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act.34
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── さて、今のこの状況をどう打開すべきか。
香倉は意外にのんびりした面持ちで、ゆっくりと考えを巡らせていた。
榊が部屋を出て行って、かれこれ一時間ぐらいたっただろうか。現在も香倉は、両手に手錠をかけられ、ベッドにその身を拘束されたままだ。
さすがに腕が痺れてきて、折角電気刺激のだるさから解放されかけていたのに、また腕の感覚がなくなりつつあった。
榊が部屋にいた時は、彼のやり方が余りにも端的過ぎて腹立たしく、珍しくも苛立ちをそのまま榊にぶつけていたのだが、こうして部屋でひとりきりになると(といっても、部屋の隅には怖いくらいに無表情の男がパイプ椅子に座っているのだが)、さすがに頭も冷めてきていた。
なんだがこうして両手両足を縛られてベッドに転がされていると、おかしさがこみ上げてきそうになる。
まったく、よりにもよって自分の上司に監禁されるとは思ってもみなかった。だが、それもこれも、榊はそれほどまでに焦っていたということなのだろう。
乱暴者で有名な榊だが、彼のやり口はいつも卒がない。だからこそ、今公安のトップとして名実共に警察機構の裏の世界を仕切ってきた男なのだ。
── しかし・・・。
香倉の心は一転曇る。
これでは駄目なのだ。
急場凌ぎの対応では、何の解決にもならない。
現に今、次のターゲットであるはずの自分の元に、“あの男”の手が迫りつつあるやもしれないのだ。
本当のところ、男なのか女なのか。一人なのか、二人なのか。
その存在自体、酷くあやふやな絶対的『悪』。
まるでドライアイスの煙が地表を這うように忍び寄り、標的の足先から心の中に侵入してくる。その様は獰猛で敏捷な肉食獣のようでもあり、軽やかに舞い飛ぶ蝶のようにも思える。
── 狙った獲物は絶対に外さない。
相手がそんな種類の人間であるということは直感で知っていた。そしてそれは決して間違っていないと確信できた。
一人二人と犠牲者が増えるにつけ、“あの男”と櫻井正道を繋ぐラインが次第に色濃くなっていく。おそらく“次の獲物”である自分も、櫻井をおびき出す餌にしか過ぎない。
“あの男”は、万が一その企みが成功したとして、遂に櫻井を手に入れた時、彼をどうするつもりでいるのだろうか。“あの男”が本当に求めているものとは一体・・・?
「君のお姉さんは、今随分と苦しい思いをしていることだろう。身体も辛いだろうし、もちろんそれに伴って、心も辛いはずだ」
富樫老人の言っている意味が、櫻井にはわからなかった。
「それはどういう意味ですか」
櫻井が正直に問うと、富樫老人は再び口を濁した。
「 ── 彼女には、身体的な不完全さあるのだよ。それは先天性のもので、偶然に誘発されたものだ。それについては彼女のせいではないし、そういう星の下の生まれたのは、運命と割り切るしかない」
櫻井は、思わず眉間に皺を寄せた。
── 身体的な不完全さ・・・?
