20 / 26
一八章 成婚の日
しおりを挟む
ノウラと永都。
ふたりの結婚式の日がやってきた。
いくら、永都が『ウサギ小屋』と呼ばれていた頃の日本家屋程度の居住空間で生活している庶民派の国王とはいえ、王は王。式自体は各国の要人とプレスとを招いた盛大なものだった。
永都本人はそんな大々的な結婚式など趣味ではなく、さんざん侍従長のゾマスに愚痴ったものである。
「なにも、そんな盛大な式にすることはないだろう。身内だけで簡単にすませればいいじゃないか」
苦虫を噛みつぶしながら言う――その態度は、新婦のはしゃぎっぷりについていけない新郎のソレそのものだった――永都に対し、ゾマスはあきれ返って答えた。
「なにをおっしゃるのです。一国の主ともあろうお方が妃を娶るのですよ。国をあげて行わずにどうするのですか」
国民も一緒になってお祝いすることを楽しみにしているのですよ。その期待を裏切るおつもりですか?
そう畳みかけられて、永都はますます苦虫を噛みつぶした。
「しかし、七海とのときだって、数人の仲間とあげただけのささやかなものだったし……」
永都はあくまでも渋る。そこには、単に『大仰なのはきらいだ!』という思いだけではなく『自分は二三歳の娘の相手にふさわしい存在ではない……』という引け目もある。それに、七海に対してしてやれなかったのに……という思いも。
ゾマスもそのことは充分に察していた。察していたからこそ、あえて力強く勧めた。
「七海殿下のときとは事情がちがいます。あのときは、地球回遊国家はまだ活動をはじめたばかりの貧乏所帯。国として認められていないばかりか、日々の生活さえままならずに、みんなで海に釣り糸を垂れていたではありませんか。
いまはちがいます。地球回遊国家は人口一億人を超える大国家であり、国際社会からも正式な国家として承認されています。その地球回遊国家の国王の結婚式に、各国の要人を招待しないとなれば外交問題です。『自分たちをないがしろにしている!』との怒りを買い、これまで積み重ねてきた友好関係すべてが壊れることになりかねませんぞ」
言われて、永都はみたび、苦虫を噛みつぶした。
いくら、気乗りしないとはいえ『外交問題』とまで言われては国王としての責任上、それ以上、文句をつけるわけにも行かない。
結局、永都も各国の要人とプレスを招いての盛大な式に賛同することになった。式の段取りはすべてノウラとゾマスを中心に行われて、永都は終始、蚊帳の外。
「……いったい、誰の式なんだ?」
と、憮然として呟く羽目になっていたが。
それでも、とにかく、式は盛大に執り行われた。
観光客用の挙式専用船を使っての海上結婚式。南洋の日差しを浴びて、潮風に吹かれ、波を蹴立てて進む氷の船での挙式。
各国の要人にプレス、さらに、抽選に当たった一般国民を集め、楽団が楽器をかき鳴らしながら練り歩き、派手な衣装の芸人たちが踊りあかす。
まさに、カーニバル。
人々の装いといい、華やかさといい、そう呼ぶにふさわしい式。子どものオモチャ箱をひっくり返して、中身を世界中にぶちまけたような、底抜けな賑やかさがそこにあった。
それは確かに、地球回遊国家の国王の挙式としてふさわしいものだった。
その底抜けの賑やかさに包まれながら、新郎と新婦はバージンロードの前で合流した。日本人とアラブ人の結婚だが、式自体はキリスト教式、プロテスタント流である。
国際色豊かと言えばその通りなのだろうが、やはり、違和感はぬぐえない。
日本人である永都にとっては、キリスト教式の結婚式はむしろ自然なものであるからいいとして、ノウラはナフード王国の生まれ。ナフード王国はイスラム教国であり当然、その国の王女として生まれたノウラもイスラム教徒のはず。それが、キリスト教式の結婚式というのは……。
