勇者太郎の冒険【小説版】

ヨシダ

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~第四章~

第20話 勇者と占い師

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ここは勇者アカデミーの食堂である。多くの生徒達で賑わう飲食スペースは、食事を摂るだけでなく各パーティーが会議や雑談をするスペースとしても使われている。
そして勇者太郎イサモノタロウ率いる42番パーティーも、なにやら食堂の片隅で会議を開いているようだ。

「う~~~~ん」

眉間にしわを寄せて考え込んでいる太郎。

「もう!何考えてるのよ太郎!」

先日パーティーの一員となった女戦士・マンモス富子も同席している。
なんだかんだで女子が一人加わったお蔭で、ほんの少しだがパーティーに華が生まれた……か?

一方僧侶・安倍は相変わらずマイペース。

「本題入る前に飲み物取ってくるわー、太郎ウーロン茶でいい?」

「本当自由人だな」

「あ、富子は飲み物カレーにする?それともちゃんこ?」

天使のような微笑みを浮かべて盛大に皮肉を言う安倍に、乙女富子はご乱心である。

「ああーーっ!?どういう意味じゃーーっ!?」

富子の怒りなど相手にせず、安倍は三人分の飲み物を取りに行く。
テーブルにウーロン茶、アイスココア、レモンスカッシュを置いたところで、漸く太郎は本題を切り出した。

「えっと、仲間についての話し合いなんだけどさ、やっぱり仲間選びは慎重にしたいと思って。仲間選びとカードローンは慎重にって、父さんも言ってたしね」

富子は気だるげにレモンスカッシュを飲みながら答える。

「そうねぇ、仲間を決めるのは最終的に太郎の役目だし、しっかり考えて決めて貰わなきゃ困るわ」

そう言うとおもむろにウインクをして、呟いた。

「まああたしより魅力的な仲間はそうそう居ないでしょうけど!」

なに抜かしてんだこのデブ。太郎と安倍は思わず言葉を失った。

「太郎……。あの陸に上がったトドどっかに捨ててきていい?」

「駄目だって!仲間仲間!」

「なあに?何か言った?」

「あー言ったよ!トドってな!」

(駄目だこのメンツ全然話し合いできねえ)

富子が仲間に加わってからというものの、毎日のように安倍と富子が口喧嘩をしているのだった。

「そうそう、あたしクラスで課題があるからもう教室戻るわよ。じゃあね、バーイ」

「結局話し合いできなかったね……」

ロクに議論もできないうちに解散となってしまった。太郎は頼りなく背中を丸めて、トボトボと廊下を歩くのだった。

その時、何者かが後ろから声を掛けた。

「あの、すみません。勇者太郎イサモノタロウさんですよね?」

突然呼び止められた太郎は、声がする後ろを振り返った。
そこには一人の少女が立っていた。

長い赤毛をおさげ髪にし、大きな瓶底眼鏡をかけている。真っ黒いローブととんがり帽子は、魔女のような出で立ちだ。
しかし、魔女のように恐ろしいオーラはなく、むしろ内気なのか、頬を赤く染めてモジモジと佇んでいる。

「突然すみません。わたくし占い師クラスのものなのですが」

なるほど、彼女は魔女ではなく占い師だったようだ。しかし何故見知らぬ占い師が?

「実は、今朝水晶玉を覗いたら太郎さんの未来が映ったので……つい声を掛けてしまいました。すみません」

唐突な出来事に戸惑いながらも、太郎は少女に返答する。

「え?なんで俺の未来が?」

横から安倍が口を挟む。

「なんだなんだ?お前もしかして太郎の事好きなんじゃねーの?」

ちょっぴりおませさんな小学生男子のイジリかお前は。

「や、やめてよね!そういうの!」

何故か太郎の方が照れている。

「その、水晶玉って時々誰かの未来を気まぐれに映すんです」

少女は生真面目なのか、安倍の冗談は相手をせず、モジモジとうつむきながら語り出した。

「今朝はたまたま勇者クラスの太郎さんを映したので、未来をお伝えしておこうかと……」

「へー、いいじゃん太郎占って貰えよ」

しかし少女は、どこか申し訳なさそうに表情を曇らせている。

「実は太郎さんには非常に不吉な相というか……。その、この先よくない未来が来ると出ていて……」

「えっ!?」

なんてこったい。いきなり呼び止められた占い師に、よくない未来が来ると言われるとは。繊細な太郎は占い師の言葉にすっかりショックを受けているようだ。

「あ、あのでも!それを回避する方法がありまして」

察した占い師は慌ててフォローする。

「なに!?どうすりゃいいの!?幸運の壺でも何でも買うからさあ!」

「すみません、私が売るものではないんです」

勇者は騙されやすいタイプとみた。

「不幸を避けるには『ある男』を仲間にするといいと出ていました」

「ある男?」

「はい、その人物は剣士クラスの『江頭エガシラ』と言う人物です」

江頭エガシラ!?)

なんだろう。名前からして危険な香りがするのは、なんでだろう。

「その人が近くに居れば、太郎さんの不幸は打ち消される……との事でした」

「へ、へえ~」

「まああくまでも占いですから、ご参考になれば嬉しいです。それでは」

そう言って占い師の少女は去って行った。よくわからないが、わざわざ親切に占い結果を教えてくれたので、悪い子ではなさそうだ。

一方よくわからない助言をされた太郎は、ますます考え込んだ表情でウンウンと唸るのだった。

不幸、占い、謎の男江頭エガシラ……。一体……。

【つづく】
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