幼い頃、そんなことには全く気づかなかった。
櫻井は昔の記憶を辿る。
あの優しかった姉は、外見的になんらおかしなところはなかったはずだ。
目の前の富樫医師が家に来た時。
奥の部屋のドアが閉められる間から覗いた、姉の悲壮な表情。泣き声。
そこにどんな・・・。
ふと、香倉の耳に足音が響いてきた。
コンクリートの床に鋭く当たるハイヒールの音。
ワンルームマンションの廊下を、カツーン、カツーンと硬質な音を響かせて歩いてくる。
香倉が自由の利かない身体をなんとか捻って顔を起すと、部屋の片隅にいる男が、無表情のまま腰を浮かした。榊に厳しく言いつけられているのだろう。香倉が身体を動かす度、彼は敏感に反応を見せる。
── 両手両足を拘束されてんだ。逃げ出せるはずもないだろう・・・。
心の中で悪態をつきながらも、香倉は男を無視して、廊下の足音に耳を澄ました。
足音は次第に近づいてくる。
ただ単に、このマンションの住人なのかもしれない。
だが、香倉は変な胸騒ぎに襲われた。直感とでも言うべきだろうか。
香倉のいる部屋のドア前にも人がいるようだ。
優れた聴力を持つ香倉の耳に、ドアの向こうでオートマチックタイプの拳銃の弾が装填される音が聞こえた。だが、その音はゆっくりと密かで、ドア前の男が単に警戒している程度の気配しか伺えない。
足音が近づいてくる。その足音は、まるでゆっくりと焦らすように響いている。
ふと、足音が止った。
案の定、この部屋のドア前でだ。
だが、恐ろしく静かだった。
男が声を荒げるでもない。女が悲鳴を上げるでもない。
── いくら耳を澄ましても、そこからは何も伺えない・・・。
流石に、部屋の片隅にいる見張りの刑事も、表の様子がおかしいことに気がついたらしい。男が、怪訝そうな顔をしてドアに近づいた時。
パーンと渇いた破裂音が辺りに響いた。
香倉も、見張りの刑事もビクリと身体を震わせた。
テレビドラマとは違って、本物の拳銃の音は本当にあっけない音がするものだ。
聞き間違え様がなかった。
「木下!!」
見張りの刑事が、反射的にドアを開けてしまう。外に飛び出そうとする刑事の足が、ふいに厚い壁に押されるように不自然に止まった。そしてしばらくドアの外を見つめてから後、じりじりと部屋の中に押し戻されてきた。
香倉は眉を潜めた。
一体どのようなことが起こっているのか全くわからなかった。
やがてドアの影から、真っ赤でタイトなワンピースに身を包んだ背の高い女が、すぅっと現れた。長い髪を、上品に頭の上で纏めた、まるで英国の社交界に登場しそうな雰囲気の女だった。
女が、目の前の刑事を手で軽く押しやり、ベッドの方に顔を向ける。
その美しい微笑み。
真っ赤なルージュも長い付け睫も華奢な生地のドレスも、どれも気品に溢れていて決して下世話ではない。正しく“滅多にお目にかかれない淑女”が目の前にいた。
「カガミナオミ・・・。いや、北原正実」
いつかクラブのエレベーターですれ違って以来の再会だった。
自分が何者であるか香倉が知っていることを悟ると、女は再び艶やかに微笑んで見せた。
無言だが、強烈な圧力を感じさせる微笑だった。
「うう・・・」
今まで無表情だった見張りの刑事が、苦悶の表情を浮かべ、身体を震わせる。
その獣のような呻き声に、女が表情を曇らせた。
いかにも汚らしいものでも見るかのように顔を顰めると、刑事に向き直り、じっと彼の目を睨みつける。
「うわぁ! うわぁ!! 俺が、俺が悪かった!!」
上ずった声・・・それは正しく悲鳴だ・・・を上げた刑事は、自分の懐から拳銃を取り出し、香倉が止めるよりも先に口に銃口を咥え、引き金を引いた。
香倉の目の前で、ピンク色の脳髄が壁に叩きつけられる。
後頭部にぽっかりと穴が空いた刑事は、新たな涙を流しながら床に倒れ込んだ。
香倉はその光景に息を呑む。
── 一体、今ここで、どんな事態が起こっているというのだ。
北原正実が、再びベッドに向き直る。
