勇者太郎の冒険【小説版】

ヨシダ

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~第五章~

第27話 死期迫る勇者

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占い師に不幸な未来を予想された太郎。その未来を避ける為に必要なアイテム『妖精のたまご』を求めに行ったが、たまごの持ち主である妖精の少女・桐生やや子に冷たくあしらわれてしまった。

「いいよもう。不幸な未来なんてどうでも」

などと愚痴りながら廊下を歩いていると、向かいから占い師の少女が歩いてきた。

「あ、太郎さん。よかったです。今ちょうど太郎さんの未来が見えて」

「ああ、あのさあ占いだけど……」

すると少女は太郎の話を聞く間もなく、緊迫した表情で話を続けた。

「実は非常に言いづらいのですが、太郎さんの不幸な相がどんどん大きくなっていて」

「……うん」

「このままだと、死にます」

「!?」

「あの、死相がハッキリと出ていて、このままだと確実に死にます」

(二回言った。死ぬと二回言った!)

突然死ぬと言われてぐうの音も出ない太郎。

「すみません、変な事言って。占いって外れる事もあるんですけど、私の場合死期占いだけは100%当たるんです」

やな占いだな。

「これを避けるにはやはり妖精のたまごが必須なので……あの、手に入るといいですね」

占い師の少女は申し訳なさそうに言って去って行った。

「…………」

「おい、太郎大丈夫か?」

100%当たる占いで死期を占われたので、流石の安倍も心配の表情だ。

「エ?ウン……。ゼンゼンヘーキ。ダイジョウブ……」

どこが大丈夫なのか説明して頂きたい。

「はは……俺死ぬんだって。アハハ、そりゃ愉快だナ」

「バ、バカ!まだ決まったわけじゃないだろ!」

太郎の背後にうっすらと死神の影が見える。

「要するに妖精のたまごがあればいいんだろ!だったらあの子をスカウトするしかないじゃん!」

早くも死期を迎えたような表情の太郎を見て、安倍は勢いよく妖精クラスへ引き返した。

「おーい、桐生やや子居るかー?ちょっとツラかせやー!」

ヤクザかお前は。

すると、警戒したやや子はバールのようなものを手にして出てきた。ところでバールのようなものとはどのようなものですか。バールとは違うのですか。どのようなものなのか概要のようなものを知りたいようなものです。

「なに?」

「わー!とりあえず物騒なものしまって!」

バールのようなもので殴る気満々である。

「またあなたたちなの?」

「すみません。どうしても妖精のたまごについて話したくて」

太郎はやや子にかくかくしかじか状況を説明した。何しろ命がかかっているのだから、さっきより俄然必死である。

「と言う訳で俺には妖精のたまごが必要なんです!いきなりこんなこと言われて困るかもしれないけど、協力して欲しいんです!お願いします!」

太郎は精一杯頭を下げ、桐生やや子に懇願した。するとやや子は……。

「嫌」

一切の慈悲も、何もかもない言葉で、やや子は冷たく言い放ったのだった。

さて、やや子にキッパリと断られた太郎。かと言ってこのままでは死期が迫るばかりだし、にっちもさっちも行かない。
いつもミーティングをしている食堂で、がっくりとうなだれるのだった。

「安倍氏、もう無理だよ」

「バカ!諦めないで!真矢ミキも言ってただろ!」

「あそこまで徹底的に冷たくされたらさすがの俺も傷つくよ」

「うーん、確かに塩対応だったけどさ、割と可愛い感じの子じゃん?」

可愛いとか可愛くないは、この場合フォローになっているのだろうか。

「バカ、可愛い子に冷たくされたら余計傷付くっつーの」

確かにそれが嬉しく感じたら色んな意味で末期である。

「まあ考えて見ろよ、愛想のいいブスと無愛想な美人なら美人の方がいいだろ?」

 「愛想のいい美人という選択肢はないのか?」

一向に上手くいかない桐生やや子のスカウトに、太郎も安倍もお手上げ状態だ。

「こうやってグズグズしててもしょうがないだろー?上手い事スカウトしてこいよ」

「じゃあ安倍が代わりにやってよ。あんた口達者でしょ?」

確かに口下手な太郎より、喋りの上手い安倍の方がスカウトが上手く行きそうな気もする。

「え~?だってぇ、俺の事じゃないしィ」

「あー、お前はそう言う奴だよ」

「まあまあ諦めるなよ。マニュアルには諦めるな、背中を向けるな、弱気になるなって書いてあるしさ」

安倍は謎の本を開きながら、変なアドバイスをする。

「なんのマニュアルだよ」

とにかくここで諦める訳にはいかない。太郎は再び、妖精クラスまで足を運ぶのだった。
ちなみに安倍が持っていた本の表紙にはこう書かれていた。

『野生動物の手なずけ方』

【つづく】
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