魅了の魔法をかけられていたせいで、あの日わたくしを捨ててしまった? ……嘘を吐くのはやめていただけますか?

柚木ゆず

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第4話 すべては自業自得 俯瞰視点(2)

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「魅了は心に作用するもの、目視できるものではありません。ですので発見、拘束、治療をできるように、見極められるアイテムを開発しているのですよ」

 魅了された者が突然暴れ出し、夜会にて令息や令嬢が大怪我をする――。敵対貴族による『遠距離攻撃』など、魅了を利用した事件がいくつも発生していました。
 そこで『人形』とされた者を見つけ出し、無害化するためのものが誕生していたのです。希少な素材を使用するため現時点で3つしか製造できていませんが、確かなる効果を持つものが存在していたのです。

「見極める方法は、とても簡単。こちらにある――この眼鏡をかけて相手を見て、対象の周囲にピンク色のオーラがあれば魅了がかかっている状態なのですよ」
「す、すごい……。あ、あの……。そちらをお借り……あるいは、使用していただくことは……。可能、でしょうか……?」
「そういった時のために、開発したものですからね。もちろん可能ですよ」

 恐る恐る向けられた視線に快諾を返し、「ただ」と続けます。

「希少性により現在『貸し出し』は不可能となっており、この眼鏡は僕と共に動かなければなりません。そしてこの眼鏡で鑑別しなければならない人間が十数名いるため、5日待っていただくことになるのですよ」
「わたくしは――わたくし達は、長期戦を覚悟しておりました。5日間はまったく苦痛ではございません」

 相手は、魅了という不思議な存在。最低でも1年はかかると考えていたため、クリスチアーヌは即座に首を左右に振りました。

「……オーライエル様、ご配慮痛み入ります。このご恩は、一生涯忘れません」
「どういたしまして。ですが、それ以上の感謝は要りませんよ。貴方様は被害者であり、僕自身が好きでやっていることですからね」

 理不尽なもので苦しむ人を助けたい、悲劇を防ぎたい。彼の中にはそのような考えがあったため、穏やかかつ優しい笑みを浮かべました。
 そうしてクリスチアーヌが温かい微笑みを目にしてから、9日後。4日間の移動を行ってクリスチアーヌの祖国ハーエンムに着き、二人はこっそりとブノアに近づきます。

 ――魅了がかかっていた場合、その犯人はすぐ近くにいる場合が多い――。
 ――ナタリーが傍にいる可能性が高く、訝しまれたら処理が面倒になる可能性がある――。

 そんな理由でブノアに接触ができず、こっそりとした行動となっていたのです。

「コレは意外と苦労するのですが、よかった。運も味方をしてくれているようですね」

 幸いにもブノアはすぐに外出を行い、馬車から降りたところ目視できるようになっていました。ですので密かに尾行をし、やがてその時が訪れます。
 眼鏡をかけたヴィクトルが降りてきたブノアを見つめ、そうして――

「…………クリスチアーヌ様。貴方様に、つらい報告をしなければならなくなりました」

 ブノアは魅了にかかっていない。自分の意思で縁を切っていた。そう、クリスチアーヌは知ってしまうこととなりました。
 そして――

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