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第4話 すべては自業自得 俯瞰視点(1)
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「魅了に関する情報を、随分と熱心に集められているそうですね? 申し訳ありませんが、そうなさる理由を説明していただけますでしょうか?」
それはクリスチアーヌが異国ミレヴォラードに渡り、一週間が経過した頃でした。その日も早朝より各地で情報を集めていると、屈強な男達を十数名従えたヴィクトルが突如として現れたのです。
――必死になって魅了の情報を集めている者達が居る――。
そのような情報が『トップ』であるヴィクトルの耳に入り、その対象は他国の貴族であったため、相応の地位と権限を持つヴィクトル自らが対応に乗り出していたのです。
「魅了は不幸を生む、恐ろしく忌々しいもの。貴方様はなにゆえ、そのようなものをお調べになられているのでしょうか?」
「……余計な混乱を招いてしまい、申し訳ございません。わたくしは異変の原因を追究するべく、あのように動いておりました」
突如として、婚約を解消されてしまったこと。その際は変貌してしまっていたこと。やがて魅了の存在を小耳に挟み、関連を疑い始めたこと。などなど。
すでに身分の紹介が行われていたため――目の前にいるのは公爵令息だと把握していたため、クリスチアーヌは事情を包み隠さず明かしました。
「…………なるほど。悪用するためではなく、解明のための収集だったのですね」
「はい。……オーライエル様。魅了について、何かご存じでありませんか?」
今話しをしているのは『魅了』が生まれたとされる国の人間で、しかも公爵家の人間。調査は芳しくなかったため藁にも縋る思いで訪ね、そうすれば思いがけない返事がやってきたのでした。
「ええ、とてもよく知っていますよ。そして――魅了がかかっているのか否かを調べる方法も、知っていますよ」
「え!? ほっ、本当でございますか!?」
「はい、紛れもない事実です。実を言いますと僕は『魅了撲滅』の王命を受け、日々魅了について研究をしている『魅了対策局』の長(ちょう)を務めているのですよ」
不幸中の幸い、この国の王であり王族は『善』の人間。相手を意のままに操れる魔法を、良いものではなく悪いものだと見ていました。
そのため王太子の旧友である、絶対的な信頼を置ける、かつ、優れた頭脳を持つヴィクトルをリーダーに任命。それによりヴィクトルは日夜、総勢204名の部下と共に『魅了撲滅』を目指していたのです。
それはクリスチアーヌが異国ミレヴォラードに渡り、一週間が経過した頃でした。その日も早朝より各地で情報を集めていると、屈強な男達を十数名従えたヴィクトルが突如として現れたのです。
――必死になって魅了の情報を集めている者達が居る――。
そのような情報が『トップ』であるヴィクトルの耳に入り、その対象は他国の貴族であったため、相応の地位と権限を持つヴィクトル自らが対応に乗り出していたのです。
「魅了は不幸を生む、恐ろしく忌々しいもの。貴方様はなにゆえ、そのようなものをお調べになられているのでしょうか?」
「……余計な混乱を招いてしまい、申し訳ございません。わたくしは異変の原因を追究するべく、あのように動いておりました」
突如として、婚約を解消されてしまったこと。その際は変貌してしまっていたこと。やがて魅了の存在を小耳に挟み、関連を疑い始めたこと。などなど。
すでに身分の紹介が行われていたため――目の前にいるのは公爵令息だと把握していたため、クリスチアーヌは事情を包み隠さず明かしました。
「…………なるほど。悪用するためではなく、解明のための収集だったのですね」
「はい。……オーライエル様。魅了について、何かご存じでありませんか?」
今話しをしているのは『魅了』が生まれたとされる国の人間で、しかも公爵家の人間。調査は芳しくなかったため藁にも縋る思いで訪ね、そうすれば思いがけない返事がやってきたのでした。
「ええ、とてもよく知っていますよ。そして――魅了がかかっているのか否かを調べる方法も、知っていますよ」
「え!? ほっ、本当でございますか!?」
「はい、紛れもない事実です。実を言いますと僕は『魅了撲滅』の王命を受け、日々魅了について研究をしている『魅了対策局』の長(ちょう)を務めているのですよ」
不幸中の幸い、この国の王であり王族は『善』の人間。相手を意のままに操れる魔法を、良いものではなく悪いものだと見ていました。
そのため王太子の旧友である、絶対的な信頼を置ける、かつ、優れた頭脳を持つヴィクトルをリーダーに任命。それによりヴィクトルは日夜、総勢204名の部下と共に『魅了撲滅』を目指していたのです。
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