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少年期
#33 7度目の魔法祭
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それはそれは良い天候の中俺の人生としては7回目の魔法祭が開催された。
今年の魔法祭も相変わらず、見渡す限り人、人……たまに獣人、というような風景が広がっている。
クルーゼによる出店は年を追うごとに進化していき、今では魔法祭切手の人気店となっている。
クルーゼに出店を頼んだ、隣の武器屋もそれで大盛況……とは言えないが、儲けは出ている。
そして俺とターシャは、というと、毎年のように警備の仕事をしている。
流石に過去6年もやっていれば慣れが出てくるし、そもそも魔法祭で悪さをする奴らなんてスリぐらいしかいない……ミダムがおかしかっただけなのだ。
一時間後、エキシビジョンマッチがあるが、ターシャとは戦い慣れているため、前程緊張はない。
「なぁ、今日のエキシビジョンどうするよ」
「どうするもこうするも、いつも通りすれば良いんじゃないの?」
「まぁそれでいいよな」
「どしたの急に」
「ん~いつも同じような展開だから、ちょっと変えたほうが面白いんじゃないかなってさ」
「ふむふむ、で?どう変えるの?」
「俺も剣を使う」
「……え?」
俺の口から飛び出たその言葉にターシャは呆けた声を出す。
「なんだよ、そんなびっくりすることないだろ」
「いや、だって、レイくん剣術は?そもそもの剣は?」
「剣術はないけど、剣はここにあるぞ」
そう言い俺はアイテムボックスを指指す。
するとターシャは少し子首を傾げてから口を開く。
「でもアイテムボックスって剣を入れる程の容量にするのって魔力かなり必要じゃない?」
「めっちゃ持っていかれるな、だからちょっと魔術回路をイジって容量をでかくした、まぁどっか調整をミスったのか小物は入れれなくなったけど」
「あぁ~だから図書館に魔術回路変換理論なんていう面倒くさそうな理論の本を借りに行ってたのね」
「め、面倒くさいって……まぁ確かに面倒くさかったけどさ」
そうこうしているうちに闘技場の近くまで来てしまった。
「もう先に入っとく?」
「そうだな、どうせ問題なんて起きないだろうし」
そうして俺とターシャはかなり早くに闘技場の控室に向かったのであった。
____________________________________
闘技場に続々と人が集まってくる、どうやら今年は初等部、中等部共に注目のカードなため、多くの客がどちらに行くか考えあぐねているようだ。
そんな中で俺達の試合を選んでくれたことはとても光栄なことだ。
その見に来てくれた人の為にも全力で戦おう。
そう俺は心に決めて、会場の円形のステージに向かう。
実況のアナウンスが熱く試合前にフロアを盛り上げ、俺とターシャを呼ぶ。
俺とターシャが入場すると会場の声援は熱気に包まれて、フロアを更に熱くする。
そして、俺とターシャは向かい合い、お互いに構える。
その構えの姿に会場がざわめく。
その理由は当たり前、毎回毎回魔法のみの戦闘スタイルを取り続けてきた俺がアイテムボックスに手を突っ込み、剣を取り出し、構えたのだ。
その立ち姿にターシャは少し驚いたような顔をして、口を開く。
「へぇ~ホントに使うんだ」
「そらそうだろ、もう宣言しちゃったんだし」
「それもそうだね……それじゃ」
するとターシャは姿勢を更に低くし、こう言う。
「試させてもらおうかな」
その瞬間、開始のゴングが鳴らされる。
そして、そのゴングが鳴り終わる前にターシャは肉薄してくる。
恐ろしいスピードではあるが、伊達に何回もエキシビジョンマッチを体験していない。
俺は真正面から攻撃を受け止める。