その顔に少し返り血を浴びた彼女は、目が覚めるような美しさがあった。
「赤を着てきてよかったわ」
自分の手にポツポツとついた血を眺めて、彼女は言った。
香倉はゴクリと唾を飲み込む。
「やはりお前なんだな。全て、お前の仕業だったんだな。“あの男”というのは、カモフラージュか」
香倉がそう言うと、北原正実は軽く溜息をついた。
香倉の発言に少し落胆したというような表情だった。
「まだわかっていないの? 私は、カガミナオミであり、北原正実でもある。そして、“あの男” ── 南川直志でもあるんだ・・・」
女はそう言ってウィッグを取り、床に投げ捨てた。
陶器のような白い肌に、ショートカットの漆黒色の髪が酷く対照的に見えた。
北原正実は、ゆっくりと微笑を浮かべる。
「落ち着いて、よく聞きたまえ。── 君のお姉さんは、両性具有者なのだ」
富樫老人の発言に、櫻井は一瞬ついていけなかった。
「・・・・は・・・?」
戸惑いを見せる櫻井に、富樫老人はゆっくりとした口調で再度言った。 「君のお姉さんは、女でありながら、男でもあるのだ」と。
「それは・・・どういう・・・」
混乱を隠し切れない櫻井の肩に富樫老人は老いた手を置くと、彼を落ち着かせようと優しく撫でた。
「つまり、戸籍上は女性とされているが、染色体のレベルでは君のお姉さんは男性なのだよ」
富樫老人は、枕もとのメモ用紙とペンを取ると、わかりやすいように図で示した。
「彼女の身体には、男性を示す性器はなく、女性の特長である膣や子宮がある。だが卵巣はなく、子宮に繋がっているのは精巣なのだ。精巣も子宮も共に未発達で、男性としても女性としても子どもを作ることはできない。── 生まれた当初はその見た目で女性と判断され、やがて娘の身体のことを知ったご両親も、女の子として育てる道を選んだ。だが当然、身体が成長するにつれ、色々と不具合が出てくるようになる。私はね、君のお姉さんにずっと女性ホルモンを注射しに君の家に通っていたのだよ」
ぐらりと身体が揺れるような気がした。
自分の身体には、なんら変ったところがないために、まるで想像ができなかった。
── 同じ親から生まれた姉弟なのに、なぜそんなことが・・・。
肩で荒く息をする櫻井を見て、富樫老人は枕もとに置いてある水差しから水を注ぎ、櫻井に差し出した。櫻井は素直にそれを受け取ると、一気にそれを飲み干す。
「深呼吸をしなさい」
そう言われ、二、三度大きく息を吸って吐いた。
大分落ち着いてくる。
「すみません・・・。もう大丈夫です」
富樫老人は頷くと、先を続けた。
「先にも言ったが、それは先天的なもので偶然誘発されたことなのだよ。決して遺伝的なものではない。だから君は、普通の身体で生まれてきている。悪い言い方だが、君のお姉さんは、運が悪い事故にあったようなものだ。実際、未発達ながらも、子宮は自分の役割を果たそうとするので、女性特有の月のものもある。だが、子宮が未熟な上にホルモンバランスも崩れるから、痛みも伴うし身体の調子も悪くなるだろう。私が見ていた頃、まだ彼女は幼かったのでさほど症状は酷くなかったが、思春期になれば精巣の動きも活発になるはずだ。おそらく、小さい頃にはなかった男性的特長が出てくるだろう。背が伸び、筋力がつく。多少なりとも髭が生え、声も低くなる。だが、見た目にはより女性に近いし、実際はそのように扱われる。中にはその不自然さの所為で、奇異の目に晒される人もいる。大抵の両性具有者は、この時期に大きな精神的葛藤と苦痛も味わうことになる」
── ああ、なんということだ・・・。
櫻井は、頭を抱えた。
北原家に隠されていた秘密とは、身が裂かれるほどに辛い真実だった。
ただでさえ、その身体に痛みを伴った秘密を抱えていた姉。それなのに彼女は、父親から性的虐待も受けていたのだ。
歪んだ自分の身体。歪んだ父親の愛情。歪んだ家庭・・・。
それにトドメを刺したのは、間違いなく自分の手にあった、あの小さなナイフ。
