勇者太郎の冒険【小説版】

ヨシダ

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~第四章~

第21話 勇者よ、剣を持て!?

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勇者は悩んでいた。
突然初対面の占い師に言われた事を、易々と鵜呑みにしていいのだろうか。ましてや仲間選びと言う大事な場面で。
しかし万が一占いを信じずにいて、本当に不幸が訪れたらどうしてくれようか。

「そういや今朝の星座占いで『おうし座は他人のアドバイスを聞くと運気アップ』って言ってたっけ」

「お前占い気にするタイプなんだな」

「う~ん、信じてみようかな」

ちなみに太郎は5月15日生まれのおうし座である。血液型はA型。

で、結局太郎は剣士クラスまでやって来たのであった。まあ次の仲間選びに悩んでいたので、ちょうどいいアドバイスを貰えたと考えればいいだろうか。

早速太郎は、剣士クラスにお邪魔した。しかし、扉を開けるとどうも様子が変である。
教室中がざわざわとしていて、生徒全員が何かに注目をしているようだ。

太郎は教室の入り口付近に居た生徒に声を掛けた。

「ちょっとすみません、人を探していて。あの、江頭って人知りませんか?」

剣士クラスの生徒は、教室の奥に向かって指を指した。

「江頭?江頭ならほら、あそこだ」

そこには剣を持った男が立っていた。男は巨大な剣をいとも軽々と持ち上げ、余裕の表情を浮かべながらこう呟いた。

「ふん、このクラスに俺より強い男はいないのか?誰でもいいからかかってこいよ」

鋭い目をしたその男は、どこか近寄りがたいオーラを醸し出している。強そうな雰囲気だがうかつに近寄れない。そんな感じだ。

そんな男が声を掛けた先には、なにやら妙に時代錯誤な格好をした侍風の男が居た。

「なにをー!貴様、まだ拙者との決着はついてないでござる!」

拙者って、ござるって……。
言葉遣いまで時代錯誤なこの男、やはり剣を(というか、刀か)持っており、鋭い目の男と向き合っている。
お互いに剣を持ち、普通ではない雰囲気だ。
鋭い目の男は侍風の男をまったく相手にしていない様子で、言い放つ。

「てめえじゃ弱すぎて話になんねえよ。どうした?誰でもいいからかかってこいよ。暇つぶし程度に遊んでやるぜ」

一体このクラスでは何が起こっているのだろうか。太郎は再び、近くにいた生徒に訊ねてみた。

「あのう、一体何が起こっているんですか?」

「ああ、あいつはな、このクラスで自分が一番強いと思ってるんだ。だからああやって、同じ剣士と手合せしているんだが、誰も歯が立たなくてな」

「そうなんですか……。あれが江頭。なんか普通の人じゃないって感じ」

普段あまり他人を褒めない安倍も、江頭の姿を見て呟く。

「なんか江頭って奴、強そうじゃん」

「ね、確かにあの人が仲間なら不幸も跳ね返せそうだね」

この江頭と思われる男、鋭い目に挑発的な態度。加えて抜群な剣の腕と、仲間にするには少々癖がありそうな人物だ。
確かに実力はありそうだが、あの態度を見ていると大人しく仲間になってくれるかどうか。

そんな江頭は、侍風の男とはもう手合わせする気が無くなったようだ。

「もう俺に挑戦する奴はいないようだな」

「だからー!拙者拙者!」

だが侍風の男はまだ諦めきれない様子。

侍風の男をしっかり無視して、江頭は教室の扉付近へと歩いてきた。太郎に近付いてくる江頭。どうしよう、声を掛けるならこのタイミングか?
いまいちコミュ障な太郎は声を掛けられずモタモタしている。
そんな太郎とすれ違いそうになった、その時である。

「……!お前、勇者太郎イサモノタロウか!?」

なんと先に声を掛けてきたのは、江頭だった。

「えー!?なんで知ってんの!?」

江頭は驚いた様子で太郎に問い掛ける。

「勇者クラスでトップクラスの実力を誇るゴンザレスを倒したという、あの勇者イサモノか!?」

(ここにも噂が広まっている……。ゴンザレスって凄い人だったのね)

「噂は聞いているぜ。なんでも凄い戦略の持ち主だとか」

「いやぁ、それほどでも」

本当にそれほどでもない。

「その癖見た目はチビで隙だらけの馬鹿面とか」

「初対面の相手に酷い事言うねアンタ」

江頭はそんな太郎の顔を見て、にやりと笑った。

「ちょうどいい。このクラスの連中と手合せしても物足りなかったところだ。勇者太郎イサモノタロウ、俺と勝負……」

「はいはい、このパターンこのパターン」

太郎は悟った表情でブツブツ何かを言っている。

「大体さあ、この学校血の気が多い人多過ぎだよ。もっと平和的な方法はないわけ?勝負勝負って」

アンタ勇者をなんだと思っている。

太郎のヘタレな返答に若干困惑した表情を浮かべる江頭。

「ふん、なんだトボけた事言って。余裕のつもりか?言っておくが俺は強いぞ」

「あっそう、言っとくけど俺も逃げ足の速さなら負けないよ」

そんな事を威張ってどうする。

ああ、やっぱりね。という感じで、またしても勝負する流れになってしまったらしい。もうこのパターンにも慣れてきたので、前みたいに嫌だ嫌だと泣き言は言わない太郎だった。

今回は珍しく、安倍の方が心配しているようだ。

「おい、いいのか?あいつ強そうだぞ?」

「うん、どうせ勝負しなきゃ仲間になってくれなさそうだしね」

開き直る勇者である。

(それよりもあの江頭って人。確かに強そうだけど、なんか怖いタイプだなあ。気が合わなそうだなあ。仲間になったら話は合うかなあ)

余裕なのか不安なのかわからない太郎だが、なんやかんやで今度は剣士クラスの江頭と勝負するのであった。

【つづく】
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