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第二章 人形姫はくじけずに1浪で学園生活を再スタートする!
第二話
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前の領主の所業は教会経由で伝えられ、所領は没収となった。
一旦教会の領地となり委託統治ということでアネットが統治することになる。
そう、貴族籍を剥奪されたアネットは学園を卒業して貴族籍を復活させないと直轄地として運営できないのだ。
アネットの人形が開拓した農地は放棄することとなった。
生贄の犠牲となった者はアネットの農地を活かして墓を作った。そのうえで魔法陣を消し、石であの忌まわしい地下室を埋めることになった。アネットはもうあの家には住みたくないようだ。当たり前だが。
一段落して……アネットは校長室、つまり聖女室に呼ばれた。
「大丈夫です。入学後も寮で領地運営してる貴族もいますから安心してください。簿記は分かりますか?」
びくっとする。聖女様、複式簿記とか知らないよ!
「知りません……」
「だからあれほど勉強しなさいと言ったのに……粉飾決算とか犯罪ですよ?」
「せ、聖女様……税務会計って委託できるんですよね?」
「出来ますが、どのみち提出された決算を読めなかったら意味ありません」
◆◇◆◇
アネットは泣いた。なぜ自分が上級課程に内部推薦入試で不合格だったのか嫌というほどよくわかったからである。単に魔法科目がダメだったからじゃない。簿記と言った貴族に必要な知識もまるでダメだったからだ。だからこの国は貴族位剥奪制度があるのだ。逆に平民は教会推薦で魔導学院に入学でき、卒業すると1代限りで貴族になれる。彼らは裁判官や弁護士や神父と言った職に就く。貴族にとって魔導学院は落ちこぼれ学校だけど平民にとってはあこがれの学校なのだ。平民の必死な努力に負けてしまったし、国とは、社会とはそうやって維持してるのだと痛いほどよくわかった。
――雨!
ずぶ濡れになってもアネットはお構いなしだ。校門を出ようとするその時……。
「何、ずぶ濡れになってるんだい。アネット?」
「フェルナンデス」
「また泣いてるのか。しょうがないな。ちょっとお茶でも飲みながら聞こうか……涙の訳を」
◆◇◆◇
「簿記ね」
フェルナンデスはレインコートを掛け、優雅に学園内の店「グランダル亭」で紅茶を飲む。
「そんなことで悩んでたのか」
「そんなことって……。それはあなたにとっては簡単かもしれないけど」
「違う。帳簿をつけるのは執事の仕事だ。もしそんなことで威張ってる貴族が居たら貴族として四流だ」
「え?」
「厳密に言うと執事の付けた帳簿が間違ってないか、不正が無いかどうかを見抜くために簿記って科目はある」
「でもそれじゃ……私」
「だから簿記の知識が無い人間でもわかるように執事に経営状態が分かるよう別の資料を作成するよう命令する」
「え……」
「貴族ってのは人の上に立つ存在だ。人に使われる存在じゃない。ただ修正申告とか食らうなよ。事実上の脱税だ」
「私、執事を雇うほど豊かじゃない。それに在学中は寮に居るのよ」
「だから、バイトを雇う」
「バイト?」
「寮に居ながら経営する貴族はバイトを雇うんだ」
「何でそういうこと聖女様は教えてくれないの!?」
「甘えるなって事だよ。ここ、教育機関だし。それに経営状態が筒抜けだし悪意のある学生貴族バイトだと敵国に内通しちゃうよ。聖女様に言われなかったかい?」
「そうだよね……」
「そこでギルド所属の学生を雇う。ギルドは裏切り者に対しては厳しい。場合によっては暗殺依頼も来るくらいだ。よその国に行ってもギルドはあるのだから逃げられない」
「出来るの? そんなこと。会計事務所に委託じゃなくて?」
「会計事務所ってのはむしろ監査で威力を発揮するもんだよ」
「どうやって?」
「じゃあ、ギルドに行こうか」
一旦教会の領地となり委託統治ということでアネットが統治することになる。
そう、貴族籍を剥奪されたアネットは学園を卒業して貴族籍を復活させないと直轄地として運営できないのだ。
アネットの人形が開拓した農地は放棄することとなった。
生贄の犠牲となった者はアネットの農地を活かして墓を作った。そのうえで魔法陣を消し、石であの忌まわしい地下室を埋めることになった。アネットはもうあの家には住みたくないようだ。当たり前だが。
一段落して……アネットは校長室、つまり聖女室に呼ばれた。
「大丈夫です。入学後も寮で領地運営してる貴族もいますから安心してください。簿記は分かりますか?」
びくっとする。聖女様、複式簿記とか知らないよ!
「知りません……」
「だからあれほど勉強しなさいと言ったのに……粉飾決算とか犯罪ですよ?」
「せ、聖女様……税務会計って委託できるんですよね?」
「出来ますが、どのみち提出された決算を読めなかったら意味ありません」
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アネットは泣いた。なぜ自分が上級課程に内部推薦入試で不合格だったのか嫌というほどよくわかったからである。単に魔法科目がダメだったからじゃない。簿記と言った貴族に必要な知識もまるでダメだったからだ。だからこの国は貴族位剥奪制度があるのだ。逆に平民は教会推薦で魔導学院に入学でき、卒業すると1代限りで貴族になれる。彼らは裁判官や弁護士や神父と言った職に就く。貴族にとって魔導学院は落ちこぼれ学校だけど平民にとってはあこがれの学校なのだ。平民の必死な努力に負けてしまったし、国とは、社会とはそうやって維持してるのだと痛いほどよくわかった。
――雨!
ずぶ濡れになってもアネットはお構いなしだ。校門を出ようとするその時……。
「何、ずぶ濡れになってるんだい。アネット?」
「フェルナンデス」
「また泣いてるのか。しょうがないな。ちょっとお茶でも飲みながら聞こうか……涙の訳を」
◆◇◆◇
「簿記ね」
フェルナンデスはレインコートを掛け、優雅に学園内の店「グランダル亭」で紅茶を飲む。
「そんなことで悩んでたのか」
「そんなことって……。それはあなたにとっては簡単かもしれないけど」
「違う。帳簿をつけるのは執事の仕事だ。もしそんなことで威張ってる貴族が居たら貴族として四流だ」
「え?」
「厳密に言うと執事の付けた帳簿が間違ってないか、不正が無いかどうかを見抜くために簿記って科目はある」
「でもそれじゃ……私」
「だから簿記の知識が無い人間でもわかるように執事に経営状態が分かるよう別の資料を作成するよう命令する」
「え……」
「貴族ってのは人の上に立つ存在だ。人に使われる存在じゃない。ただ修正申告とか食らうなよ。事実上の脱税だ」
「私、執事を雇うほど豊かじゃない。それに在学中は寮に居るのよ」
「だから、バイトを雇う」
「バイト?」
「寮に居ながら経営する貴族はバイトを雇うんだ」
「何でそういうこと聖女様は教えてくれないの!?」
「甘えるなって事だよ。ここ、教育機関だし。それに経営状態が筒抜けだし悪意のある学生貴族バイトだと敵国に内通しちゃうよ。聖女様に言われなかったかい?」
「そうだよね……」
「そこでギルド所属の学生を雇う。ギルドは裏切り者に対しては厳しい。場合によっては暗殺依頼も来るくらいだ。よその国に行ってもギルドはあるのだから逃げられない」
「出来るの? そんなこと。会計事務所に委託じゃなくて?」
「会計事務所ってのはむしろ監査で威力を発揮するもんだよ」
「どうやって?」
「じゃあ、ギルドに行こうか」
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