異世界では悔いの残らないよう頑張ります!!

建月 創士

文字の大きさ
11 / 41
幼年期

#8 すぐ近くに敵は居る

しおりを挟む
「ハッ!?」

俺は翌日自室で目を覚ました。
えっと…あれ?なんで俺部屋の中に居るんだろ…思い出せないな…

「んんあ…?あ、あ、レ、レ、レ、レイ君お、おは、おは、おはよう」
「お、おう、おはよう」
「…昨日のこと、覚えてないよね?」
「昨日のこと?」

昨日のこと昨日のこと…

記憶がフラッシュバックするように巻き戻る。

「あっ!思い出した!」
「あ~もう忘れて~!」

ターシャが俺の頭をポカポカと叩く。
慌てている姿も可愛いのう…尊い…。

「痛いって、了解、わかった!忘れるから!」

もちろん下着の記憶は綺麗に脳内保存させていただきました。

「本当?本当に本当?」
「本当だよ、っていうかなんで俺とターシャが同じ部屋に?」

ターシャは確かに、と疑問を浮かべるようにして小首を傾げる。

「う~ん、先生に聞いてみないとわかんないね」

先生という単語に俺は何か引っ掛かるものを感じた。
そして、良く考えを巡らせると一つの約束を思い出す。

「先生、先生…あ~ッ!!ヤッベ!昨日兄さんと放課後会う約束があったの、忘れてたッ!!」

やらかした、と頭を抱える。
謝ろう、今日会ったら謝って事情を説明しよう。

そして、約束を守れなかった一つの要因を作ってしまったことに、罪悪感を感じているのか、ターシャが申し訳なさそうに謝る。

「ゴメンね、レイくん…」
「い、いや着替えてるタイミングで入った俺も悪いよ、そもそもの理由は先生にあるしね」
「う、うん」
「よ~し、んじゃ学校行くか」
「そうだね、それと…さ、レイくんは私と同じ部屋は嫌?」

突然だな、と俺は思った。
もちろん、こんな美少女と同じ部屋で過ごせるなら、願ったり叶ったりというものだ。
しかし、ターシャのことを考えるとそうはいかないだろう、まだ年端もいかない少女であるが、男と同じ部屋というのは嫌だと思うからである。
そのことを整理して俺は口を開く。

「嫌だなんてそんなそんな、そんなんじゃなくて、ターシャの方が俺と同じ部屋が嫌かなって思ってさ」
「そう…なんだ、私はね?レイくんと同じ部屋でもなんともないよ」
「えっ…」

驚いた、普通女子は男子と相部屋なんて嫌がるもんじゃないのか。

「なんで?」

驚きから、ついそんなことに聞いてしまった。
その問いにターシャは少し考えてこう答えた。

「なんでって…ほら、レイくんと同じ部屋でも何もなさそうでしょ?」

と純粋無垢な笑顔をターシャは浮かべる。
なるほど、嫌がる以前にそもそも男として見られてなかったか。

「はぁ~…」

つい溜め息がこぼれた。
そして、今日から俺は男としてのプライドを代償に美少女と同じ部屋で寝れるという権利を手に入れた。
…生前の俺だったら泣いて喜んだことだろう。
____________________________________

さっさと部屋で支度を済ませ、ターシャと一緒に教室へ向かう。
ドアを開け、教室に入るや否やクラスの女子勢が俺とターシャを囲み、全員でこう告げた。

「「「「「二人同じ部屋って本当?!」」」」」

どこでその情報を…っ!!
とりあえず何か言わないとな。

「えっt「そうだよ~」

俺が言い訳をするよりも早く、ターシャが肯定する。
瞬間、教室の空気が凍りついた。
目の前の女子はもちろん、さっきまで楽しく会話していたはずの男衆も目から光を無くし俺を見つめていた。
まるで「は?俺たち全員ルームメイト男なんだけど…ふざけてんの」と問いかけてきているようだ。
っていうか聞いた奴らが静かにどうするんだ、ってかこの空気どうにかしないと。
ちなみにこの空気にした張本人は状況がつかめず、首をかしげている。
とりあえず言い訳ぐらいさせてもらおう。

「一つ言って良い?部屋割りを考えたのは兄さん《先生》だから、なんか文句があるならそっちに言ってね?」

どうやらうまく納得させることが出来たようで、それぞれ席に戻っていった。
うん、我ながら良くできた言い訳だ。
すまない、兄さん。
貴方のことは忘れないよ…

席に座ると、クルーゼがケケケと笑いながら話しかけてきた。

「全く…最高だったな…ケケケ」
「こっちは最悪だよ、ってかお前もこっちを冷めた目で見てただろうが…」
「そらね?羨ましいしな、だってあんな可愛い女の子と同じ部屋だぞ?誰でも同じ部屋になりてぇよ」