ガンッという重い鉄同士がぶつかり合う音が周囲に響く。
そして、鍔迫り合いなどする暇もなく俺はターシャの剣を薙ぎ払い、吹き飛ばす。
「ハッ!!」
俺は少し右斜め気味に走りながら右手の剣を脇腹から斜めに斬り上げる。
しかし、その攻撃はターシャに届くことなく、彼女の剣により受け止められ、“刃の半ばから切断された”。
「えっ!?」
切断した本人のターシャから呆けた声が発せられる。
そしてその一瞬の隙に俺はバックステップをしながら「4番」と呟き、4番と呼ばれる小型ナイフを投擲する。
「なに!?」
ターシャはそのナイフをかろうじて叩き落とし、攻撃を防ぐ。
落とされたナイフはこれまたバキバキと折れる。
なぜこんな早く折れるのか、ターシャとしては全く理解できない。
「まだまだ!8番!」
次は巨大な大剣、それはターシャの真上から振り下ろされ、脳天を直撃せんと、接近してくる。
「んぅ!!」
ターシャはなんとか剣を上に構えて受け止める。
その受け止めた衝撃により、砂岩の地面にヒビが走る。
そして、砂岩のヒビと共に大剣にもヒビが入る。
そこで、ターシャは察したような表情を浮かべる。
俺は大剣にヒビが入ったことを確認し、前に回りながら、ターシャの上を通り抜ける。
するとターシャは口を開く。
「レイくん……これ全部“失敗作”でしょ」
「あ、バレた?」
いやぁ、処分に困ってさ……と訳を話す暇もなくターシャは肉薄してくる。
「全く、びっくりしたよ!」
「驚いてくれたようで、良かったよ」
「全くね!ッ!!」
話している間でもターシャの猛攻は続く。
こうも攻撃を受けるたびに武器がバキバキと折れていくのを見ていると、己の技術のなさが露呈しているような感じがして、少し……落ち込む。
そして、俺の百数本はあった剣のストックがあと十数本になろうとしたとき、“それ”は起きた。
初等部が戦闘している闘技場から通常の魔法ではありえない大きさの爆炎と煙が巻き上がっていた。
これが短くもあり、長くもある、最悪の戦いの始まりの狼煙となるのだった。
今年の魔法祭も相変わらず、見渡す限り人、人……たまに獣人、というような風景が広がっている。
クルーゼによる出店は年を追うごとに進化していき、今では魔法祭切手の人気店となっている。
クルーゼに出店を頼んだ、隣の武器屋もそれで大盛況……とは言えないが、儲けは出ている。
そして俺とターシャは、というと、毎年のように警備の仕事をしている。
流石に過去6年もやっていれば慣れが出てくるし、そもそも魔法祭で悪さをする奴らなんてスリぐらいしかいない……ミダムがおかしかっただけなのだ。
一時間後、エキシビジョンマッチがあるが、ターシャとは戦い慣れているため、前程緊張はない。
「なぁ、今日のエキシビジョンどうするよ」
「どうするもこうするも、いつも通りすれば良いんじゃないの?」
「まぁそれでいいよな」
「どしたの急に」
「ん~いつも同じような展開だから、ちょっと変えたほうが面白いんじゃないかなってさ」
「ふむふむ、で?どう変えるの?」
「俺も剣を使う」
「……え?」
俺の口から飛び出たその言葉にターシャは呆けた声を出す。
「なんだよ、そんなびっくりすることないだろ」
「いや、だって、レイくん剣術は?そもそもの剣は?」
「剣術はないけど、剣はここにあるぞ」
そう言い俺はアイテムボックスを指指す。
するとターシャは少し子首を傾げてから口を開く。
「でもアイテムボックスって剣を入れる程の容量にするのって魔力かなり必要じゃない?」
「めっちゃ持っていかれるな、だからちょっと魔術回路をイジって容量をでかくした、まぁどっか調整をミスったのか小物は入れれなくなったけど」
「あぁ~だから図書館に魔術回路変換理論なんていう面倒くさそうな理論の本を借りに行ってたのね」
「め、面倒くさいって……まぁ確かに面倒くさかったけどさ」
