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第61話 マリアとの再会
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マリアの実家であるオフスキー公爵家からのプレゼントボックスも含め、メイドは回収したうちのほとんどをカートに入れてどこかへと持っていった。もしかしたらアルグレートに1回確認させるのかもしれない。
残りのプレゼントボックスや木箱などは私ともうひとりのメイドが整理して、宛先ごとに机の上に置いている。
「こんなに来るとはびっくりです」
「貴族の方々は、赤ちゃん用の日用品は新品を優先して使うようですからね」
「そうなんですか?!」
「はい、基本1回使ったら廃棄か、貧しい者達に分け与えるとか」
へえ……やっぱりそこは貴族なんだね。豪快過ぎる。
「オトネ、いるか? ちょっと話したい事がある」
ここでアルグレートが部屋にやって来たので、返事をして彼を部屋へと招いた。アルグレートの後ろにはツォルグさんとメイド2人も顔をのぞかせている。
「君もさっき見たと思うが、マリアが明日ここに来たいと、オフスキー家が寄越したプレゼントボックスに同封されていた手紙にそう書いてある。そこでだ。君も俺と一緒に同席してほしい」
「……私も、ですか」
「俺だけ会う事にすると、君は不安だと思うんだ。勿論俺は君を愛しているがな……」
「誤解させる事が無いように、って事だよね?」
アルグレートが間髪入れずにそうだと大きく首を縦に振った。そこまで私の事を考えてくれているアルグレートの進歩っぷりに感謝する一方だが、確かに私が知らない所でアルグレートがマリアと話しているなんてシチュエーションは正直嫌だし、かといってマリアに会うのも気が引ける。
「君が望むなら、マリアではなくオフスキー家の夫人か誰かに変更をお願いする事も出来るが、どうする? マリアとしては君とも話をしたいそうだが」
「マリアさんは何を話したいんだろうね?」
「そこは書いてなかったからわからない。だがマリアはマリアで多分考えている事があるんだと思う」
「……そうだよね……」
結婚披露宴で、マリアは泣きはらした私の化粧を直してくれたのを思い出す。だから悪い人ではないのは分かっているけど、それでも素直に会いたいとは思えなかった。
「オトネ様、いかがなさいますか? もしご同席なさるのであれば、このツォルグもご一緒致します」
「だそうだ。俺としても万全の態勢は期すつもりだ。心配はいらない」
「……わかった。そこまで言うなら会ってみる。でも約束してほしい。会っている間はアルグレート、私とずっと一緒にいてほしい」
「もちろん約束する」
アルグレートは私の右手を取ると、甲にリップ音を立てながら柔らかいキスを落とした。
「君を必ずエスコートしてみせる。俺の愛は君のものだ」
「……よろしくね」
右手の甲を自分の頬に当てると、少しだけ彼の口の熱が残っているような気がした。
◇ ◇ ◇
アルグレートがオフスキー公爵家へと返信を送り正式に明日マリアと会う事になった。
そんな中届いたプレゼントボックスなどの贈り物はとにかく量がえげつないので、一旦は応接室のひとつを倉庫代わりに使う事になる。しかし食材系は包装を解き、誰から届いたのか明らかにする為に木製のタグを付けてから厨房にある食料庫へと運び込まれた。
「いやぁ、うちの実家からもたくさんの贈り物が届いていますなぁ」
ツォルグさんが実家であるエイティン公爵家から届いた贈り物の山を感慨深そうに眺めている。
「エイティン家はお人好しが多すぎる家系だからこうなるのは理解できていたが……」
「いやアルグレート、この量はさすがに多くない?」
「オトネの言うとおりだな……しかもこれで半分だからな。もう半分は食料庫にある」
エイティン公爵家の領地は広大な農地が半数を占めているというのもあって、食材の宝庫的な場所でもあるとか。
「今日から大量の食材を消費しなければならない。メイド達には持って帰るようにも伝えておかねば……」
山積みにされた贈り物をアルグレートは腕組みをしてあちこち歩き回りながらも、口元は嬉しそうにほころばせていたのだった。
「アルグレート、嬉しい?」
「もちろん。君は?」
「私も嬉しいよ」
彼の背中に抱き着いて、顔を埋める。もうこんな事が出来るのは残りわずかかもしれないので、今のうちにたくさん甘えておかなければ。
◇ ◇ ◇
「こんにちは。お久しぶりでございます。おふたりともお元気そうで何よりですわ。こちら、ご両親よりお送りするようにとの事でございます」
