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第111話 浴衣お披露目会
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※年内の投稿は本日が最後となります。次回は1月の4か5日に。それでは皆様、良いお年を!
「ただいま~」
王都から戻った優志が店のドアを開けると、
「ぬおおおおおおおおおおおおっ!!!」
「はああああああああああああっ!!!」
店内から男女の雄叫びが。
見ると、ダズとエミリーが例の卓球台ですでにプレイを始めている。まだネットを張っていない未完成品なのだが、そんなことはお構いなしに二人とも熱中している。
「あ、おかえりなさい、ユージさん」
優志が返って来たことに気づいたリウィルが駆け寄る。
「これ……一体何があったんだ?」
「実は、朝一番にダンジョンへ入る前に風呂をいただきたいとダズさんたちの一行が来店されたんですけど……卓球台に興味を示されて、ミツルちゃんが簡単にルールを説明したらあんな状況に」
「やれやれ……あんなに熱くなったらダンジョンに入る前に燃え尽きるぞ」
優志は小さく息を吐いて熱戦を繰り広げている二人のもとへ。
よく見ると、台の近くにはルール説明をした美弦がオロオロとダズとエミリーへ交互に視線を送っていた。
「なんだか凄く盛り上がっているね。まあ、この世界の人たちにも受け入れられそうでよかったよ」
「あ、優志さん!」
優志を見つけた美弦はすがるような目をしていた。
「お二人を止めないと、このままじゃ」
「体力を消耗しきるな。――おーい、二人とも。その辺にしとけよ」
そう声をかけると、
「む?」
「うん?」
ダズとエミリーの手が止まる。
そこでようやく冷静さを取り戻したのか、両者はハッとなってラケットを台に置き、
「ついつい夢中になってしまった」
「ただの遊びと思っていたが、なかなかに奥が深いな」
腕を組んで遊んだ感想を述べる二人。
しかし、その後ろではパーティーの面々が「やっと終わったか」と半ばあきれ顔をしていたのだった。
ダズの一行が風呂場へ向かう頃になると、徐々に客足も増えて行った。
「今日こそはお宝をゲットするぜ!」
「今回は南側を攻めてみようか」
「あの地下水が湧き出ている近辺はどうも怪しい」
午前の客の大半はダンジョンへと潜る冒険者たち。
これが、もうしばらく経つと、朝市を終えた商人たちで賑わう。
午後はフォーブの街の人たちが来店し、夕方以降はダンジョンから帰還した冒険者たちで再び賑わう。
これが、この店の一日の客の典型的な流れだ。
「さて、と。ダズたちが風呂から上がったらこいつを早速着てもらおうかな」
「あ、もしかして、浴衣ができたんですか?」
「まあね」
美弦も優志から浴衣の計画を聞いていたので、その出来を楽しみにしていたのだ。
瞳を輝かせている美弦にせっつかれて、優志はテーブルにロバーツの店から持ってきた浴衣を広げた。
「わあ!」
「綺麗な柄ですね」
「こっちは女性用だ」
華やかさを感じさせながらもしつこくない品のあるシンプルさが光るデザイン。そして男性用は、シックな濃紺をベースとしていて落ち着いた雰囲気だ。
「これがユカタですか……」
初めて見る異世界の衣服――浴衣に、リウィルも興味津々のようだった。
なので、
「リウィル、ちょっと着てみるか?」
「えっ! いいんですか!」
パッと花が咲いたように明るくなるリウィルの顔。
どうやら着てみたいという気持ちは思ったより強かったようだ。
――と、いうわけで、リウィルに着替えてもらうために浴衣を渡すと、一目散に自室へと向かってダッシュしていった。
ちょうど同じ頃に風呂から上がったダズたちが登場。
優志は事情を説明して浴衣の着心地テストに参加してくれないかと依頼する。
「おまえさんの頼みとあっては無下にできんな」
ダズたちはこれを快諾。
早速、着替えてもらうために残りの浴衣を渡した。
数分後。
「凄く着心地がいいです!」
最初に浴衣姿で登場したのはリウィル。
想像していた通り、とても良く似合っていた。続いて、
「軽い素材だな」
「ふむ。だが戦闘には向かない気がする」
「その格好でダンジョンへ潜る気だったのか、エミリー」
ダズとエミリーが登場。
こちらも良く似合っている。
それに、着心地に関しても良好な反応が得られた。
ただ、こうして見ていると、欧米から日本の温泉旅館に観光でやって来た外国人観光客感が凄い。そのうち、適当な日本語を並べたTシャツでも販売したら売れるんじゃないだろうかと優志はなんとなく思う。
ともかく、浴衣のお披露目会は大成功に終わった。
◇◇◇
ダズたちを見送ると、すでに時刻は昼頃となっていた。
「俺たちもちょっと一休みしようか」
優志が声をかけると、リウィルと美弦も仕事の手を一旦止めてお昼ご飯の準備にかかる。
すると、
「うん?」
優志の自室から何やら音がする。あれは、
「コールの魔鉱石? ガレッタさんからの連絡か?」
こんな昼間にガレッタが自分を呼び出すことはまずない。そもそも、この時間帯はガレッタ自身も仕事中のはず。神官長という立場から多忙であるはずのガレッタが、私用で自分を呼び出すとはあの真面目な性格からしても考えにくい。
「……何かあったのか?」
緊急性を感じた優志は急いで自室へ。
果たして、ガレッタの用件とは?
