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第60話 大量のプレゼントボックス
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私の妊娠をアルグース帝国中に発表すると告げたアルグレートの拳は固く握りしめられている。彼曰く貴族や皇族の奥方が妊娠した場合、包み隠さず公にするのがルールだそうだ。公にするタイミングは各々によって違うが、大体妊娠初期と相場が決まっているらしい。
「公表するんだね」
「そうだ。これ以上隠す事も出来ないからな……」
「ねえ、アルグレート……顔硬くない?」
「……」
何かを言い当ててしまったのか、彼はそのまま口を閉ざしてしまった。
「……何か不安な事ある?」
このまま放置する事も出来なくて、探りを入れてみる。数秒後、アルグレートは重く閉ざしていた口を開けてくれた。
「君はやはり、元の世界に戻ってしまうのかと考えてしまってな」
「……」
やっぱり考えちゃうか。私も同じ事を考えていたけど、まだ答えは出ていないよ。と私を苦しそうな目で見ているアルグレートに伝える。
「そうなのだな」
「うん……まだ結論は出てないよ。私もどうすべきかわからなくて」
私は無意識にアルグレートの手を握っていた。彼のちょっとひんやりした手を握ると、少しだけ胸の中で荒れていた波が穏やかになる。
「……わかった。焦る必要はない。ゆっくり考えてほしい。ただ……俺は君を愛している。離れたくないというのだけは理解してほしい」
私が彼を引き留めようとした所で、彼は踵を返して部屋から静かに出て行った。
「オトネ様、こちら新たな魔法薬でございます」
医者から赤い丸薬をもらい、早速飲むとむかむかと気持ち悪かったつわりが徐々に引いていくのが知覚出来る。即効性があるのはとても便利だ。
「効いてきました……!」
「そちらのお薬、朝夕の食事前にお飲みください。帝国の中でも一番強力なつわり用魔法薬となっておりますので、毎食前に飲む必要はございません」
「すごい便利ですね。すぐに効くのはとてもありがたいです」
「では、また何かございましたらいつでもお呼びください。グスタフ公爵様へもそのようにお伝えしておきますので」
ありがとうございました。とお礼を言うと医者は頭を下げて部屋から出ていった。去り際メイドと何か話していたように見えるけど、おそらくは私の病状の事かもしれない。
薬が効いたおかげで吐き気含め不快な症状が全部無くなった。その為お腹が空いてきたような気がする。
「ちょっと何かつまめるものとか無いかな……サンドイッチとか」
いや、サンドイッチを食べるならアルグレートと一緒に食べたい。今は忙しいかもしれないけど、ちょっとだけなら大丈夫かな?
彼を探してうろうろと廊下を歩いていると、ツォルグさんと遭遇する。
「オトネ様、具合は大丈夫なのでございますか?」
「お薬飲んだらすぐにおさまりました。あの~アルグレートはどちらへ?」
「今はあなたの懐妊を報告するお手紙をしたためております」
「そっか、忙しい感じですね。また後で来ます」
ツォルグさんはアルグレート様へお伝えしておきましょうか? と気を利かせてくれる。せっかくだしここはご厚意に甘えちゃおうかな。
「あの、よかったら彼とサンドイッチでも食べないかってお伝え出来ませんか? ツォルグさんもお時間ありましたらご一緒にどうぞ」
「構わないのですか?」
「はい。なんだか今は大人数でわいわいしながら食べたい気分なので」
「かしこまりました。そのようにお伝えいたします」
彼に言伝をお願いした後は、再び自室に戻る。しばらくして窓の向こうで何か馬車が宙に浮いているのが見えたので、窓に駆け寄るとそこには元いた世界ではありえない事が起きていた。
「え、ナニコレ?!」
ユニコーン2頭が駆ける馬車に、羽の生えた手紙や大きな封筒、更には色とりどりのプレゼントボックスがふわふわと浮かびながらこちらへと向かってきている。
「ど、どう言う事?! うわ、こっちにも来てるじゃん!」
慌てて窓を開けてプレゼントボックスを両手でキャッチする。赤いリボンにオレンジ色の箱のプレゼントボックスの真ん中には、白いカードが収められているけどなんて書いてあるか読めない。
「とりあえずこっちに置いておこう。うわまた来た」
3個目のプレゼントボックスを回収した所で騒ぎに気が付いた獅子人のメイド2人が部屋にやってきてプレゼントボックスをカートに乗せて回収してくれた。
「このプレゼント達一体何なんです? 私の妊娠祝いって事ですか?」
「おっしゃる通りでございます」
「えっ多くない?! めっちゃ大量にあるように思うんですが!」
「グスタフ公爵は五大公爵家のひとつですから、貴族の中でも一番貰える量は多くなるかと思います」
な、なるほど……貴族の中では一番ランクが上だからこんなに多く貰えるんだね。メイド曰く内容はお菓子とか赤ちゃん用の日用品とか様々なんだとか。
「あ、こちらは……オフスキー家からのものでございますね。マリア様が明日こちらに伺いたいとカードに書かれております」
私が回収してメイドがカートにしまった赤とオレンジのプレゼントボックスを、メイドがしゃがんで覗き込んでいる。
「え……マリアって……」
あの、アルグレートの幼馴染であるマリアの事? 彼女がこの屋敷に来る?
