君は私の盟友ではなかったのか?

佑々木(うさぎ)

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仄暗い部屋の中で

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 目が覚めたら、私は薄暗闇にいた。

「どこだ、ここは」

 小窓が一つあるが、天井付近にあるため、外を窺い知ることはできない。
 月が室内を青白く照らしているのだけは見て取れた。
 私はその部屋のベッドの上に、仰向けで寝かされているらしい。
 とにかく、起き上がって周囲を見回そう。
 私は、シーツに手を突こうとした。
 だが、両手が頭上で固定されているようで、動くことができない。

「どういう、ことだ」

 必死に力を入れてみても、手枷はビクともしない。
 ベッドが軋んだ音を立てるだけで、緩む気配はなかった。
 よく見れば、足にもいましめがある。肩幅に開いた状態で、ベッドに縛り付けられている。
 何が起きているのかさっぱりわからず、私は人を呼ぶことにした。

「誰かいないのか!」

 普段、こんなに大きな声を張り上げることはなく、部屋にこだまする自分の声に余計に不安が募る。このまま誰も来なければ、私はどうなってしまうのか。

 先程から、喉はひりつくほどに渇いている。
 せめて水だけでも飲みたい。
 なぜこれほどまでに喉が渇いているのか。
 記憶を辿って私は思い至った。

「そうだ、私は結婚の儀の帰りに──」

 幼馴染であるジャネスが、隣国の姫と結婚したのだ。
 私はその儀のために宮廷内の大ホールに行った。




「おめでとう、ジャネス。君が結婚するとはね」

 同じ幼学舎に通っていた人間の内、ジャネスは一番小柄で奥手だった。
 そのジャネスが、3人の仲間の中で一番乗りで結婚することになるなんて、誰が想像しただろうか。

「本当だよ。俺かシエルが先かと思っていた」

 悪友のライアンも、私の言葉に同意して、ジャネスの背中をぽんと叩く。

「おめでとう。幸せにな」

 そして、その後はジャネスと新婦のダンスを、ライアンと共に見守った。

「お似合いだね」

 私が言うと、ライアンは手にしていたグラスをあおる。
 そういえば、さっきからライアンはワインを飲んでばかりいる。
 きっとこれで5杯目だ。

「飲み過ぎではないか?」
「別に。俺はお前と違って酒に弱くはない」

 私が止めるのも聞かずにライアンは飲み続け、酒に酔い始めると私にも勧めてきた。

「ほら、飲めよシエル。ジャネスの祝いなんだぞ」
「我々が酒を飲んだところで、ジャネスの祝いにはならないだろう」

 ライアンの言い分に呆れながらも、私は付き合って飲んだ。
 それから──。
 二人で馬車に乗って、やしきに向かったところまでは覚えている。




「そうだ。ライアンは、どうしたんだ」

 同じ馬車に乗っていたのだから、彼なら何か知っているはずだ。
 そもそも、ここに姿がないのなら、ライアンも別室に捕まっているのか。
 嫌な予感に胸がざわめき、私は息をひそめた。

 するとそこで、部屋の奥にある扉が、ぎいと音を立てて開く。
 革靴の底が石を打つ乾いた音。次いで、扉が閉まる大きな音が聞こえた。
 こちらに近付いてくる足音に身を強張らせる。
 その人物は、私の傍まで来ると、ベッドの縁に手を突いた。
 上から覗き込むその顔に、私は息を呑む。
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