勇者太郎の冒険【小説版】

ヨシダ

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~第二章~

第12話 勇者、真剣勝負!

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ハチャメチャすぎる勇者アカデミーに嫌気がさした太郎は、こんな学校辞めてやろうと思っていた。しかし何故か同じクラスで最強の勇者と噂される武田・ゴンザレス・jrと勝負する羽目になったのだった。

太郎とゴンザレス、そして網走先生に勇者クラスの生徒達は、二人の決闘を見守る為体育館へと移動した。
普段はバスケやバレーボールなんかを楽しむような体育館だが、今日ばっかりは決闘場である。

(勝てっこね~よ。ぜってー勝てっこね~よ……)

そう思いながらも、一対一の真剣勝負をしなければならない太郎。不安と恐怖で今日もバッチリ背中が丸まっている。
一方やる気満々のゴンザレスはしっかり鎧まで着こんで戦闘モードである。
最初は勝負と言っても大した事ないと思っていたが、ゴンザレスのやる気はMAXのようだ。

(自分ばっかりあんな鎧着こんでずるいなあ)

「ところで勇者イサモノ、剣と盾はどうした?」

手ぶらの太郎に網走先生が問う。

「あの、剣も盾も無いんですけど」

「は?舐めとんのか!」

舐めているのではない。確かに家を出る時はおさがりの剣と盾を貰ったが、通学中に盗まれてしまったのである。

「しゃーない今回だけ特別に貸したるわ」

網走先生は学校の備品である剣と盾を貸してくれた。

「せ、先生……。なんかめちゃくちゃ重いんですけど」

他のクラスメートのようにいかつい男に合わせて作ってあるのだろう。小柄な太郎には少々重すぎる装備のようだ。

「文句言うなや。じゃあ行くで。ファイッ!」

網走先生の勇ましい掛け声と同時に、戦いの火ぶたは切って落とされた!
と、思ったが、両者全く動かない。これを見てざわざわする生徒達。

「おい、勇者イサモノはともかくゴンザレスも動かねえぞ。馬鹿馬鹿し過ぎてやる気がなくなったのか?」

ゴンザレスはと言うと、重すぎて剣を持ち上げる事すらできない太郎を見下した目で見詰めていた。

(ふん、やっぱり思ってた通り軟弱な野郎だぜ。これじゃあ一発で倒せそうだが、少しくらい遊んでやるか)

ゴンザレスの思惑などつゆ知らず、太郎はやっとの思いで剣を振り上げた。
しかしこんなヘロヘロな動きではまともに剣を振る事すらできない……と、思った次の瞬間!(※某番組風にお読みください)

「ったあああああ!?重てえええええ!!」

太郎が掴んだ剣は物凄い勢いで振り下ろされた。誰もが予想していない、俊敏すぎる勢いであった。

「は、速い!」

これにはギャラリーもビックリ。
しかし当然である。だって太郎は意図的に剣を振り下ろしたのではなく、ただ単に重くてバランスを崩しただけだったのだから。

振り下ろされた剣は、見事ゴンザレスの剣に当たり、ゴンザレスの剣ははじき落とされた。
どうやら予想外の動きに動揺したのか、剣を握る手が緩んでいたようだ。

「ゴンザレスの剣を落とした!こりゃ勝負は一瞬で決まるで!」

予想外の展開に思わず熱くなる先生と生徒達。まさかあの勇者太郎イサモノタロウがこんなにも活躍するなんて、誰一人思っちゃいなかっただろう。
当然ゴンザレスも予想外だった。まさかこんな奴に剣をはじかれるなんて。

(クソッ……!相手を甘く見たばかりに!あんな速い攻撃をするなんて……。この勝負俺の負けだ)

勇者たるもの剣をはじかれるなど一生の恥。誇り高き勇者の息子ゴンザレスは、素直に負けを認めようとしていた。
しかし太郎は意外な行動に出る。

「あっゴメンゴメン」

そう言うと太郎はゴンザレスの剣を拾い上げた。

「はいこれ、君の……。わ、わざとじゃないんだ。ゴメンネ」

申し訳なさそうにゴンザレスに剣を渡す。

「え?あ、ありがと……」

困惑したゴンザレスはとりあえず太郎の手から剣を受け取った。
ゴンザレスは状況がさっぱりわからないという顔で、ポカーンとしている。

「なんや……。なんでアイツわざわざ剣を拾ったんや?」

一方網走先生と生徒達も、やはり同じようにポカーンとしている。

(コイツ……一体何を考えている?今の隙にトドメを刺せたはずなのに、人の剣を拾うなんて)

残念ながら太郎は何も考えていない。ただのお人好しなのだ。

(ふん、勇者は正々堂々とでも言いたいのか?まあその気持ちだけは認めてやろう)

いまいち腑に落ちないゴンザレスだったが、太郎との決闘を再開しようと試みるのだった。
が、しかし。

「だから重てーんだよこの剣はっ!」

もう一度剣を振り上げた太郎は、さっきと全く同じ動きでゴンザレスに切りかかった。いや意図的に切ったのではなく、体が勝手に動いちゃっただけなのだが。

振り落とされた剣は、今度はゴンザレスの額にクリティカルヒット。もしも兜を被っていなかったら、ゴンザレスの頭はパッカーンと割れていただろう。

二度も攻撃を受けたゴンザレスは激しく動揺していた。

(今の攻撃、その気になれば簡単に受け止められたはずだ。しかし剣を渡された事に気を取られて咄嗟に盾を構えられなかった……。畜生!)

しかしこの攻撃で、今まで太郎を舐めていたゴンザレスの心に火が点いたようだ。

勇者太郎イサモノタロウ。まさかそこまで計算していたとはな」

「え?計算ってなに?今算数の時間じゃないでしょ」

計算ではなく天然の攻撃だったので、話が全くかみ合っていない。

「てめえの実力はよくわかったぜ!俺もここからは本気だーっ!」

「えっ?えっ?なんで本気になっちゃうの!?俺まだなんにもしてないんですけど!」

自分の攻撃に全く気付いていない太郎は、いきなり本気モードになったゴンザレスの気迫にただ狼狽えるしかないのであった。

【つづく】
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