一応、永都はその点に関してノウラに尋ねたのである。
「君はイスラム教徒のはずだろう。キリスト教式の結婚式でいいのか?」と。
ノウラは自信に満ちた笑みを浮かべると、堂々と言った。
「かまいません。わたしが結婚の誓いを立てる相手は神ではなく、永都陛下おひとりですから」
神などどこの誰でもかまわない、と言うわけだ。なんとも、ノウラらしい豪快な答えだった。
その肝の据わり方には、さすがに永都も感心した。
「なんで、生まれついてのイスラム教徒のはずなのに、ここまで奔放に育ったんだ?」
という疑問は感じたが、
「まあ、ノウラだからいいか」
で、すんでしまうことであるし。
ともかく、式ははじまった。
プロテスタントの流儀に従って、牧師が結婚式の開式を宣言する。
まずは。永都がひとりで礼拝堂に入場。左右に立ち並ぶ出席者たちの視線に見守られながらバージンロードを歩いて、祭壇前に到着。その場で、新婦の入場をまつ。
そして、新婦のノウラがやってくる。
侍従長のゾマスにその手を引かれて。
本来、新婦の手を引くのは父親の役目。しかし、今回、ノウラの父であるアブドゥル・ラティフは出席していない。自分の代理として『第一王女』たる娘、ズフラを派遣したのみで自身はやってきていない。ついでに言うと、ノウラ自身もいまさら、アブドゥル・ラティフを父親として扱う気などない。
と言うわけで、侍従長のゾマスがその代理を務めることになったのだ。
ゾマスのエスコートを受けてウエディングドレスに身を包んだノウラがバージンロードの上をしずしずと歩んでいく。その美しさに左右に並ぶ出席者のなかからため息がもれる。
ただひとり、例外がいた。
ノウラの妹、幼い頃からノウラのものはすべてほしがり、自分のものにしてきた妹。『世界一の美女』という称号をノウラから奪いとり、婚約者であったアブドゥル・アルバルを奪い、『第一王女』の立場までも奪った妹。
その愛する妹が他の出席者たちに混じって自分を見ている。口元に笑みを浮かべて。他人が見れば姉の晴れ舞台を無邪気に喜ぶ姿に見えたことだろう。ズフラの擬態はそれほどに完璧だった。だが――。
生まれた頃からずっと一緒に生きてきたノウラにははっきりとわかった。その愛らしい笑顔の裏に潜む底知れない悪意、すべてを自分のものにしてやろうという邪さが。
――永都陛下まで、わたしから奪うつもり?
ノウラは心に思った。
それは、宣戦布告の鐘の音も同じだった。
――いままで、あなたがわたしから奪ったものは、わたしにとってはどうでもいいものばかりだった。名ばかりの婚約者も、第一王女の座も、わたしには必要なかった。むしろ、あなたが奪ってくれたおかげで自由になれてありがたいぐらい。だからこそ、いままではなにも言わずにいた。でも……。
と、ノウラはバージンロードの上を歩きながら思う。
――永都陛下は別。永都陛下まで奪うつもりなら、そのときは容赦しない。
断固たる決意を込めてそう思う。もっとも、すでにナフード王国の次期王妃の座を手に入れたズフラがそれ以上、人の婚約者をほしがるとまではさすがに考えられないのだが。
ノウラはゾマスに手を引かれながらバージンロードの上を歩む。
永都のもとへ歩いていく。
ニコリ、と、永都を見て微笑む。
このときばかりはノウラもズフラのことを忘れた。心からの、永都への愛を込めた笑みだった。
ドクン、と、永都の心臓が鳴った。
世界で二番目の美貌。
世界中からそう称されてきたノウラ。そのノウラがウエディングドレスに身を包み、笑顔を向けてくる。世界中でただひとり、自分だけに向けてくるのだ。その姿を見れば永都も男。
――きれいだ。
反射的にそう思った。
無意識のうちに、口に出してそう言いそうになっていた。それをとどめたのは永都自身の思い。
