勇者太郎の冒険【小説版】

ヨシダ

文字の大きさ
上 下
13 / 39
~第二章~

第13話 勝負!そして……?

しおりを挟む
最強の勇者と噂される武田・ゴンザレス・Jrとの真剣勝負で予想外の活躍を見せた太郎。(もっとも偶然によるものだが)
太郎をすっかり見くびっていたゴンザレスにとって、こんなへなちょこに敗北するなどプライドが許さないだろう。今までは本気を出していなかったようだが、ようやく本気になったゴンザレスの反撃が始まった。

「行くぞ!オラァ!」

「ひえっ……。なになに!?ご、ごめんなさい!勘弁してください!」

そう言うと太郎はもう訳が分からない状態で持っていた剣を投げ捨てた。勝負を諦めたようである。

「アイツ……剣を捨てたで!?」

網走先生が呆れるのも無理はない。太郎は完全に逃げの姿勢である。

「待ちやがれコラァ!」

一方ゴンザレスはと言うと、手持ちの剣を振り回し執拗に太郎を追いかける。
二度も攻撃を食らった上今度は逃げられるなど、勇者として恥もいいところだ。そんな思いのせいか、ゴンザレスは若干ムキになって太郎を追いかけ回しているようである。

「うわああん!すみませんすみません!」

もはや真剣勝負というより追いかけっこである。

その時、ゴンザレスが何かにつまづいた。さっき太郎が手放した剣である。どうやら目の前ばかり見ていたせいで足元まで注意が向かなかったようだ。
ゴンザレスは場末のお笑い芸人宜しく、無様にズコーッとずっこけた。勢い余って手持ちの剣もすっ飛ぶほどに。

豪快にすっ転んだゴンザレスを見て、太郎は慌てて駆け寄った。

「大丈夫?手貸そうか」

こんな時でもつい心配しちゃう太郎はお人好しである。

「うるせえ!いちいち心配してんじゃねえ!馬鹿にしてんのか!?」

「えっひどい!」

などと言った次の瞬間、太郎の背中に先程すっ飛んで行ったゴンザレスの剣が直撃した。丁度太郎は背中に盾を背負っていたので問題なかったが、下手をすれば剣が突き刺さっていたかもしれない。

「へぐっ……!」

怪我こそしていないものの、思い切り剣が背中に当たった衝撃はなかなかのダメージのようだ。

(なんなのなんなの……?)

(これは、俺の剣……?)

両者困惑中。

(もしこいつが背中の盾でガードしなければ、この剣が俺に直撃していたかもしれない)

「びっくりしたよ~もう」

(そうなれば大怪我……いやそれどころか、自らの剣で体を貫かれ命を落としていたかもしれない。こいつは瞬時にその危険を察知し、自分を盾にして俺を守ってくれたのか)

完全にただの偶然なのだが、どうやらゴンザレスは激しく勘違いをしているらしい。

勇者太郎イサモノタロウ、俺の負けだ」

「ほえっ!?なして?」

「気付いたぜ。俺じゃお前に勝てないってな」

「全然意味わかんない」

「一度ならず二度までも俺に攻撃を仕掛け、その上自らのミスで手放した剣にやられそうになった俺を体を張って守ってくれた。勇者太郎イサモノタロウ、大した奴だぜ」

「えっと……そうなのかな?」

「俺は自分の実力と親父の栄光におごるばかりで、勇者として大事なものを見失っていたようだ」

これを聞いた網走先生はたまらず二人に口を挟んだ。

「ふむ、勇者にとって大切なのは、優れた戦闘センス、的確な状況判断、そして何より仲間を思いやる心っちゅーわけやな……」

(はたから見れば)感動的な二人の勝負。そして網走先生の深い言葉に、クラスの連中はどこぞのダサい学園ドラマのような熱い涙に包まれた。

「それと、お前の意表を突く戦闘スタイル、悪くなかったぜ」

「は……はあ?」

一方何がなんだかさっぱりわからない太郎は、ひたすら状況が呑み込めず困惑している。

「よっしゃ!これで勝負は決まりや!この勝負勇者イサモノの勝ちー!」

(……なんで?)

見事勝者となった太郎の元に、クラスメートたちが近付いてきた。

「おい!てめえ……」

「ひえっ!あ、あの俺は別に勝とうと思ったんじゃなくて……リンチはやめて……」

相変わらず情けない声で怯える太郎。しかしクラスメートの反応は太郎の予想と真逆のものだった。

「お前結構やるなあ!」

「見直したぜ!」

「お前の事馬鹿にして悪かったよ」

「案外強いんだな」

名勝負を見せた太郎を、クラスメートたちは口々に賞賛する。見た目や態度はガラが悪いが、案外純粋な青年たちのようだ。
よくわからないが皆に褒めて貰ってまんざらじゃない太郎である。

「なあ、お前本当に辞めちゃうのか?」

クラスメートが残念そうに言う。

「勿体ないよな、いいセン行ってるのに」

思わぬ褒め言葉に太郎の気持ちは少々揺らいでいる。こんなに他人から褒められたのは、生まれて初めてなのだから。

「お前絶対勇者の素質あるよ!」

クラスメートからの一言に、太郎の胸は大きく打たれた。勇者の素質がある?本当に?
素質があるのにここで辞めたら勿体ないんじゃ?

「まあ本人が決めた事ならしゃーないけどな……」

網走先生もどこか寂しげである。

「あ、あの~」

太郎はちょっぴり俯き加減でこう言った。

「やっぱり……勇者続けてみようかな……」

太郎の一言に歓声を上げるクラスメートたち。

「おう!そうこなくっちゃな!」

「一緒に頑張ろうぜ!」

さっきまで勇者を嫌がっていた太郎はどこへ行ったのか。今はすっかりその気になった表情で

「勇者って結構いいかも」

なんて思っているのだった。おい太郎、本っ当にそれでいいのか!?

【つづく】
しおりを挟む