そのせいで、家庭は崩壊し、姉は手の届かない人となってしまった。
「・・・クソ・・・。何てことだ・・・」
そう吐き出す櫻井の声には涙が滲んでいた。
胸が締めつけられて、それ以上言葉が出なかった。
いくら幼くて自分が知りえなかったこととはいえ、姉が不憫でならなかった。
── 自分はやはり、姉を救えなかったのだ。
自分の過去の過ちが、何ら姉を救うことにならなかったのは、今の現状を見れば明らかだった。
姉が今、どうして冷酷な犯罪に関わるようになったのかはわからなかったが、姉を本当に理解できず、端的な行動に走ってしまった自分にも責任の一端があると思えて仕方がなかった。
香倉は、北原正実の言った言葉が理解できなかった。
香倉の脳裏に、“南川直志”の住んでいた部屋の情景が浮かぶ。
クローゼットにかけられた男ものの服。“女になるため”のたくさんの道具。洗面台には髭剃り用のフォームと剃刀もあった・・・。
さすがの香倉も、頭が混乱してくる。
ただ、自分達がずっと追っていた『カガミナオミ』も、『北原正実』も、『南川直志』も、皆同一人物であり、そして今自分の目の前に立っていることだけは確かだった。
そして、どんな魔術を使うのかもさっぱりわからなかったが、この人間は、ひと睨みしただけで屈強な精神力を持った人間をも死に追いやることができる力を持っているのだ。
香倉の額に冷や汗が流れる。
だが、彼は決して、目の前の“悪”から視線を外さなかった。
「お前の目的はなんだ。なぜこんなことをする。こんなことを繰り返したって、お前が欲しいと思っているものは手に入らないぜ。── 櫻井は、お前のすることに屈するような男じゃない」
香倉が唸るようにそう言うと、北原正実はマジマジと香倉を見つめてきた。
そして珍しいものを見るかのように、目を細める。
なんだか香倉は、頭の奥がゾワゾワするのを感じた。
まるで何もかも見透かされているような感覚があった。危険だと思った。
「・・・ふーん」
北原正実が、小首を傾げる。
「お前は、今までの男達と少し違うようだ。── 少し手ごわい心を持っていて、そして最も罪深い」
その発言に、香倉はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「それは、それは。光栄とでもいうべきかな」
額にじっとりとした嫌な汗を浮き上がらせている香倉だったが、いつものふてぶてしさは決して損なわれていなかった。
そんな香倉の様子を見て、北原正実はハハハと声を上げて笑う。
「なかなか面白い。自分の母親を殺してまで、お前をおびき出した甲斐があったというもの」
香倉は鼻で笑った。
「ウソつけ。本当は、俺のことなんかなくったって、母親を無残に殺してやりたかったんだろう。お前の頭の中の欲望通りにな」
ふと北原正実から表情がなくなる。
「よく研究してるじゃないか。確かにお前は今までの男共と違う。お前は、その汚れた手で私の正道に触れ、こそくにもその心に正道の面影を宿している。── 私はねぇ。私の大切なものを汚されるのが大嫌いだ。だから正道にも、幼い頃から心に鍵をかけておいた。決して女達の汚れた手に惑わされてはいけないよ、と。よもやその隙間を縫って、お前みたいな男が正道を誑かすなんて」
香倉は、北原正実のその言葉を聞いて思わずカッとした。
女性と接触したら気分が悪くなるという櫻井の精神的トラウマは、幼い頃、実の姉によってコントロールされてきたことなのだ。それを己の戒めとして、櫻井は今の今まで、ずっと孤独に生きてこざるをえなかった。こんな理不尽なことがあるか、と思った。
「お前・・・・。あいつは、自分で自分を解放することすらできないんだぞ・・・!! それもお前のせいか・・・!」
北原正実は、せせら笑った。
「それは、あの子が自分で作り上げた壁だ。私は小さな鍵を作ったに過ぎない。そこに分厚い扉と壁と屋根を作ったのは、あの子自身。私ではない」
