないのか?」
さも当たり前のように言ってるけど……! いきなり知らない人と結婚だなんて!
「と言う事でよろしく頼む」
ぶっきらぼうに手を差し伸べてきた彼の手を取るか否か迷う。けど、こういう時は手を取って握るのがマナーなんだろうか?
「こちらこそ」
彼の大きくてゴツゴツした手は冷え切っていた。アルグレートは冷たい目つきのまま頷くとさっさと手を離して踵を返していく。
「ツォルグ。あとは頼むぞ。明日の結婚式の予定も全部任せる」
「はっ、仰せのままに」
アルグレートが靴音を鳴らしながらどこかへと去っていく。アレは完全に私に興味ない感じだな。
わかっているとはいえ、なんだかきっつい。
「ほんと……何よアイツ……! っていうか明日結婚式しちゃうの……?」
「オトネ様、まずはお部屋にご案内いたしましょう」
「お願いします。ツォルグさん」
ツォルグさんの背中をついていく。とにかく大理石の床に世界遺産に登録されてそうな洋風な内装は目が慣れないし、迷いそうだ。
「こちらがあなたのお部屋でございます」
固く閉ざされた赤い扉が開かれる。その先には圧巻の景色が広がっていた。
「わあ……」
圧倒的な広さに天蓋付きの巨大なベッドにベルベットのソファに黄金の机。大きなクローゼットなんかもある。
「広い……」
「そうでしょう? アルグレート様がご用意した特別なお部屋ですからね」
どうせ無愛想な顔をしながら部下に命じて用意させたんだろう。だけどそれでも嬉しいものは嬉しいものなのである。
「こちらにはお手洗いが、そして反対の扉には浴室がございます」
「な、なるほど……」
「お食事は1日3回メイドがお持ちします。では、アルグレート様がお呼びになるまでこちらでどうぞおくつろぎください」
ここにいたらいいのかな? なんか結婚式がどうたら言ってたけど……。
「わかりました……ここにいます」
「では、入浴のご準備とドレスをご用意いたしましょう。メイドをお呼びします」
ツォルグさんが連れてきたメイドは3人。皆年齢は私くらいで背は……170センチ以上はあるかも。茶色い髪をシニョンにまとめていて、ライオンみたいな丸い耳が頭の上に生えている。
「こちらにおわすオトネ様が今日からアルグレート様の番……そして妻となるお方でございます」
「はっ、よろしくお願いいたします」
「こちらにいるメイドは獅子人という種族の亜人でございます。忠誠力が高く、能力も高いので重宝されている種族ですな」
獅子だからやっぱりライオンって事か。3人とも厳つい表情をしてるなあ……。話しかけにくいかも。
そうこうしている間にもメイドさん達が入浴の準備をしてくれた。
「着脱、お手伝いしましょうか?」
「あ、いや……これはひとりで出来ます」
脱衣所で服を脱いで、浴室に入ると浴槽には白い濁り湯が張られていた。入浴剤でも使ったのかな?
湯加減はちょうど良い。シャワーを浴びて湯船に浸かると夜勤で疲れた身体にお湯が染み渡る。
「あ~……極楽極楽」
メイドさん達は浴室の外で待機している。ここまでついてくるかと思ったけど、そうでもないみたい。
まあ、外で待機してくれていた方が助かるのは事実だ。
「……異世界、なんだ。ここは」
まさか異世界に自分が生きたまま転移されるなんて思ってもみなかった。
最近流行りの小説や漫画、アニメでよく異世界は登場する。それも私のように転移するか、トラックに轢かれるなりして死んで、そしたら異世界の人物に転生したと言うパターンは結構見てきた気がする。
「まさか私が異世界に行くなんてなぁ……」
異世界の悪役令嬢に転生した主人公が活躍する系の漫画がよくスマホの広告に出ていたのが懐かしい。
「あ、でも多分……スマホ使えないよね」
スマホなどを入れたバッグは脱衣所に置いてある。メイドの人達に中を覗かれたり盗まれたりしないといいんだけど……。
でも心配になったので、私は湯船からあがって一旦脱衣所に向かう事にした。
「あるかな……あった!」
バッグの所在を確かめた時、外から話し声が聞こえてきた。
「オトネ様、中々気が強そうなお方ね。アルグレート様に殺されなければいいけど」
「アルグレート様は冷酷公爵という異名があるお方だというのは、教えて差し上げた方がよろしいかしら?」
「もちろんよ。何かあっては困るのだから」
うわ物騒だな! 殺されたら元の世界には戻れないし……。やっぱりおとなしくした方が良いのかな? でも自分はそういう性分じゃないしなあ……。
「マリア様がこの事を知ったら……どう思われるでしょうか?」
……マリア様? 誰の事だろう?
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