そうこうしているうちに闘技場の近くまで来てしまった。
「もう先に入っとく?」
「そうだな、どうせ問題なんて起きないだろうし」
そうして俺とターシャはかなり早くに闘技場の控室に向かったのであった。
____________________________________
闘技場に続々と人が集まってくる、どうやら今年は初等部、中等部共に注目のカードなため、多くの客がどちらに行くか考えあぐねているようだ。
そんな中で俺達の試合を選んでくれたことはとても光栄なことだ。
その見に来てくれた人の為にも全力で戦おう。
そう俺は心に決めて、会場の円形のステージに向かう。
実況のアナウンスが熱く試合前にフロアを盛り上げ、俺とターシャを呼ぶ。
俺とターシャが入場すると会場の声援は熱気に包まれて、フロアを更に熱くする。
そして、俺とターシャは向かい合い、お互いに構える。
その構えの姿に会場がざわめく。
その理由は当たり前、毎回毎回魔法のみの戦闘スタイルを取り続けてきた俺がアイテムボックスに手を突っ込み、剣を取り出し、構えたのだ。
その立ち姿にターシャは少し驚いたような顔をして、口を開く。
「へぇ~ホントに使うんだ」
「そらそうだろ、もう宣言しちゃったんだし」
「それもそうだね……それじゃ」
するとターシャは姿勢を更に低くし、こう言う。
「試させてもらおうかな」
その瞬間、開始のゴングが鳴らされる。
そして、そのゴングが鳴り終わる前にターシャは肉薄してくる。
恐ろしいスピードではあるが、伊達に何回もエキシビジョンマッチを体験していない。
俺は真正面から攻撃を受け止める。
ガンッという重い鉄同士がぶつかり合う音が周囲に響く。
そして、鍔迫り合いなどする暇もなく俺はターシャの剣を薙ぎ払い、吹き飛ばす。
「ハッ!!」
俺は少し右斜め気味に走りながら右手の剣を脇腹から斜めに斬り上げる。
しかし、その攻撃はターシャに届くことなく、彼女の剣により受け止められ、“刃の半ばから切断された”。
「えっ!?」
切断した本人のターシャから呆けた声が発せられる。
そしてその一瞬の隙に俺はバックステップをしながら「4番」と呟き、4番と呼ばれる小型ナイフを投擲する。
「なに!?」
ターシャはそのナイフをかろうじて叩き落とし、攻撃を防ぐ。
落とされたナイフはこれまたバキバキと折れる。
なぜこんな早く折れるのか、ターシャとしては全く理解できない。
「まだまだ!8番!」
次は巨大な大剣、それはターシャの真上から振り下ろされ、脳天を直撃せんと、接近してくる。
「んぅ!!」
ターシャはなんとか剣を上に構えて受け止める。
その受け止めた衝撃により、砂岩の地面にヒビが走る。
そして、砂岩のヒビと共に大剣にもヒビが入る。
そこで、ターシャは察したような表情を浮かべる。
俺は大剣にヒビが入ったことを確認し、前に回りながら、ターシャの上を通り抜ける。
するとターシャは口を開く。
「レイくん……これ全部“失敗作”でしょ」
「あ、バレた?」
いやぁ、処分に困ってさ……と訳を話す暇もなくターシャは肉薄してくる。
「全く、びっくりしたよ!」
「驚いてくれたようで、良かったよ」
「全くね!ッ!!」
話している間でもターシャの猛攻は続く。
こうも攻撃を受けるたびに武器がバキバキと折れていくのを見ていると、己の技術のなさが露呈しているような感じがして、少し……落ち込む。
そして、俺の百数本はあった剣のストックがあと十数本になろうとしたとき、“それ”は起きた。
初等部が戦闘している闘技場から通常の魔法ではありえない大きさの爆炎と煙が巻き上がっていた。
これが短くもあり、長くもある、最悪の戦いの始まりの狼煙となるのだった。
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