香倉は自由の利かない身体で、それでも身体を起こそうとした。
本当に、怒りで頭が沸騰しそうだった。
自分でも感情的になるのは危険過ぎると思ったが、絶対的な“悪”を目の前にして、怒りを感じるなという方が無理というものだ。
目の前のこの悪魔は、純粋で生真面目な櫻井の性格を見抜いて、それに付け込んでいるのだ。そして今、彼の心の端から、一本づつ釘を打ち付け、動けないようにしつつある。
そこはまさに、心の牢獄。
人間の弱さに浸け込む、その手口が許せなかった。
「お前は、この世に存在してはならない生き物だ」
今まで、こんな残酷な言葉を口にしたことは一度もなかった。どんな酷い現場でも。どんなに罪深い犯罪者に対しても。
── だが、この目の前の人間だけは・・・。
香倉の言った言葉に、北原正実は「負け犬の遠吼えだ。好きに吼えるがいいさ。安心するといい」と笑う。
そしてベッドサイドに近づくと、自分を睨みつける香倉の髪の毛を鷲づかみにし、こう呟いた。
「お前は、正道をおびき出す餌よ。だから、ゆっくりと壊してあげる・・・」
香倉は意外にのんびりした面持ちで、ゆっくりと考えを巡らせていた。
榊が部屋を出て行って、かれこれ一時間ぐらいたっただろうか。現在も香倉は、両手に手錠をかけられ、ベッドにその身を拘束されたままだ。
さすがに腕が痺れてきて、折角電気刺激のだるさから解放されかけていたのに、また腕の感覚がなくなりつつあった。
榊が部屋にいた時は、彼のやり方が余りにも端的過ぎて腹立たしく、珍しくも苛立ちをそのまま榊にぶつけていたのだが、こうして部屋でひとりきりになると(といっても、部屋の隅には怖いくらいに無表情の男がパイプ椅子に座っているのだが)、さすがに頭も冷めてきていた。
なんだがこうして両手両足を縛られてベッドに転がされていると、おかしさがこみ上げてきそうになる。
まったく、よりにもよって自分の上司に監禁されるとは思ってもみなかった。だが、それもこれも、榊はそれほどまでに焦っていたということなのだろう。
乱暴者で有名な榊だが、彼のやり口はいつも卒がない。だからこそ、今公安のトップとして名実共に警察機構の裏の世界を仕切ってきた男なのだ。
── しかし・・・。
香倉の心は一転曇る。
これでは駄目なのだ。
急場凌ぎの対応では、何の解決にもならない。
現に今、次のターゲットであるはずの自分の元に、“あの男”の手が迫りつつあるやもしれないのだ。
本当のところ、男なのか女なのか。一人なのか、二人なのか。
その存在自体、酷くあやふやな絶対的『悪』。
まるでドライアイスの煙が地表を這うように忍び寄り、標的の足先から心の中に侵入してくる。その様は獰猛で敏捷な肉食獣のようでもあり、軽やかに舞い飛ぶ蝶のようにも思える。
── 狙った獲物は絶対に外さない。
相手がそんな種類の人間であるということは直感で知っていた。そしてそれは決して間違っていないと確信できた。
一人二人と犠牲者が増えるにつけ、“あの男”と櫻井正道を繋ぐラインが次第に色濃くなっていく。おそらく“次の獲物”である自分も、櫻井をおびき出す餌にしか過ぎない。
“あの男”は、万が一その企みが成功したとして、遂に櫻井を手に入れた時、彼をどうするつもりでいるのだろうか。“あの男”が本当に求めているものとは一体・・・?
「君のお姉さんは、今随分と苦しい思いをしていることだろう。身体も辛いだろうし、もちろんそれに伴って、心も辛いはずだ」
富樫老人の言っている意味が、櫻井にはわからなかった。
「それはどういう意味ですか」
櫻井が正直に問うと、富樫老人は再び口を濁した。
「 ── 彼女には、身体的な不完全さあるのだよ。それは先天性のもので、偶然に誘発されたものだ。それについては彼女のせいではないし、そういう星の下の生まれたのは、運命と割り切るしかない」
櫻井は、思わず眉間に皺を寄せた。
── 身体的な不完全さ・・・?