この世界の子供はマセてるな…困ったもんだ。
そうこうしているうちに兄さん《先生》が入ってきて、ホームルームが始まった。
そして、ホームルームが終わったあと、兄さんの周りに生徒が集まったのは言うまでもないだろう。
_____________________________________

兄さんを追いかけ俺は教室を出る。
昨日の件を謝るのと部屋割りの件を聞くためだ。

「兄さ…じゃなくて、ニム先生」
「んぁ?あぁレイかどうした?」
「昨日はすみませんでした、約束の場所に行けなくて…寮でちょっとあって…」
「あ、あぁ!お前、マジで兄さん深夜まで待ったんだからな!!なにやってたんだよ!!」

あ、この人絶対忘れてたんだな、反応でわかるわ。

「…ターシャと相部屋でターシャの着替え中に部屋に入っちゃったんですよ…それで魔法打たれて、壁に頭ぶつけて、朝まで気絶してたんですよ…」
「ははっ、それは災難だったな」
「ははっ、それは災難だったな、じゃないですよ!部屋割り考えたの先生《アンタ》でしょ!?なんで男子と女子同じ部屋にしてんの!?」
「そりゃあ…」

兄さんは数秒考えて、あっそうだ!的な顔を浮かべ、こう俺に言った。

「主席と次席なんだから親睦ぐらい深めないといけないだろ?」
「アンタ、それ今考えましたよね!?バレバレだからね?!」
「アハハ…でも親睦を深めないといけないのは本当だぞ?いざってときに呼吸合わせれないじゃん?」
「いざってときってなんですか…まぁターシャは嫌がってなかったから別に俺は良いんですけど、今度からはそういうことをするなら一言くらい言って下さい、そうじゃないと少し困ります」
「オーケーオーケー、んじゃ俺授業の準備あるから、じゃあまたあとで~」

そうして、俺の頭を少し撫でて先生は歩いていった。
______________________________________

正直言うと授業はクソつまらなかった。
先生がつまらない訳じゃない。
内容が分かりきってしまっているからだ、受験前に勉強したところ…まぁ受験の問題では出なかったが…それがそのまま授業として出てくるため、とても面白くない。
隣のクルーゼはというと、手遊びをしていた。

居るよね~わかんなくなったら、すぐ手遊びしだす奴~俺の生前の中学にも居たわ。
勉強わかんないとか言われても俺知らねぇからな。
まぁ、一応教えてはやるが。

そして、つまらない授業を5時間受けて、放課後になった。

「レイ~寮に帰ろうぜ~」

クルーゼが話しかけてきた。
とてもありがたい申し出ではあるが俺は用事があるから、と断る。

「オーケー、分かったじゃあな」
「おう」

クルーゼが教室を出ていってから、俺は行動を始める。

「さぁてと行くかねぇ…」

そうして、俺は昨日もらったメモを片手に町へ繰り出したのだった。
______________________________________

「ここ…か」

それは町の裏路地にあった。
看板すらなくて、全くわからなかったが、中から出てきている熱い熱気で、ここは工房だとわかった。

「…お邪魔します…って暑っ!?」

あまりの暑さに俺は慌てて氷属性魔法で体をコーティングする。
そして、中には小さなおじさん達が鉄を打っていた。
土人《ドワーフ》属だ。
この世界において、創造神の次に物を作ることに特化した種族、普段は各々の山奥の村で生活しているはず…なのに、なんでこんなところに?

「驚いたか?レイ」

突然、肩に手を置かれ驚く。
声の主はニム兄さんだった。

「そんなにびっくりするなよ、それで?どうだ?"うち"の工房は」
「あぁ…すごいです、全部設備が整ってる…ん?"うち"?」
「あぁそうだ、ここは俺の鍛冶師育成教室だ、お~い、お前ら!差し入れ持ってきたぞ~」

兄さんの呼び掛けに土人属の人はこちらを向き、挨拶やお礼を言ってくる、そして、その言葉に必ず入っているのは[先生]という単語だった。

「つまり魔法学校の教師とここの教師を掛け持ちしている…と?」
「あぁその通りだ、もちろん許可は取ってあるから違法じゃないぞ、そしてな…」

と兄さんは学校に居るときには考えられないほど饒舌な喋りで、ここの説明をしてくれた。
目も気のせいかも知れないが輝いてるように見えた。
…学校でもこれぐらい真剣になってくれないかな。
つい苦笑いがこぼれた。

「…なんだよ、わかったか?」
「わかりました、親切にありがとうございます」
「おいおい、学校ならまだしも、ここで敬語はやめろ、背筋がムズムズする」
「あぁ…うん、わかった」

そして俺は本題を切り出す。

「で?大体予想はつくけど…ここでなにするの?」

そして、兄さんは満面の笑みを浮かべこう言った。

「ここでお前には、教師をしてもらいたい」

…いや、そっちかよ。
てか、俺一応まだ6歳なんですけど!?

こうして、レイ=グラント(6)の無茶ぶり教師生活が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました! 裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。 ※2019年10月23日 完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

処理中です...