髪と目の色と同じ赤いドレスを身にまとったマリアが、アルグレートが好きだというポプリが入った箱を応接室の年季の入った机の上にそっと置いた。
残りのプレゼントボックスや木箱などは私ともうひとりのメイドが整理して、宛先ごとに机の上に置いている。
「こんなに来るとはびっくりです」
「貴族の方々は、赤ちゃん用の日用品は新品を優先して使うようですからね」
「そうなんですか?!」
「はい、基本1回使ったら廃棄か、貧しい者達に分け与えるとか」
へえ……やっぱりそこは貴族なんだね。豪快過ぎる。
「オトネ、いるか? ちょっと話したい事がある」
ここでアルグレートが部屋にやって来たので、返事をして彼を部屋へと招いた。アルグレートの後ろにはツォルグさんとメイド2人も顔をのぞかせている。
「君もさっき見たと思うが、マリアが明日ここに来たいと、オフスキー家が寄越したプレゼントボックスに同封されていた手紙にそう書いてある。そこでだ。君も俺と一緒に同席してほしい」
「……私も、ですか」
「俺だけ会う事にすると、君は不安だと思うんだ。勿論俺は君を愛しているがな……」
「誤解させる事が無いように、って事だよね?」
アルグレートが間髪入れずにそうだと大きく首を縦に振った。そこまで私の事を考えてくれているアルグレートの進歩っぷりに感謝する一方だが、確かに私が知らない所でアルグレートがマリアと話しているなんてシチュエーションは正直嫌だし、かといってマリアに会うのも気が引ける。
「君が望むなら、マリアではなくオフスキー家の夫人か誰かに変更をお願いする事も出来るが、どうする? マリアとしては君とも話をしたいそうだが」
「マリアさんは何を話したいんだろうね?」
「そこは書いてなかったからわからない。だがマリアはマリアで多分考えている事があるんだと思う」
「……そうだよね……」
結婚披露宴で、マリアは泣きはらした私の化粧を直してくれたのを思い出す。だから悪い人ではないのは分かっているけど、それでも素直に会いたいとは思えなかった。
「オトネ様、いかがなさいますか? もしご同席なさるのであれば、このツォルグもご一緒致します」
「だそうだ。俺としても万全の態勢は期すつもりだ。心配はいらない」
「……わかった。そこまで言うなら会ってみる。でも約束してほしい。会っている間はアルグレート、私とずっと一緒にいてほしい」
「もちろん約束する」
アルグレートは私の右手を取ると、甲にリップ音を立てながら柔らかいキスを落とした。
「君を必ずエスコートしてみせる。俺の愛は君のものだ」
「……よろしくね」
右手の甲を自分の頬に当てると、少しだけ彼の口の熱が残っているような気がした。
◇ ◇ ◇
アルグレートがオフスキー公爵家へと返信を送り正式に明日マリアと会う事になった。
そんな中届いたプレゼントボックスなどの贈り物はとにかく量がえげつないので、一旦は応接室のひとつを倉庫代わりに使う事になる。しかし食材系は包装を解き、誰から届いたのか明らかにする為に木製のタグを付けてから厨房にある食料庫へと運び込まれた。
「いやぁ、うちの実家からもたくさんの贈り物が届いていますなぁ」
ツォルグさんが実家であるエイティン公爵家から届いた贈り物の山を感慨深そうに眺めている。
「エイティン家はお人好しが多すぎる家系だからこうなるのは理解できていたが……」
「いやアルグレート、この量はさすがに多くない?」
「オトネの言うとおりだな……しかもこれで半分だからな。もう半分は食料庫にある」
エイティン公爵家の領地は広大な農地が半数を占めているというのもあって、食材の宝庫的な場所でもあるとか。
「今日から大量の食材を消費しなければならない。メイド達には持って帰るようにも伝えておかねば……」
山積みにされた贈り物をアルグレートは腕組みをしてあちこち歩き回りながらも、口元は嬉しそうにほころばせていたのだった。
「アルグレート、嬉しい?」
「もちろん。君は?」
「私も嬉しいよ」
彼の背中に抱き着いて、顔を埋める。もうこんな事が出来るのは残りわずかかもしれないので、今のうちにたくさん甘えておかなければ。
◇ ◇ ◇
「こんにちは。お久しぶりでございます。おふたりともお元気そうで何よりですわ。こちら、ご両親よりお送りするようにとの事でございます」
髪と目の色と同じ赤いドレスを身にまとったマリアが、アルグレートが好きだというポプリが入った箱を応接室の年季の入った机の上にそっと置いた。
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