幼い頃、そんなことには全く気づかなかった。
櫻井は昔の記憶を辿る。
あの優しかった姉は、外見的になんらおかしなところはなかったはずだ。
目の前の富樫医師が家に来た時。
奥の部屋のドアが閉められる間から覗いた、姉の悲壮な表情。泣き声。
そこにどんな・・・。
ふと、香倉の耳に足音が響いてきた。
コンクリートの床に鋭く当たるハイヒールの音。
ワンルームマンションの廊下を、カツーン、カツーンと硬質な音を響かせて歩いてくる。
香倉が自由の利かない身体をなんとか捻って顔を起すと、部屋の片隅にいる男が、無表情のまま腰を浮かした。榊に厳しく言いつけられているのだろう。香倉が身体を動かす度、彼は敏感に反応を見せる。
── 両手両足を拘束されてんだ。逃げ出せるはずもないだろう・・・。
心の中で悪態をつきながらも、香倉は男を無視して、廊下の足音に耳を澄ました。
足音は次第に近づいてくる。
ただ単に、このマンションの住人なのかもしれない。
だが、香倉は変な胸騒ぎに襲われた。直感とでも言うべきだろうか。
香倉のいる部屋のドア前にも人がいるようだ。
優れた聴力を持つ香倉の耳に、ドアの向こうでオートマチックタイプの拳銃の弾が装填される音が聞こえた。だが、その音はゆっくりと密かで、ドア前の男が単に警戒している程度の気配しか伺えない。
足音が近づいてくる。その足音は、まるでゆっくりと焦らすように響いている。
ふと、足音が止った。
案の定、この部屋のドア前でだ。
だが、恐ろしく静かだった。
男が声を荒げるでもない。女が悲鳴を上げるでもない。
── いくら耳を澄ましても、そこからは何も伺えない・・・。
流石に、部屋の片隅にいる見張りの刑事も、表の様子がおかしいことに気がついたらしい。男が、怪訝そうな顔をしてドアに近づいた時。
パーンと渇いた破裂音が辺りに響いた。
香倉も、見張りの刑事もビクリと身体を震わせた。
テレビドラマとは違って、本物の拳銃の音は本当にあっけない音がするものだ。
聞き間違え様がなかった。
「木下!!」
見張りの刑事が、反射的にドアを開けてしまう。外に飛び出そうとする刑事の足が、ふいに厚い壁に押されるように不自然に止まった。そしてしばらくドアの外を見つめてから後、じりじりと部屋の中に押し戻されてきた。
香倉は眉を潜めた。
一体どのようなことが起こっているのか全くわからなかった。
やがてドアの影から、真っ赤でタイトなワンピースに身を包んだ背の高い女が、すぅっと現れた。長い髪を、上品に頭の上で纏めた、まるで英国の社交界に登場しそうな雰囲気の女だった。
女が、目の前の刑事を手で軽く押しやり、ベッドの方に顔を向ける。
その美しい微笑み。
真っ赤なルージュも長い付け睫も華奢な生地のドレスも、どれも気品に溢れていて決して下世話ではない。正しく“滅多にお目にかかれない淑女”が目の前にいた。
「カガミナオミ・・・。いや、北原正実」
いつかクラブのエレベーターですれ違って以来の再会だった。
自分が何者であるか香倉が知っていることを悟ると、女は再び艶やかに微笑んで見せた。
無言だが、強烈な圧力を感じさせる微笑だった。
「うう・・・」
今まで無表情だった見張りの刑事が、苦悶の表情を浮かべ、身体を震わせる。
その獣のような呻き声に、女が表情を曇らせた。
いかにも汚らしいものでも見るかのように顔を顰めると、刑事に向き直り、じっと彼の目を睨みつける。
「うわぁ! うわぁ!! 俺が、俺が悪かった!!」
上ずった声・・・それは正しく悲鳴だ・・・を上げた刑事は、自分の懐から拳銃を取り出し、香倉が止めるよりも先に口に銃口を咥え、引き金を引いた。
香倉の目の前で、ピンク色の脳髄が壁に叩きつけられる。
後頭部にぽっかりと穴が空いた刑事は、新たな涙を流しながら床に倒れ込んだ。
香倉はその光景に息を呑む。
── 一体、今ここで、どんな事態が起こっているというのだ。
北原正実が、再びベッドに向き直る。
その顔に少し返り血を浴びた彼女は、目が覚めるような美しさがあった。
「赤を着てきてよかったわ」
自分の手にポツポツとついた血を眺めて、彼女は言った。
香倉はゴクリと唾を飲み込む。
「やはりお前なんだな。全て、お前の仕業だったんだな。“あの男”というのは、カモフラージュか」
香倉がそう言うと、北原正実は軽く溜息をついた。
