勇者太郎の冒険【小説版】

ヨシダ

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~第六章~

第32話 敵、遂に現る!

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42番パーティーに桐生やや子が加わり、遂にパーティーの人数は五人となった。
更にこの桐生やや子、可愛いだけでなく腕っぷしもなかなか強い。精霊魔法を使い攻撃が出来るのだ。
世界には四大精霊と呼ばれる、自然界の精霊が居る。四大とは火・水・風・土で、精霊魔法とはこの力を使い、攻撃をするのだ。
やや子は早速火の精霊を使い、その強さを見せつけてくれた。もっとも攻撃したのは敵ではなくエガだったが。

そんなやや子が、素っ気ない口振りでこういった。

「わたしはたまごを孵す為に一時的に仲間になるだけ。たまごが孵ったらパーティーを抜けるつもりだから」

「えぇ~、そんなぁ」

エガが残念そうに言う。お前、たった今燃やされた癖に、随分元気だな。

ビジネスライクなやや子に、安倍は言う。

「まあいいじゃん、太郎が居れば卵が孵る、たまごがあれば太郎は助かる。利害の一致でウィンウィンだろ?」

「そ、そうだね」

太郎はちょっと困惑気味だが、まあこんな繋がりの仲間が居てもいいだろう。それよりも太郎が気になっている事がある。

(やや子ですら魔法が使えるのに、俺は何もできないんだよな。剣も魔法も使えやしない)

アカデミーに入学して暫く経つが、未だに剣の腕も上達せず、魔法の一つも覚えられない自分にあきれ返る太郎であった。

一方その頃、場所は変わって勇者クラスの教室。

「ふんふ~ん♪ワシのパーマはラブリー♪」

網走先生はご機嫌でクラスの窓を拭いていた。すると、突然窓の外から何かが飛び込んできた。
当然窓は閉まっていたので、窓ガラスは粉々である。

「なんや!どこの組のもんや!」

窓の外から飛び込んできたのは、矢文であった。え?この時代に?
網走先生は矢に結ばれていた手紙に目を通す。そこには驚きの一文が書かれていた。

「なっ、なんじゃこりゃー!」

網走先生は手紙を持って学園長室へと走った。

「学園長!」

部屋の中から学園長が返答する。

「合言葉は?森トンカツ」

「泉ニンニク!入るで!」

学園長は呑気に駄菓子を食べながらくつろいでいた。

「学園長!ちょっとこれ、見てぇや!」

学園長は差し出された手紙を開いた。

『ヒめハあズかッタ、あくノまオウヨリ』

姫は預かった。悪の魔王より……。

手紙にはそう書かれていた。新聞の文字をカッターで切り取り貼り合わせたような、あの感じで。

学園長に怪訝そうに言う。

「なあにこれ?へんなの」

「なっおかしいやろ?特に自分で悪のって言ってるとこ!自覚してんのかーい!っちゅう」

どう考えてもツッコむところはそこじゃない気がするが、とりあえずこの手紙、冗談じゃなければ姫をさらった張本人から送られてきたもののようだ。

「きっとこれは姫をさらった犯人からや!はよ生徒に知らせんと!」

そう言うと、網走先生は慌てて学園長室を立ち去ったのだった。

再び場所はアカデミーの食堂。42番パーティーは優雅なランチタイムを過ごしていた。

「妖精さんって何食べるの?」

「別に、普通」

他愛もない会話を和やかに楽しんでいる。

「ほぅら、せんべいをお食べ」

安倍はどこから出したのか、せんべいをやや子に食べさせようとした。

「わたし奈良公園の鹿じゃないんだけど」

すると、アカデミー内に校内放送が響き渡った。

「全校生徒の皆様ごきげんよう!突然ですがこの後緊急集会を開きます。ご飯を食べたら大ホールに集合してね!」

「集会だって。なんだろうね?」

「さあ?」

言われるがまま、太郎達は大ホールへと移動した。アカデミーは非常に多くの生徒達が居るので、集会を開くホールもかなりの広さだ。

「お前らぁ!集合したかぁ!」

「あ、網走先生だ」

「実はさっき不審な手紙が届いたんや!差出人は恐らく、姫をさらった犯人や!」

「ええっ!?姫……って、誰?」

太郎は思い切りずっこけたおバカな返答をした。まさかコイツ、そもそものアカデミーに入学した意味を忘れてるんじゃ……。

「ドアホ!さらわれたチバ王国の姫や!」

「あっそうだった。俺はさらわれた姫を救う為にアカデミーで勇者になる特訓をしてるんだった」

忘れかけていた設定を一気に思い出させるようなセリフである。

「とりあえずこれを見るんや」

ホールの前方にプロジェクターが設置され、先程の手紙が映し出された。生徒達がそれを見てざわつく。

「悪の……魔王!?」

「自分で名乗ってるぞ」

「ご丁寧に筆跡バレしないように切り取りで手紙を……」

「魔王も新聞読むんだな」

ざわつく生徒達に網走先生が説明する。

「これが本当に姫をさらった犯人からなのか、また本物の魔王からなのかはわからへん。しかしこんな手紙を送りつけてきたっちゅー事はワシらに喧嘩売ってる証拠や!」

網走先生は気合を入れて叫んだ。

「ええかお前ら!少しだが敵の姿が見えてきたで!いつ戦ってもいいように気合入れて準備しとけやあ!」

(一体……)

呆然と網走先生の話を聞く太郎。
しかしその頃、アカデミーの上空には何やら不審な人影のようなものが浮かんでいたのだった。

【つづく】
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