――おれはノウラの夫として、ふさわしい歳ではない。それに、おれには……。
その思いが新婦に対して言うべき言葉を言わせなかった。
ノウラはそんな永都の思いに気がついていただろうか。笑顔のままゾマスの側をはなれると、そっと永都によりそった。
心臓の高鳴りを感じながら、永都は新婦とふたり、よりそって牧師に向きなおった。
二三歳の新婦と、すでに七〇過ぎの新郎。
歳の差、五〇以上のカップル。
しかし、そこに違和感はなかった。王としての正装に身を包んだ永都は背筋もビシッと伸び、表情は引きしまり、実年齢より二〇歳も若く見える。そこにいるのは無力な年寄りなどではない。王の威厳に満ちた、苦みばしったおとなの男だった。
そして、ノウラ。
世界で二番目の美貌。
そう称される美女。しかし、ウエディングドレスに身を包んだいまのノウラを見れば一〇〇人が一〇〇人、それは嘘だと思うだろう。
――かの人こそ、世界一の美女だ。
誰もがそう思うにちがいない。
万人にそう思わせ、納得させるだけのその美しさ。太陽のように自らが光を放ち、輝いているとしか思えないその姿。
その威光はすべての理屈を越えていま、この場で繰り広げられている光景が正しいのだと、すべての人間に納得させるものだった。
王の威厳に満ちたおとなの男と世界一の美女。
あまりにも似つかわしいふたりによる、堂々たる結婚式だった。
そして、礼拝堂のなかに賛美歌が流れはじめた。
ふたりの結婚式の日がやってきた。
いくら、永都が『ウサギ小屋』と呼ばれていた頃の日本家屋程度の居住空間で生活している庶民派の国王とはいえ、王は王。式自体は各国の要人とプレスとを招いた盛大なものだった。
永都本人はそんな大々的な結婚式など趣味ではなく、さんざん侍従長のゾマスに愚痴ったものである。
「なにも、そんな盛大な式にすることはないだろう。身内だけで簡単にすませればいいじゃないか」
苦虫を噛みつぶしながら言う――その態度は、新婦のはしゃぎっぷりについていけない新郎のソレそのものだった――永都に対し、ゾマスはあきれ返って答えた。
「なにをおっしゃるのです。一国の主ともあろうお方が妃を娶るのですよ。国をあげて行わずにどうするのですか」
国民も一緒になってお祝いすることを楽しみにしているのですよ。その期待を裏切るおつもりですか?
そう畳みかけられて、永都はますます苦虫を噛みつぶした。
「しかし、七海とのときだって、数人の仲間とあげただけのささやかなものだったし……」
永都はあくまでも渋る。そこには、単に『大仰なのはきらいだ!』という思いだけではなく『自分は二三歳の娘の相手にふさわしい存在ではない……』という引け目もある。それに、七海に対してしてやれなかったのに……という思いも。
ゾマスもそのことは充分に察していた。察していたからこそ、あえて力強く勧めた。
「七海殿下のときとは事情がちがいます。あのときは、地球回遊国家はまだ活動をはじめたばかりの貧乏所帯。国として認められていないばかりか、日々の生活さえままならずに、みんなで海に釣り糸を垂れていたではありませんか。
いまはちがいます。地球回遊国家は人口一億人を超える大国家であり、国際社会からも正式な国家として承認されています。その地球回遊国家の国王の結婚式に、各国の要人を招待しないとなれば外交問題です。『自分たちをないがしろにしている!』との怒りを買い、これまで積み重ねてきた友好関係すべてが壊れることになりかねませんぞ」
言われて、永都はみたび、苦虫を噛みつぶした。
いくら、気乗りしないとはいえ『外交問題』とまで言われては国王としての責任上、それ以上、文句をつけるわけにも行かない。
結局、永都も各国の要人とプレスを招いての盛大な式に賛同することになった。式の段取りはすべてノウラとゾマスを中心に行われて、永都は終始、蚊帳の外。