香倉の発言に少し落胆したというような表情だった。
「まだわかっていないの? 私は、カガミナオミであり、北原正実でもある。そして、“あの男” ── 南川直志でもあるんだ・・・」
女はそう言ってウィッグを取り、床に投げ捨てた。
陶器のような白い肌に、ショートカットの漆黒色の髪が酷く対照的に見えた。
北原正実は、ゆっくりと微笑を浮かべる。
「落ち着いて、よく聞きたまえ。── 君のお姉さんは、両性具有者なのだ」
富樫老人の発言に、櫻井は一瞬ついていけなかった。
「・・・・は・・・?」
戸惑いを見せる櫻井に、富樫老人はゆっくりとした口調で再度言った。 「君のお姉さんは、女でありながら、男でもあるのだ」と。
「それは・・・どういう・・・」
混乱を隠し切れない櫻井の肩に富樫老人は老いた手を置くと、彼を落ち着かせようと優しく撫でた。
「つまり、戸籍上は女性とされているが、染色体のレベルでは君のお姉さんは男性なのだよ」
富樫老人は、枕もとのメモ用紙とペンを取ると、わかりやすいように図で示した。
「彼女の身体には、男性を示す性器はなく、女性の特長である膣や子宮がある。だが卵巣はなく、子宮に繋がっているのは精巣なのだ。精巣も子宮も共に未発達で、男性としても女性としても子どもを作ることはできない。── 生まれた当初はその見た目で女性と判断され、やがて娘の身体のことを知ったご両親も、女の子として育てる道を選んだ。だが当然、身体が成長するにつれ、色々と不具合が出てくるようになる。私はね、君のお姉さんにずっと女性ホルモンを注射しに君の家に通っていたのだよ」
ぐらりと身体が揺れるような気がした。
自分の身体には、なんら変ったところがないために、まるで想像ができなかった。
── 同じ親から生まれた姉弟なのに、なぜそんなことが・・・。
肩で荒く息をする櫻井を見て、富樫老人は枕もとに置いてある水差しから水を注ぎ、櫻井に差し出した。櫻井は素直にそれを受け取ると、一気にそれを飲み干す。
「深呼吸をしなさい」
そう言われ、二、三度大きく息を吸って吐いた。
大分落ち着いてくる。
「すみません・・・。もう大丈夫です」
富樫老人は頷くと、先を続けた。
「先にも言ったが、それは先天的なもので偶然誘発されたことなのだよ。決して遺伝的なものではない。だから君は、普通の身体で生まれてきている。悪い言い方だが、君のお姉さんは、運が悪い事故にあったようなものだ。実際、未発達ながらも、子宮は自分の役割を果たそうとするので、女性特有の月のものもある。だが、子宮が未熟な上にホルモンバランスも崩れるから、痛みも伴うし身体の調子も悪くなるだろう。私が見ていた頃、まだ彼女は幼かったのでさほど症状は酷くなかったが、思春期になれば精巣の動きも活発になるはずだ。おそらく、小さい頃にはなかった男性的特長が出てくるだろう。背が伸び、筋力がつく。多少なりとも髭が生え、声も低くなる。だが、見た目にはより女性に近いし、実際はそのように扱われる。中にはその不自然さの所為で、奇異の目に晒される人もいる。大抵の両性具有者は、この時期に大きな精神的葛藤と苦痛も味わうことになる」
── ああ、なんということだ・・・。
櫻井は、頭を抱えた。
北原家に隠されていた秘密とは、身が裂かれるほどに辛い真実だった。
ただでさえ、その身体に痛みを伴った秘密を抱えていた姉。それなのに彼女は、父親から性的虐待も受けていたのだ。
歪んだ自分の身体。歪んだ父親の愛情。歪んだ家庭・・・。
それにトドメを刺したのは、間違いなく自分の手にあった、あの小さなナイフ。
そのせいで、家庭は崩壊し、姉は手の届かない人となってしまった。
「・・・クソ・・・。何てことだ・・・」
そう吐き出す櫻井の声には涙が滲んでいた。
胸が締めつけられて、それ以上言葉が出なかった。
いくら幼くて自分が知りえなかったこととはいえ、姉が不憫でならなかった。
── 自分はやはり、姉を救えなかったのだ。
自分の過去の過ちが、何ら姉を救うことにならなかったのは、今の現状を見れば明らかだった。
姉が今、どうして冷酷な犯罪に関わるようになったのかはわからなかったが、姉を本当に理解できず、端的な行動に走ってしまった自分にも責任の一端があると思えて仕方がなかった。
香倉は、北原正実の言った言葉が理解できなかった。
香倉の脳裏に、“南川直志”の住んでいた部屋の情景が浮かぶ。
