異世界では悔いの残らないよう頑張ります!!

建月 創士

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少年期

#34 始まりの始まり 後編

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 世界は色を変えた。
 大地に唐突として現れた赤黒い魔法陣により色を“変えられた”の方が正しい表現だろう。
 その魔法陣により、大気は濁り、空は曇天となり、そして野鳥は鳴き叫び、空へと羽を広げる。
 そして、クルシュも顔を歪ませ、狂気を孕んだ笑みを浮かべる。
 そして、その整った顔立ちからは想像出来ない程の表情で空へと思いを馳せる。

「あぁ……!!この時を、この時を……僕は!!いいや!!俺は!!魂をこの勇者の器の身体に受肉されたあの日から!!この時を待っていたんだ……あぁ……あぁ、“魔王様”……アッハァ……俺は……今日、あなたのもとへ、勇者を、あの憎き最弱最強の女勇者の力を届けに参ります……俺があの少年の役を果たし……そして、もう一度、暗黒の時代を……アハ、アハハハ!!!ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 会場の人間は彼の狂気に溢れた発言を理解できず、唖然とし、口を開けている、中にはくだらない冗談だ、笑っている者すらいる。
 
「あなた達は我が魔王復活の為の最初の犠牲者となります……光栄に思ってくださいね」

 瞬間、観客の姿はそこにはなかった、いや“観客の形をしたものはそこにはいなかった”、あるものは四肢がもぎ取られ、悲鳴を上げているものや、あるものは皮膚が焼けただれ観客席と一体化してしまっているものもいる。

 会場一帯に断末魔が、蔓延し、響き渡り、そして、すべてが死を告げる。

 原因はわかっている、だが、わからない、そんな魔法陣などないはずだから、誰も知り得ないから、まず、理解することを許されないから。
 ただ一つわかっていること、それは、この魔法陣はただの魔法陣ではない、当たり前のことだが、むしろそれしかわからない、他を知ったとしてもすぐにその後死人と化すため意味などない。
 この魔法陣はただひたすらに、そこに存在している生命という生命を蹂躙するためだけに作られた魔法陣。
 生命を滅ぼすことのみを許された魔法陣。

 先程までは押していたレイラも今となっては両腕を両断され、肩にはポッカリと穴が空いてしまっている。
 息はしているが、意識はなく、あと数分で死に絶えることであろう。
 クルシュはその体に近づき力一杯踏みつける、レイラの口から血と何かが混ざりあったものが飛び出る、声など出ない、出るものは血やぐちゃぐちゃになった臓器のみだ。
 それをクルシュは歪んだ表情で何度も何度も何度も踏みつける、その顔は恍惚の表情に歪んでいる、歪んだ表情に無邪気さを孕ませたその表情はまさに狂気の具現化と言っていいだろう。

「あ~来ましたね~?レイ先輩、ターシャ先輩……あはぁ……」

 そしてクルシュは新しい玩具を見つけた子供のようにカタカタと笑い続けるのだった。
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