私の胸の中が一気にざわめき始めた。
「公表するんだね」
「そうだ。これ以上隠す事も出来ないからな……」
「ねえ、アルグレート……顔硬くない?」
「……」
何かを言い当ててしまったのか、彼はそのまま口を閉ざしてしまった。
「……何か不安な事ある?」
このまま放置する事も出来なくて、探りを入れてみる。数秒後、アルグレートは重く閉ざしていた口を開けてくれた。
「君はやはり、元の世界に戻ってしまうのかと考えてしまってな」
「……」
やっぱり考えちゃうか。私も同じ事を考えていたけど、まだ答えは出ていないよ。と私を苦しそうな目で見ているアルグレートに伝える。
「そうなのだな」
「うん……まだ結論は出てないよ。私もどうすべきかわからなくて」
私は無意識にアルグレートの手を握っていた。彼のちょっとひんやりした手を握ると、少しだけ胸の中で荒れていた波が穏やかになる。
「……わかった。焦る必要はない。ゆっくり考えてほしい。ただ……俺は君を愛している。離れたくないというのだけは理解してほしい」
私が彼を引き留めようとした所で、彼は踵を返して部屋から静かに出て行った。
「オトネ様、こちら新たな魔法薬でございます」
医者から赤い丸薬をもらい、早速飲むとむかむかと気持ち悪かったつわりが徐々に引いていくのが知覚出来る。即効性があるのはとても便利だ。
「効いてきました……!」
「そちらのお薬、朝夕の食事前にお飲みください。帝国の中でも一番強力なつわり用魔法薬となっておりますので、毎食前に飲む必要はございません」
「すごい便利ですね。すぐに効くのはとてもありがたいです」
「では、また何かございましたらいつでもお呼びください。グスタフ公爵様へもそのようにお伝えしておきますので」
ありがとうございました。とお礼を言うと医者は頭を下げて部屋から出ていった。去り際メイドと何か話していたように見えるけど、おそらくは私の病状の事かもしれない。
薬が効いたおかげで吐き気含め不快な症状が全部無くなった。その為お腹が空いてきたような気がする。
「ちょっと何かつまめるものとか無いかな……サンドイッチとか」
いや、サンドイッチを食べるならアルグレートと一緒に食べたい。今は忙しいかもしれないけど、ちょっとだけなら大丈夫かな?
彼を探してうろうろと廊下を歩いていると、ツォルグさんと遭遇する。
「オトネ様、具合は大丈夫なのでございますか?」
「お薬飲んだらすぐにおさまりました。あの~アルグレートはどちらへ?」
「今はあなたの懐妊を報告するお手紙をしたためております」
「そっか、忙しい感じですね。また後で来ます」
ツォルグさんはアルグレート様へお伝えしておきましょうか? と気を利かせてくれる。せっかくだしここはご厚意に甘えちゃおうかな。
「あの、よかったら彼とサンドイッチでも食べないかってお伝え出来ませんか? ツォルグさんもお時間ありましたらご一緒にどうぞ」
「構わないのですか?」
「はい。なんだか今は大人数でわいわいしながら食べたい気分なので」
「かしこまりました。そのようにお伝えいたします」
彼に言伝をお願いした後は、再び自室に戻る。しばらくして窓の向こうで何か馬車が宙に浮いているのが見えたので、窓に駆け寄るとそこには元いた世界ではありえない事が起きていた。
「え、ナニコレ?!」
ユニコーン2頭が駆ける馬車に、羽の生えた手紙や大きな封筒、更には色とりどりのプレゼントボックスがふわふわと浮かびながらこちらへと向かってきている。
「ど、どう言う事?! うわ、こっちにも来てるじゃん!」
慌てて窓を開けてプレゼントボックスを両手でキャッチする。赤いリボンにオレンジ色の箱のプレゼントボックスの真ん中には、白いカードが収められているけどなんて書いてあるか読めない。
「とりあえずこっちに置いておこう。うわまた来た」
3個目のプレゼントボックスを回収した所で騒ぎに気が付いた獅子人のメイド2人が部屋にやってきてプレゼントボックスをカートに乗せて回収してくれた。
「このプレゼント達一体何なんです? 私の妊娠祝いって事ですか?」
「おっしゃる通りでございます」
「えっ多くない?! めっちゃ大量にあるように思うんですが!」
「グスタフ公爵は五大公爵家のひとつですから、貴族の中でも一番貰える量は多くなるかと思います」
な、なるほど……貴族の中では一番ランクが上だからこんなに多く貰えるんだね。メイド曰く内容はお菓子とか赤ちゃん用の日用品とか様々なんだとか。
「あ、こちらは……オフスキー家からのものでございますね。マリア様が明日こちらに伺いたいとカードに書かれております」
私が回収してメイドがカートにしまった赤とオレンジのプレゼントボックスを、メイドがしゃがんで覗き込んでいる。
「え……マリアって……」
あの、アルグレートの幼馴染であるマリアの事? 彼女がこの屋敷に来る?
私の胸の中が一気にざわめき始めた。
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