「……いったい、誰の式なんだ?」
と、憮然として呟く羽目になっていたが。
それでも、とにかく、式は盛大に執り行われた。
観光客用の挙式専用船を使っての海上結婚式。南洋の日差しを浴びて、潮風に吹かれ、波を蹴立てて進む氷の船での挙式。
各国の要人にプレス、さらに、抽選に当たった一般国民を集め、楽団が楽器をかき鳴らしながら練り歩き、派手な衣装の芸人たちが踊りあかす。
まさに、カーニバル。
人々の装いといい、華やかさといい、そう呼ぶにふさわしい式。子どものオモチャ箱をひっくり返して、中身を世界中にぶちまけたような、底抜けな賑やかさがそこにあった。
それは確かに、地球回遊国家の国王の挙式としてふさわしいものだった。
その底抜けの賑やかさに包まれながら、新郎と新婦はバージンロードの前で合流した。日本人とアラブ人の結婚だが、式自体はキリスト教式、プロテスタント流である。
国際色豊かと言えばその通りなのだろうが、やはり、違和感はぬぐえない。
日本人である永都にとっては、キリスト教式の結婚式はむしろ自然なものであるからいいとして、ノウラはナフード王国の生まれ。ナフード王国はイスラム教国であり当然、その国の王女として生まれたノウラもイスラム教徒のはず。それが、キリスト教式の結婚式というのは……。
一応、永都はその点に関してノウラに尋ねたのである。
「君はイスラム教徒のはずだろう。キリスト教式の結婚式でいいのか?」と。
ノウラは自信に満ちた笑みを浮かべると、堂々と言った。
「かまいません。わたしが結婚の誓いを立てる相手は神ではなく、永都陛下おひとりですから」
神などどこの誰でもかまわない、と言うわけだ。なんとも、ノウラらしい豪快な答えだった。
その肝の据わり方には、さすがに永都も感心した。
「なんで、生まれついてのイスラム教徒のはずなのに、ここまで奔放に育ったんだ?」
という疑問は感じたが、
「まあ、ノウラだからいいか」
で、すんでしまうことであるし。
ともかく、式ははじまった。
プロテスタントの流儀に従って、牧師が結婚式の開式を宣言する。
まずは。永都がひとりで礼拝堂に入場。左右に立ち並ぶ出席者たちの視線に見守られながらバージンロードを歩いて、祭壇前に到着。その場で、新婦の入場をまつ。
そして、新婦のノウラがやってくる。
侍従長のゾマスにその手を引かれて。
本来、新婦の手を引くのは父親の役目。しかし、今回、ノウラの父であるアブドゥル・ラティフは出席していない。自分の代理として『第一王女』たる娘、ズフラを派遣したのみで自身はやってきていない。ついでに言うと、ノウラ自身もいまさら、アブドゥル・ラティフを父親として扱う気などない。
と言うわけで、侍従長のゾマスがその代理を務めることになったのだ。
ゾマスのエスコートを受けてウエディングドレスに身を包んだノウラがバージンロードの上をしずしずと歩んでいく。その美しさに左右に並ぶ出席者のなかからため息がもれる。
ただひとり、例外がいた。
ノウラの妹、幼い頃からノウラのものはすべてほしがり、自分のものにしてきた妹。『世界一の美女』という称号をノウラから奪いとり、婚約者であったアブドゥル・アルバルを奪い、『第一王女』の立場までも奪った妹。
その愛する妹が他の出席者たちに混じって自分を見ている。口元に笑みを浮かべて。他人が見れば姉の晴れ舞台を無邪気に喜ぶ姿に見えたことだろう。ズフラの擬態はそれほどに完璧だった。だが――。
生まれた頃からずっと一緒に生きてきたノウラにははっきりとわかった。その愛らしい笑顔の裏に潜む底知れない悪意、すべてを自分のものにしてやろうという邪さが。
――永都陛下まで、わたしから奪うつもり?