クローゼットにかけられた男ものの服。“女になるため”のたくさんの道具。洗面台には髭剃り用のフォームと剃刀もあった・・・。
さすがの香倉も、頭が混乱してくる。
ただ、自分達がずっと追っていた『カガミナオミ』も、『北原正実』も、『南川直志』も、皆同一人物であり、そして今自分の目の前に立っていることだけは確かだった。
そして、どんな魔術を使うのかもさっぱりわからなかったが、この人間は、ひと睨みしただけで屈強な精神力を持った人間をも死に追いやることができる力を持っているのだ。
香倉の額に冷や汗が流れる。
だが、彼は決して、目の前の“悪”から視線を外さなかった。
「お前の目的はなんだ。なぜこんなことをする。こんなことを繰り返したって、お前が欲しいと思っているものは手に入らないぜ。── 櫻井は、お前のすることに屈するような男じゃない」
香倉が唸るようにそう言うと、北原正実はマジマジと香倉を見つめてきた。
そして珍しいものを見るかのように、目を細める。
なんだか香倉は、頭の奥がゾワゾワするのを感じた。
まるで何もかも見透かされているような感覚があった。危険だと思った。
「・・・ふーん」
北原正実が、小首を傾げる。
「お前は、今までの男達と少し違うようだ。── 少し手ごわい心を持っていて、そして最も罪深い」
その発言に、香倉はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「それは、それは。光栄とでもいうべきかな」
額にじっとりとした嫌な汗を浮き上がらせている香倉だったが、いつものふてぶてしさは決して損なわれていなかった。
そんな香倉の様子を見て、北原正実はハハハと声を上げて笑う。
「なかなか面白い。自分の母親を殺してまで、お前をおびき出した甲斐があったというもの」
香倉は鼻で笑った。
「ウソつけ。本当は、俺のことなんかなくったって、母親を無残に殺してやりたかったんだろう。お前の頭の中の欲望通りにな」
ふと北原正実から表情がなくなる。
「よく研究してるじゃないか。確かにお前は今までの男共と違う。お前は、その汚れた手で私の正道に触れ、こそくにもその心に正道の面影を宿している。── 私はねぇ。私の大切なものを汚されるのが大嫌いだ。だから正道にも、幼い頃から心に鍵をかけておいた。決して女達の汚れた手に惑わされてはいけないよ、と。よもやその隙間を縫って、お前みたいな男が正道を誑かすなんて」
香倉は、北原正実のその言葉を聞いて思わずカッとした。
女性と接触したら気分が悪くなるという櫻井の精神的トラウマは、幼い頃、実の姉によってコントロールされてきたことなのだ。それを己の戒めとして、櫻井は今の今まで、ずっと孤独に生きてこざるをえなかった。こんな理不尽なことがあるか、と思った。
「お前・・・・。あいつは、自分で自分を解放することすらできないんだぞ・・・!! それもお前のせいか・・・!」
北原正実は、せせら笑った。
「それは、あの子が自分で作り上げた壁だ。私は小さな鍵を作ったに過ぎない。そこに分厚い扉と壁と屋根を作ったのは、あの子自身。私ではない」
香倉は自由の利かない身体で、それでも身体を起こそうとした。
本当に、怒りで頭が沸騰しそうだった。
自分でも感情的になるのは危険過ぎると思ったが、絶対的な“悪”を目の前にして、怒りを感じるなという方が無理というものだ。
目の前のこの悪魔は、純粋で生真面目な櫻井の性格を見抜いて、それに付け込んでいるのだ。そして今、彼の心の端から、一本づつ釘を打ち付け、動けないようにしつつある。
そこはまさに、心の牢獄。
人間の弱さに浸け込む、その手口が許せなかった。
「お前は、この世に存在してはならない生き物だ」
今まで、こんな残酷な言葉を口にしたことは一度もなかった。どんな酷い現場でも。どんなに罪深い犯罪者に対しても。
── だが、この目の前の人間だけは・・・。
香倉の言った言葉に、北原正実は「負け犬の遠吼えだ。好きに吼えるがいいさ。安心するといい」と笑う。
そしてベッドサイドに近づくと、自分を睨みつける香倉の髪の毛を鷲づかみにし、こう呟いた。
「お前は、正道をおびき出す餌よ。だから、ゆっくりと壊してあげる・・・」
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