「ただいま~」
王都から戻った優志が店のドアを開けると、
「ぬおおおおおおおおおおおおっ!!!」
「はああああああああああああっ!!!」
店内から男女の雄叫びが。
見ると、ダズとエミリーが例の卓球台ですでにプレイを始めている。まだネットを張っていない未完成品なのだが、そんなことはお構いなしに二人とも熱中している。
「あ、おかえりなさい、ユージさん」
優志が返って来たことに気づいたリウィルが駆け寄る。
「これ……一体何があったんだ?」
「実は、朝一番にダンジョンへ入る前に風呂をいただきたいとダズさんたちの一行が来店されたんですけど……卓球台に興味を示されて、ミツルちゃんが簡単にルールを説明したらあんな状況に」
「やれやれ……あんなに熱くなったらダンジョンに入る前に燃え尽きるぞ」
優志は小さく息を吐いて熱戦を繰り広げている二人のもとへ。
よく見ると、台の近くにはルール説明をした美弦がオロオロとダズとエミリーへ交互に視線を送っていた。
「なんだか凄く盛り上がっているね。まあ、この世界の人たちにも受け入れられそうでよかったよ」
「あ、優志さん!」
優志を見つけた美弦はすがるような目をしていた。
「お二人を止めないと、このままじゃ」
「体力を消耗しきるな。――おーい、二人とも。その辺にしとけよ」
そう声をかけると、
「む?」
「うん?」
ダズとエミリーの手が止まる。
そこでようやく冷静さを取り戻したのか、両者はハッとなってラケットを台に置き、
「ついつい夢中になってしまった」
「ただの遊びと思っていたが、なかなかに奥が深いな」
腕を組んで遊んだ感想を述べる二人。
しかし、その後ろではパーティーの面々が「やっと終わったか」と半ばあきれ顔をしていたのだった。
ダズの一行が風呂場へ向かう頃になると、徐々に客足も増えて行った。
「今日こそはお宝をゲットするぜ!」
「今回は南側を攻めてみようか」
「あの地下水が湧き出ている近辺はどうも怪しい」
午前の客の大半はダンジョンへと潜る冒険者たち。
これが、もうしばらく経つと、朝市を終えた商人たちで賑わう。
午後はフォーブの街の人たちが来店し、夕方以降はダンジョンから帰還した冒険者たちで再び賑わう。
これが、この店の一日の客の典型的な流れだ。
「さて、と。ダズたちが風呂から上がったらこいつを早速着てもらおうかな」
「あ、もしかして、浴衣ができたんですか?」
「まあね」
美弦も優志から浴衣の計画を聞いていたので、その出来を楽しみにしていたのだ。
瞳を輝かせている美弦にせっつかれて、優志はテーブルにロバーツの店から持ってきた浴衣を広げた。
「わあ!」
「綺麗な柄ですね」
「こっちは女性用だ」
華やかさを感じさせながらもしつこくない品のあるシンプルさが光るデザイン。そして男性用は、シックな濃紺をベースとしていて落ち着いた雰囲気だ。
「これがユカタですか……」
初めて見る異世界の衣服――浴衣に、リウィルも興味津々のようだった。
なので、
「リウィル、ちょっと着てみるか?」
「えっ! いいんですか!」
パッと花が咲いたように明るくなるリウィルの顔。
どうやら着てみたいという気持ちは思ったより強かったようだ。
――と、いうわけで、リウィルに着替えてもらうために浴衣を渡すと、一目散に自室へと向かってダッシュしていった。
ちょうど同じ頃に風呂から上がったダズたちが登場。
優志は事情を説明して浴衣の着心地テストに参加してくれないかと依頼する。
「おまえさんの頼みとあっては無下にできんな」
ダズたちはこれを快諾。
早速、着替えてもらうために残りの浴衣を渡した。
数分後。
「凄く着心地がいいです!」
最初に浴衣姿で登場したのはリウィル。
想像していた通り、とても良く似合っていた。続いて、
「軽い素材だな」
「ふむ。だが戦闘には向かない気がする」
「その格好でダンジョンへ潜る気だったのか、エミリー」
ダズとエミリーが登場。
こちらも良く似合っている。
それに、着心地に関しても良好な反応が得られた。
ただ、こうして見ていると、欧米から日本の温泉旅館に観光でやって来た外国人観光客感が凄い。そのうち、適当な日本語を並べたTシャツでも販売したら売れるんじゃないだろうかと優志はなんとなく思う。
ともかく、浴衣のお披露目会は大成功に終わった。
◇◇◇
ダズたちを見送ると、すでに時刻は昼頃となっていた。
「俺たちもちょっと一休みしようか」
優志が声をかけると、リウィルと美弦も仕事の手を一旦止めてお昼ご飯の準備にかかる。
すると、
「うん?」
優志の自室から何やら音がする。あれは、
「コールの魔鉱石? ガレッタさんからの連絡か?」
こんな昼間にガレッタが自分を呼び出すことはまずない。そもそも、この時間帯はガレッタ自身も仕事中のはず。神官長という立場から多忙であるはずのガレッタが、私用で自分を呼び出すとはあの真面目な性格からしても考えにくい。
「……何かあったのか?」
緊急性を感じた優志は急いで自室へ。
果たして、ガレッタの用件とは?
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