ノウラは心に思った。
それは、宣戦布告の鐘の音も同じだった。
――いままで、あなたがわたしから奪ったものは、わたしにとってはどうでもいいものばかりだった。名ばかりの婚約者も、第一王女の座も、わたしには必要なかった。むしろ、あなたが奪ってくれたおかげで自由になれてありがたいぐらい。だからこそ、いままではなにも言わずにいた。でも……。
と、ノウラはバージンロードの上を歩きながら思う。
――永都陛下は別。永都陛下まで奪うつもりなら、そのときは容赦しない。
断固たる決意を込めてそう思う。もっとも、すでにナフード王国の次期王妃の座を手に入れたズフラがそれ以上、人の婚約者をほしがるとまではさすがに考えられないのだが。
ノウラはゾマスに手を引かれながらバージンロードの上を歩む。
永都のもとへ歩いていく。
ニコリ、と、永都を見て微笑む。
このときばかりはノウラもズフラのことを忘れた。心からの、永都への愛を込めた笑みだった。
ドクン、と、永都の心臓が鳴った。
世界で二番目の美貌。
世界中からそう称されてきたノウラ。そのノウラがウエディングドレスに身を包み、笑顔を向けてくる。世界中でただひとり、自分だけに向けてくるのだ。その姿を見れば永都も男。
――きれいだ。
反射的にそう思った。
無意識のうちに、口に出してそう言いそうになっていた。それをとどめたのは永都自身の思い。
――おれはノウラの夫として、ふさわしい歳ではない。それに、おれには……。
その思いが新婦に対して言うべき言葉を言わせなかった。
ノウラはそんな永都の思いに気がついていただろうか。笑顔のままゾマスの側をはなれると、そっと永都によりそった。
心臓の高鳴りを感じながら、永都は新婦とふたり、よりそって牧師に向きなおった。
二三歳の新婦と、すでに七〇過ぎの新郎。
歳の差、五〇以上のカップル。
しかし、そこに違和感はなかった。王としての正装に身を包んだ永都は背筋もビシッと伸び、表情は引きしまり、実年齢より二〇歳も若く見える。そこにいるのは無力な年寄りなどではない。王の威厳に満ちた、苦みばしったおとなの男だった。
そして、ノウラ。
世界で二番目の美貌。
そう称される美女。しかし、ウエディングドレスに身を包んだいまのノウラを見れば一〇〇人が一〇〇人、それは嘘だと思うだろう。
――かの人こそ、世界一の美女だ。
誰もがそう思うにちがいない。
万人にそう思わせ、納得させるだけのその美しさ。太陽のように自らが光を放ち、輝いているとしか思えないその姿。
その威光はすべての理屈を越えていま、この場で繰り広げられている光景が正しいのだと、すべての人間に納得させるものだった。
王の威厳に満ちたおとなの男と世界一の美女。
あまりにも似つかわしいふたりによる、堂々たる結婚式だった。
そして、礼拝堂のなかに賛美歌が流れはじめた。
0
あなたにおすすめの小説
「無能な妻」と蔑まれた令嬢は、離婚後に隣国の王子に溺愛されました。
腐ったバナナ
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、魔力を持たないという理由で、夫である侯爵エドガーから無能な妻と蔑まれる日々を送っていた。
魔力至上主義の貴族社会で価値を見いだされないことに絶望したアリアンナは、ついに離婚を決断。
多額の慰謝料と引き換えに、無能な妻という足枷を捨て、自由な平民として辺境へと旅立つ。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。
子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。
――彼女が現れるまでは。
二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。
それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
後悔などありません。あなたのことは愛していないので。
あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」
婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。
理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。
証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。
初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。
だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。
静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。
「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」
【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。
この作品は
「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。
どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる